第7章 再びゾルフ砦へ、アイリス

182話 これまでの活動の振り返り 今後の方針についての検討

 ラーグの街に戻ってきて数日が経過した。

ファイティングドッグ狩りなど、軽めの狩りをしつつのんびり過ごしている。

今日も狩りを終えて自宅に戻ってきたところだ。


 俺、ミティ、アイリスの3人はこの家にいっしょに住んでいる。

モニカとニムはそれぞれの実家住まいだ。

とはいえ、同じパーティで活動している都合上、夕食をこの家で食べていくことも多い。

今は、リビングで5人がくつろいでいるところだ。


「ふう。やっぱり、ラーグの街のこの家が一番落ち着くなあ。ガロル村もいい村だったけど」


「そうですね。私もこの家は好きです。実家並みの安心感があります」


 俺の言葉に、ミティがそう答える。


「いい家だよねー。そういえば、新婚さんの家にボクが同居しててもいいのかな? まあ、出ていけと言われるとちょっと寂しいんだけどね」


 アイリスがそう言う。


「いや。俺は出ていけなんて言わないよ。ミティも構わないよな?」


「もちろんです! アイリスさんのことは、家族のように思っていますので」


 俺の問いに、ミティがそう答える。


「ありがとう。じゃあ遠慮なく、そうするよ。(……第二夫人の座も狙っているしね)」


 アイリスがそう言う。

最後のほうに何やらボソッとつぶやいていた。


 普通の人であれば聞き取れないぐらいの声量だ。

しかし俺は、聴覚強化のスキルを取得済みである。

ばっちり聞き取ることができた。

俺をそこらの鈍感系主人公といっしょにされては困るな。


 とはいえ、この場でこの話題を広げすぎるのもな。

ミティと結婚したばかりで2人目と結婚は、ミティが気にするかもしれない。

慎重に判断する必要がある。


「その件だけどさ。私とニムちゃんも、この家に住んでもいいかな?」


 モニカがそう言う。


「うん? 部屋は空いているし、俺は構わないが」


「私もだいじょうぶです。歓迎します!」


 俺とミティはそう答える。


「ありがとう。まだ本決まりではないけど。近いうちに引っ越してくるかもしれない。心づもりだけしていてよ」


「わかった。しかし、何か事情があるのか?」


 俺はそう問う。


「わ、わたしのママとダリウスさんが、ちょっといい雰囲気なんです」


「うん。娘としては正直複雑な気分だけど、がんばって応援しようかなって。再婚したら2人で住むのがいいと思うんだ」


 ニムとモニカがそう言う。


「なるほど。俺たちが不在の間に、ダリウスさんとマムさんの仲が深まっていたんだな。2人がそう言うのであれば、俺も素直に応援しよう」


「私も応援します! 何かできることがあれば、何でも言ってくださいね」


 俺とミティはそう言う。


「うん。とりあえずは様子見だけどね。あんまり外から首を突っ込むのもね」


「まあそれもそうだな」


 この件の会話は終わり、また別の話題にシフトしていく。

今度は他愛のない雑談だ。


 雑談に興じつつ、俺は思考を整理していく。

俺とアイリスの結婚の件は、俺としては保留する。

また、ダリウスとマムの再婚の件はしばらく見守る。


 考えるべきは、今後の俺たちミリオンズの活動方針だ。

資金には余裕があるし、ずっとこの街で適当な依頼をこなしつつ生きていくのもいい気がする。


 しかし、実際にはそうするわけにはいかない。

30年後の世界滅亡の危機を回避しなければならないからな。


 世界滅亡の危機を回避するために、これまではミッションを参考に行動してきた。

この世界に転移した初日には、”魔物を1匹討伐しよう”や”街へ行こう”などのミッションに従った。


 その半月ほど後、他の冒険者と合同でホワイトタイガーを討伐した。

その際に、"ゾルフ砦の防衛に加勢しよう"などのミッションが追加された。

俺はそれに従い、ゾルフ砦を訪れることにした。


 ゾルフ砦に到着後、"ゾルフ砦のガルハード杯本戦に出場しよう"というミッションが追加された。

俺とミティは道場に入門し、武闘の訓練に励んだ。

その結果、無事にガルハード杯本戦に出場することができた。


 その後に防衛戦があった。

ゾルフ砦に、魔物の軍勢が押し寄せてきたのだ。

みんなで強力してファイティングドッグやゴブリン、それにジャイアントゴーレムなどを撃破した。


 防衛戦がひと段落したときに、"オーガ及びハーピィと和睦しよう"というミッションが追加された。

アドルフの兄貴たちとともに敵地に潜入し、なんやかんやあって無事に和睦することができた。

オーガ及びハーピィの国は、ハガ王国という名称に決まった。


 ハガ王国やゾルフ砦の面々に別れを告げ、ラーグの街に戻ってきた。

モニカやニムが困っていたのでいろいろと手伝った。

彼女たちが加護付与の条件を満たして冒険者としてデビューした。

俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニム。

この5人でミリオンズとしてパーティ登録をした頃に、"ガロル村を訪れよう"というミッションが追加された。


 ガロル村というのはミティの故郷だった。

俺たちは5人でガロル村を訪れることにした。

ミドルベアや霧蛇竜ヘルザムとの戦闘もあったが、なんやかんやでみんな笑顔の結末となった。

俺とミティの結婚式という一大イベントもあった。


 そして、ガロル村からここラーグの街に帰ってきたのがつい数日前ということだ。

こうしてあらためて活動を振り返ってみると、いろいろと感慨深いな。

ミッション報酬や忠義度稼ぎという目的はあるにせよ、世のため人のために結構がんばれている気がする。


 とはいえ、気になることもある。

俺が、かなりの指示待ち人間だということだ。

ミッションが出されるたびに、それにただ従っているだけである。

まあ、ミッションなんていうものを出すことができる超常の存在に、わざわざ逆らう必要もないだろうが。


 今は、全てのミッションを達成済みである。

何をすべきかは自分たちで考えていく必要がある。

どうしようかな。

また新たな街に行ってみるのが良さそうか。


 ユナの故郷であるウォルフ村や、リーゼロッテの故郷であるラスターレイン伯爵領。

ラスターレイン伯爵領の中でも、海洋都市ルクアージュという街は、観光地としても有名らしい。

それぞれ、何か用事があって故郷に帰っている。

俺たちが訪れれば、何か手伝えることがあるかもしれない。

新たな土地を訪れるとすれば、この2つが有力候補だ。


 他の候補は、剣の聖地ソラトリア、魔法学園都市シャマール、食の都グランツあたりか。

気にはなるが、どちらかと言えばユナやリーゼロッテのほうを優先したいところだ。

ミティたちの意見も聞いておかないとな。


 ただ、新たな街を訪れる前に済ませたい用事がたくさんある。

順番に片付けていこう。

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