123話 モニカとニムに秘密を打ち明ける

 モニカとニムに加護を付与した。

彼女たちに、ステータス操作の力について打ち明ける必要がある。

その前に、ミティとアイリスに報告と相談をしておこう。


「ミティ、アイリス。ちょっといいか?」


「なんでしょうか?」


「なーに?」


「モニカとニムが、例の力を与える条件を満たした」


「それはよかったです!」


 ミティが素直に喜んでくれる。


「まあ親の病気を治療して、店や畑の復旧も手伝って、無償だもんね。そりゃそうなるよね。ライバルが増えていくなあ」


 アイリスはやや複雑そうな顔だ。


「アイリスさん。タカシ様の力は世界を変える力です。どんどん広げていくべきです」


「ま、仕方ないかー」


 ミティとアイリスに多少の温度差はあるが、いずれにせよ拒否の感情はなさそうだ。


「それでだ。さっそく彼女たちに力の件を伝えて、パーティへの加入を打診してみようと思う。どう思う?」


「私はもちろん賛成です!」


 ミティが力強くそう言う。

彼女はイケイケドンドンな性格をしている。


「本人が希望すれば、いいんじゃない? 戦闘訓練とかはしていないみたいだし、あんまり強引な勧誘はしたくないなあ」


 アイリスは慎重な意見だ。


「アイリスの言うことももっともだな。まあこの力があれば、戦闘力はどんどん伸びていくから、戦闘面での心配はしていない。本人の意思が一番大切だと思っている」


 繰り返しになるが、ステータス操作というチートの前では、最初の戦闘力など誤差の範囲なのだ。


「確かにね。まずは話をしてみるしかないんじゃない?」


「そうだな。さっそく、今晩にでも話してみようと思う」


 さて、どうなるか。



●●●



 夜。

ラビット亭の閉店後。

モニカとニムがいる。

ダリウスはマムといっしょに外出中。

他の客も全員退店済み。

ステータス操作の力を説明するのに、いいタイミングだ。


「モニカ、ニム。重要な話がある。少しいいか?」


「重要? なに?」


「な、なんでしょうか?」


 モニカとニムが身構える。


「実は、かくがくしかじかでな……」


 力の件を説明した。

俺と一定以上親密になった人は、身体能力が全体的に強化され、特定の方向性で技術や力を伸ばすことができるようになる、というような説明だ。

彼女たちの反応は、ミティやアイリスのときと同じような感じだ。

半信半疑といったところである。


 普通に考えれば、もっと疑われてもおかしくはないが。

まあ、そもそも加護付与の条件を満たしている時点で、俺に対する信頼度が一定以上あると言える。

過度に疑われたりはしないというところか。


 彼女たちに、それぞれスキルを1つ選んでもらい、それを強化して実感してもらうことになった。

モニカは脚力強化。

ニムは体力強化だ。

さっそくステータス操作で強化する。


「強化したよ。どうだ?」


 モニカとニムに感覚を聞いてみる。


 モニカがその場で飛び跳ねる。


「うん。……確かに、脚の力が増しているね」


 モニカには実感してもらうことができた。


「ちょ、ちょっと走ってきますね」


 ニムが店を出て、走り出した。

少しして戻ってきた。


「た、確かに、体力がかなりついているようです。すごいです」


 ニムにも実感してもらうことができた。


「まさか、こんな力があるなんてね」


 モニカがそう言う。


「うん。信じてくれたか」


「信じざるを得ないね。それにしても、タカシと一定以上親密になった人が対象、か」


「わ、わかります。お母さんを治してくれて、畑も手伝ってくれて、とっても嬉しかったです!」


 ニムがそう言う。


「ニムちゃんは感謝の気持ちが大きいんだね」


 モニカがそう言う。

ニムは感謝の念が大きい。

一方で。


「モニカはどうなの?」


 俺はそうモニカに尋ねる。


「それ、言わせる? みんながいるこの場で?」


「だいじょうぶですよ、モニカさん。偉大なタカシ様を好きになるのは、当然のことです」


 ミティがそう言う。


「まあ偉大かどうかは置いといて、あれだけのことをしてもらったら、そりゃ特別な感情は持つよね」


「ありがとう。俺もモニカのことは特別だと思っている」


「でも、タカシにはミティがいるでしょ? それにアイリスも」


 確かに。

ハーレムは男のロマンだが、実現しようとすると様々な障害がある。

金銭や能力の問題は、チートによって何とかなる。

一方で、人間の感情だけはなかなかうまくいかないかもしれない。

少し胃が痛い。


「私は、タカシ様を本当に好きな人であれば、構いません。タカシ様は偉大なので、妻もそれに似合った数がいて当然です」


