242話 ユナのスキル強化

 ミリオンズの面々を集めて、緊急会議を行う。

俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニムだ。


「みんな。少しいいか? 大事な話がある」


「大事な話? なんだろう」


「も、もしかすると、あれかもしれませんね」


 俺の言葉に、モニカとニムがそう言う。

ニムは何となく察していたようだ。


「ユナが加護の条件を満たした。さっそく彼女に内容を伝えようと思う。構わないよな?」


「もちろんだいじょうぶです! またタカシ様のすばらしさに気がついた人が増えたのですね。喜ばしいことです」


「うん。いいんじゃないかな。シトニさんたちを連れ戻しにいかないといけないしね。戦力は増えたほうがいい」


 俺の言葉を受けて、ミティとアイリスがそう言う。

モニカとニムも異論はないようだ。

さっそく、ユナに加護の件を伝えよう。



●●●



 周りに人がいないタイミングで、ユナに話しかける。

俺たちが泊まっている家の一室まで来てもらう。


「ふふん。いったい何かしら? 内密の話なんて」


「実は、かくがくしかじかでな……」


 ユナに力の件を説明する。

俺と一定以上親密になった人は、身体能力が全体的に強化され、特定の方向性で技術や力を伸ばすことができるようになる、というような説明だ。

ユナの反応は、半信半疑といったところである。

アイリス、モニカ、ニムのときと同じような感じだ。


「いくらタカシの言うことでも、にわかには信じがたいわね……」


 ユナがそう言う。

普通に考えれば、もっと疑われてもおかしくはない。

しかし、そもそも加護付与の条件を満たしている時点で、俺に対する信頼度が一定以上あると言える。

過度に疑われたりはしないということだろう。


「よし。論より証拠だ。なんでもいい。手に入れたい力を言ってみてくれ。まずはそれを強化しよう」


「手に入れたい力ね。本当になんでもいいのかしら?」


「ああ。弓でも火魔法でもいいぞ。もしくは、腕力や脚力を強化することもできる」


「ええと。じゃあ、火魔法かしら? ずっと中級が使えずに苦労しているのよね」


 ユナがそう言う。

一般的には初級のファイアーアローから中級のファイアートルネードで苦労する人が多いと、以前彼女が言っていた。

ステータス操作に頼りまくっている俺には実感がないが。


 さっそくユナのステータス操作画面を開く。

スキルポイントを10使用し、火魔法レベル2を3に強化する。


「強化したよ。どうだ?」


「……っ! なるほどね。中級の火魔法のイメージが頭に流れ込んできたわ。今なら使えそうな気がする」


「ああ。おそらく実際に使えると思うぞ。それで、他にも強化したい力はあるか?」


 俺はそう言う。

シトニとクトナの奪還作戦に向けて、スキルは強化しておいたほうがいい。


 俺はユナに、スキルのリストを書いて渡す。

彼女の現状のスキルと、取得できるスキルの主な候補だ。

参考に、俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニムのスキル構成も説明する。

あんまり方向性が被るのもよくないしな。


「ふふん。かなりの強化ができるみたいね。タカシやミティの急成長は、この力のおかげだったのね。合点がいったわ」


「そうだな。俺にも詳しい理屈はわかっていないが、ありがたい力だよ」


「こんな力、インチキにもほどがあるわ……。でも、これからは私もこの力を受けられるわけね。文句は言わないでおくわ」


 ユナがそう言う。

確かに、第三者から見ればずるいとしか言えないだろう。

文句も言いたくなる。


 しかし、恩恵を受ける立場になれば、これほどありがたい力もない。

細かいことは気にせず、チートを満喫していこうぜ。


「ええっと。まずは、弓かしら。それとも続けて火魔法? 水とかの新しい魔法も使ってみたいけど。うーん」


「新しい力を得ても、慣れるまでは少し時間がかかる。奪還作戦に向けて、既存の力を強化するのがいいんじゃないかな。もしくは、純粋に身体能力や魔力を強化するか」


「それもそうね。ええと、私の既存の力は……」


 ユナがそう言って、俺が渡したメモにあらためて目を通す。


「剣術、弓術、闘気術、火魔法、獣化術、操馬術だな」


「そうね。操馬術は、要するに御者の技術のことよね。戦闘には関係ないし、今回は保留にしましょう。他のものを1ずつ伸ばすわ」


 剣術レベル1を2に。

弓術レベル3を4に。

闘気術レベル1を2に。

火魔法レベル3を4に。

獣化術レベル1を2に。

合計でスキルポイントを45使用することになる。


「それがいいだろう。ええっと。まだまだ強化できるぞ」


 先ほど火魔法レベル2を3に強化した分と合わせて、スキルポイント55の使用だ。

ユナのスキルポイントはまだ40残ることになる。


「そうなの? じゃあ、身体能力を伸ばしてもらおうかしら」


「わかった。ユナの戦い方だと、腕力や脚力よりも、手先の器用さが大切だな?」


「そうね。あとは、火魔法の制御で魔力も大切かしら」


「それだと、MP強化、器用強化、魔力強化あたりがよさそうだな。2つをレベル2に、1つをレベル1にすることができるぞ」


 ちょうど残りスキルポイントが0になる計算だ。


「器用強化と魔力強化をレベル2に、MP強化をレベル1にしてもらおうかしら。……でも、こんな大切なことをすぐに決めるのは少し怖いわね」


「うーん、確かに。しかし、大きな問題はないだろう。経験を積めば、また強化できるようになるからな」


「わかったわ。シトニとクトナを助けにいかなくちゃいけないし、グズグズ悩んでいる場合じゃないものね。それで強化してちょうだい」


「了解した」


 俺はユナのステータス操作画面を開く。

先ほど話した通りに、スキルを強化していく。


 これで、ユナの戦闘能力は格段に向上したことになる。

一度の強化量としては、今までの俺たちの中でも最大ではなかろうか。

急激な強化により、力を持て余さないように気をつけないといけない。


「ふふん。これほど強くなれるなんてね……。タカシの力は、本当にすばらしいわ」


「そうですね。タカシ様の力はすばらしいです!」

「うん。ボクもお世話になっている。ありがたいよ」


 ミティとアイリスがそう言う。


「でも、力を得ただけじゃうまくいかないかも。明日の朝までに、新たな力に慣れておこうよ」

「そ、そうですね。わたしも手伝いますよ」


 モニカとニムがそう言う。


「ふふん。よろしくお願いするわね」


 俺たちは明日の朝、ディルム子爵領に向けて出発する。

モニカの言う通り、それまでに最低限の調整は済ませておかないとな。


 パワーアップしたユナ。

そして、俺たちミリオンズ。

村の戦士たちや、特別表彰者のアルカの協力もある。

奪還作戦はきっと成功する。

そう信じよう。



レベル19、ユナ

種族:ライカンスロープ(赤狼族)

職業:弓士

ランク:D

HP:147(113+34)

MP:121(67+20+34)

腕力: 78(60+18)

脚力: 87(67+20)

体力: 78(60+18)

器用:186(81+24+81)

魔力:182(79+24+79)


武器:ウッドボウ

防具:布の服


残りスキルポイント0

スキル:

剣術レベル2

弓術レベル4

MP強化レベル1

器用強化レベル2

魔力強化レベル2

闘気術レベル2

火魔法レベル4「ファイアーボール、ファイアーアロー、ファイアートルネード、ボルカニックフレイム」

獣化術レベル2

操馬術レベル1


称号:

タカシの加護を受けし者

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