78話 ミティのスキル強化

 ミティに俺のステータス操作の件を伝えた。

ステータス操作やスキルポイントという単語は使わず、うまく噛み砕いて説明したつもりだ。

肝心の、今回強化する具体的な方針を決めないとな。


「俺の試合も大切だが、ミティも明日は試合があるだろう」


「ジルガさんとですね。強敵ですが、全力を尽くします!」


 ミティがぐっと握り拳をつくり、意気込む。


「明日の試合や今後の冒険者の活動に向けて、ミティが伸ばしたい力や技術をきいておきたい。あと、ここだけの話だが、近々この街が魔物か何かに攻められるという噂があるんだ。防衛戦があるかもしれない」


「そうなのですか」


 正確に言えば、噂ではなくてミッション内容からの推測だ。

ビスカチオ師匠も南方の異変は把握していたし、そういう噂が実際にあってもおかしくはないだろう。


「今までは、勝手ながら俺がミティの強化の方針を決めていた。でも今後は、ミティ自身の意思も尊重したいと思っている」


「なるほど。確かに、自分のことは自分で決めたほうがいいかもしれません」


「うん。それで、例えば今ミティが持っている力はこういうのがある」


 ミティが今持っているスキルを紙に書き出し、見せる。


「ミティが持っていない力を挙げると、魔法や鍛冶、サポート系の力などがある」


 風魔法、鍛冶術、気配察知などのスキルを書き出し、見せる。


「これで少し考えてみてくれるか?」


「わかりました!」


 ミティが俺の書いたメモを真剣に眺めつつ、考え始める。

…………。

10分以上が経過した。


「うーん。うーん」


 ミティが考え込んでいる。


「うーん。……考えてみましたが、私には少し難しいですね」


「難しいか」


「やはり今持っている力の、槌術や投擲術を強化すれば、今後の冒険者活動や防衛戦でお役に立てると思います」


「そうだね」


「格闘術や闘気術、腕力強化などを強化すれば、明日の大会で早速活かせそうです。冒険者活動や防衛戦でも役に立つでしょうし。どちらかと言えば、これらのスキルを強化したいと思います」


「鍛冶やサポート系の力を新しく取得するのはどう?」


「鍛冶は昔断念したことがあるので、すごく興味はあります。しかしこのあたりには炉もありませんし、鍛冶の力だけがあっても活用できません。武闘会や防衛戦で直接的に役立つわけではありませんし」


 興味はあるのか。

いずれ取得させてあげたい。

もっとお金を稼いで、炉も作ってあげよう。

もしくは借りるとか。


「サポート系の力は、使ったことがないのでどういうものか想像するのが難しいです。タカシ様がオススメされるのであれば、従いますが」


「うーん。俺としては、ミティと同じ意見かな。まずは明日の大会に向けて、格闘術、闘気術、腕力強化あたりを強化するのがいいと思う」


「やはりそうですか」


「特に、腕力強化なら、防衛戦でも活かせるだろうし、いいと思う」


「そうですね。私もそれがいいと思います。それでお願いします」


「わかった。じゃあ、腕力強化の力を強化するね」



レベル12、ミティ

種族:ドワーフ

職業:槌士

ランク:E

HP: 90(69+21)

MP: 51(39+12)

腕力:221(67+20+134)

脚力: 43(33+10)

体力: 83(46+14+23)

器用: 35(15+5+15)

魔力: 49(38+11)


武器:ストーンハンマー

防具:レザーアーマー

その他:アイテムバッグ


残りスキルポイント10

スキル:

槌術レベル3

格闘術レベル1

投擲術レベル3

体力強化レベル1

腕力強化レベル4

器用強化レベル2

闘気術レベル3 「開放、感知、集中」

MP回復速度強化レベル1


称号:

タカシの加護を受けし者



「よし。無事に強化したよ。何か変わった?」


「はい。なんとなくですが、力が湧いてくる感覚があります。これなら明日の大会も、勝てるかもしれません」


「明日はジルガさんが相手か。強敵だけど、がんばってね。応援してるよ」


「はい! がんばります!」


 さて。

今回のスキル強化により、俺もミティも身体能力が大幅に向上した。

明日の試合では、俺もミティも結構いい線いけるような気がする。


 特に、ミティにはがんばって欲しいところだ。

ジルガを倒せばベスト4入り。

賞金もそれなりにもらえる。


 俺は1回戦で敗退したので、賭けに参加できるようになった。

ミティにいくらか賭ける方向で考えておこう。


 途中参加での賭けなので、1回戦から賭けていた場合と比べると倍率は低くなる。

また、1回戦の試合でのミティの活躍を見て、評価も改められているかもしれない。

それでも、2回戦に残った8人の中ではやはり評価は下だろう。


 今日の試合後にスキルによって強化されているのは、俺しか知らない。

この情報の差は大きい。

インサイダー取引のようなものだ。


 不確実性は残るが、分のいい賭けとなるだろう。

ふふふ。

がっぽり儲けさせてもらおうか。

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