 ミティがそう言う。


「ボクは気にしないこともないけど。タカシの特別な力を考えると、パーティメンバーが多いほどボクにもメリットが増えるしね。モニカがよければいいんじゃない?」


 アイリスがそう言う。

彼女はそのあたり割り切った性格をしている。


「うーん。私も、本音を言えば私1人に絞って欲しい気持ちはあるね」


 モニカがそう言う。


「申し訳ない」


「でも、その力を使えばいっぱい稼げそうだしね。その辺の男と結婚するよりは、たとえ3人目でもタカシといっしょになったほうがいいんだろうね。うん、私は3人目で良しとするよ。タカシよりも良い人はなかなかいないだろうし」


 モニカがそう言う。


 傍らで聞いていたニムが、ずいっと前に出てくる。


「わ、私も、妻として迎えてください! 4人目でいいですよ!」


 ニムがそう言う。


「ありがとう」


 俺は素直にお礼を言う。

気持ちはうれしいが……。

ロリコンの俺でもさすがに10歳と少しの子はな……。

将来に期待できる逸材ではあるが。


「ニムちゃんには、この手の話はまだ早いんじゃない?」


 アイリスがそう言う。


「確かに、さすがにな」


「そ、そんなことないです!」


 ニムがムキになって反論する。


「まあ、数年後も気持ちが変わっていなければ、ぜひこちらこそお願いするよ」


「むう。ほんとうなのに」


 ニムがむくれつつそう言う。


「それで、今後のことだけど。モニカとニム、冒険者として俺たちのパーティに加わらないか?」


「私が冒険者に?」


「ぼ、冒険者、ですか?」


 モニカとニムはいまいちピンときていないようだ。

自分が冒険者になるなど、考えたこともないという顔だな。


「この力があるから、戦闘能力はどんどん伸びる。もちろん、最初は俺たちで全力でサポートする」


「そうだね。こんなに簡単に身体能力を伸ばせるなら、問題ないかもね」


「た、確かにそうですね」


 モニカとニムがそう言う。


「ちなみに、身体能力だけではなく、技術や魔法も強化できるぞ」


 モニカとニムに、スキルのリストを書いて渡す。

彼女たちの現状のスキルと、取得できるスキルの主な候補だ。

参考に、俺、ミティ、アイリスのスキル構成も説明する。

あんまり方向性が被るのもよくないしな。


「冒険者か。タカシの力を前提にすれば、悪くはなさそうだね。でも、やっていけるかなあ。治ったばかりのお父さんを置いていくのも不安だし、店もせっかく再開したばかりだし」


 モニカが悩み顔でそう言う。


「モニカやニムがパーティに加わってくれるのであれば、しばらくはこの街を拠点に活動するつもりだ。このあたりにはそれほど強い魔物もいないし、初心者にはちょうどいいと思う。その間にやっていけそうか判断しよう。店が忙しいときは、そっちを手伝ってもらってもいい。それでどうだ?」


「うーん。……それなら問題ないかな。わかった。お父さんとも相談しておくよ」


 モニカがそう言う。


「ニムはどう思う?」


「わ、私も不安ですが……。冒険者は稼げそうですし、精一杯がんばってみたいと思います。母や兄とも相談しておきます。畑の管理もありますし」


 ニムにも前向きに検討してもらえるようだ。

彼女は家庭の事情もあり、やはり金銭面を気にしている。

冒険者で稼げる実感を得れば、より前向きに考えてもらえるだろう。


 モニカやニムの親に説明する際には、俺たちも同行したほうが話が早いかもしれないな。

気持ちの準備をする必要がある。

覚悟の準備をしておいてください。




レベル4、モニカ

種族:兎獣人

職業:ー

ランク:ー

HP:42(32+10)

MP:20(15+5)

腕力:17(13+4)

脚力:46(25+8+13)

体力:22(17+5)

器用:20(15+5)

魔力:27(21+6)


武器:ー

防具:布の服


残りスキルポイント10

スキル:

格闘術レベル1

脚力強化レベル1

料理術レベル3


称号:

タカシの加護を受けし者




レベル2、ニム

種族:犬獣人

職業:ー

ランク:ー

HP:35(27+8)

MP:12(9+3)

腕力:16(12+4)

脚力:14(11+3)

体力:36(20+6+10)

器用:10(8+2)

魔力:14(11+3)


武器:ー

防具:布の服


残りスキルポイント0

スキル:

体力強化レベル1

栽培術レベル1


称号:

タカシの加護を受けし者

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