34話 西の森の封鎖とミティのレベルアップ

 次の日の朝になった。

今日は西の森で狩りをしよう。

ミティとともに街の西門へ向かう。

門を通ろうとしたところ、いかつい顔の門番に声をかけられた。


「ちょっと待った。お前らは冒険者だな? 西の森へ行くつもりか?」


「ええ、西の森へ行くつもりです」


「西の森は現在立ち入り禁止だ。他の狩場を探せ」


「立ち入り禁止? なぜそんなことに?」


「俺も詳しくは知らん。詳しいことが知りたければ、冒険者ギルドに行けば分かるだろう」


「分かりました」


 ここで粘ることに意味はないだろう。

冒険者ギルドに向かう。


 冒険者ギルドに到着した。

受付嬢に話しかける。


「すいません、少し尋ねたいことがあるのですが」


「はい、なんでしょう?」


「西の森へ狩りに行こうとしたのですが、門番の方に止められてしまいました。なんでも西の森は現在立ち入り禁止になっているとか。いったい何があったのでしょう?」


「ああ、そのことですか。ここ最近、西の森で本来いないはずの魔物が目撃されているのです。」


「へえ、例えばどんなのです?」


「タカシさんが討伐に貢献した、ホワイトタイガーやスメリーモンキー。さらにブラックタイガーやワイルドキャットなどの目撃情報もあります」


 ブラックタイガー?

強そうな名前にも聞こえるが……。

それってエビじゃね?


「ブラックタイガーとワイルドキャットとはどのような魔物なのでしょうか?」


「ブラックタイガーは黒いトラ型の魔物で、非常に硬い皮膚で体を守っています。ワイルドキャットはネコ型の魔物で、素早い動きと爪による攻撃が厄介です」


 エビじゃなくて言葉の通りの黒いトラだった。

その後も詳しく話を聞く。

近いうちにCランク以上の冒険者を集めて、大規模な調査に乗り出すそうだ。

それまでは西の森には立ち入ることができない。


 仕方ない。

今日は北の草原でファイティングドッグを狩ることにしよう。


 

 ミティといっしょに、北の草原で犬を狩る。

もう慣れたものだ。

最初に戦ったときには恐怖したものだが。


 狩りの途中で、”黒色の旋風”を見かけた。

リーダーのビリーが率いる3人パーティだ。

ファイティングドッグ1匹と対峙している。


 少し見学してみよう。

何か勉強になるところがあるかもしれない。


 1人がファイティングドッグに斬りつける。

避けられる。

避けて犬の体勢を崩したところに、もう1人が斬りつける。

が、かすっただけだ。

致命傷にはなっていない。


 ファイティングドッグがビリーに跳びかかる。

ビリーは上手く小盾で防ぐ。


 うーん。

連携は取れているんだけど。

単純に個々の力量がいまいちのようだな。

ファイティングドッグ1匹に3人がかりで手こずるとは。


 ”ステータス操作”の恩恵を受けている俺やミティと比較すれば、どうしても見劣りしてしまう。

しかし、これが一般的な駆け出し冒険者のレベルなのかもしれない。

冷静に考えれば、多少の武器や防具があっても、怒り狂う犬となんかまともに戦えないしな。


 今思えば、ホワイトタイガー戦で最前線に立っていたドレッドとコーバッツは大したものだ。

ジークも最前線に立っていたが、彼は防具をがちがちに固めての守備重視。

ユナやリーゼロッテは遠距離攻撃担当。

黒色の旋風はサポートメイン。


 やはりCランクのドレッドとコーバッツは別格といったところか。

そしてその上にはBランクやAランクが存在する。

正直想像もできないレベルだ。


 

 黒色の旋風が、無事にファイティングドッグの討伐を終えた。

こちらには気づかず、新たな獲物を求めて歩いていった。

俺とミティは、その後も狩りを続ける。


 しばらく狩りを続けていると、ミティのレベルが9に上がった。

思っていたよりもレベルアップが早い。


 前回ミティのレベルが8に上がってから、それほど狩りはしていないはずだ。

なぜレベルが上がったのだろうか?


 推測だが、俺との模擬戦で経験値が入ったのではないだろうか。

あの模擬戦は、危険を十分に避けて行ったとはいえ、初の対人戦だった。

実感としても、かなり学ぶところが多かったように思う。

システム面でも、それなりの経験値が入っていてもおかしくはない。


 となると、俺がレベル12になる日も遠くないかもしれない。

俺がレベル11になったのは、ちょうど1週間前のことだ。

あれから、スメリーモンキーの討伐を含め、それなりに魔物を倒してきた。


 俺がレベル12になれば、まずは火魔法をレベル5にする。

そして、ミッション報酬で”中級者用装備等一式”と”スキルポイント20”を手に入れる。


 俺がこの世界に来てすぐに、ミッション報酬で”初心者用装備等一式”を手に入れた。

その時は、服、剣、鎧、貨幣、カバンが手に入った。


 当時は助かった品々だが、今であればさほど重宝するような品々ではない。

今回の報酬は中級者用と銘打たれている。

それなりのものを期待したいところだ。


 特に、鎧とカバンには期待している。


 俺が装備している”レザーアーマー”は、初心者向けのものだ。

金銭的な余裕がないので、あまり上質なものは買えていない。

ゾルフ砦での防衛に参加するにあたり、できれば上質な鎧を手に入れたいところだ。


 カバンとしては、アイテムバッグを期待したい。

兄貴たちによると、高ランクパーティであれば、アイテムバッグを所持していることは珍しくないという話だった。

実際、Cランクパーティの“蒼穹の担い手”はアイテムバッグを所持していた。


 まああのパーティからは、どことなく品の良さを感じられたため、貴族出身だったりするのかもしれないが。

いずれにせよ、アイテムバッグは“激レア”というほどの品物でもないだろう。

中級者用装備等一式として支給されても、不自然ではないはずだ。

 


 おっと。

ミッションのことで長々と考え込んでしまった。

今はとりあえず置いておこう。


 それよりも今はミティだ。

スキルポイントが10入った。

どうしようか?


 ミティのステータスは現在このようになっている。



レベル9、ミティ

種族:ドワーフ

職業:槌士

ランク:E

HP:72(55+17)

MP:39(30+9)

腕力:140(50+15+75)

脚力:31(24+7)

体力:47(36+11)

器用:18(10+3+5)

魔力:38(29+9)


武器:ストーンハンマー

防具:レザーアーマー


残りスキルポイント10

スキル:

槌術レベル3

投擲術レベル1

腕力強化レベル3

器用強化レベル1

MP回復速度強化レベル1


称号:

タカシの加護を受けし者



 ここで、スキル取得に必要なポイントを整理しておこう。


新たなスキルを取得するには、10ポイント。

スキルレベル1を2にするには、5ポイント。

スキルレベル2を3にするには、10ポイント。

スキルレベル3を4にするには、15ポイント。

スキルレベル4を5にするには、30ポイント。


 スキルレベル5にするために必要なポイントが多くなっている。

その分、威力にも期待したいところだ。


 さて、ミティのスキル強化の方針を考えないとな。

前回のレベルアップ時から、そんなに状況は変わっていない。

当然、スキル強化の方針にも大きな変動はない。


 とは言っても、念のために整理しておく必要はあるだろう。

考えを整理していこう。

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