25話 狩り勝負2日目

 今日は狩り勝負の2日目だ。

朝からゴブリンやハウンドウルフを堅実に狩った。

狩りを無事終了し、ラーグの街の冒険者ギルドに向かっているところである。


 ミティの投擲術のスキルはなかなか良いスキルだった。

ミティは器用のステータスが低いため、投擲の命中率が低い。

しかし腕力の高さを活かして大きめの石を投げることで、その命中率の低さを多少は補える。

腕力の高いミティと相性抜群のスキルだ。


 今日の狩りで俺もとうとうレベルが上がった。

レベル10から11だ。

これでスキルポイントが25。

しかし火魔法をレベル5にするにはスキルポイントがあと5足りない。


 ミッション報酬にせよレベルアップ報酬にせよ、次にスキルポイントが入るのはまとめて20だ。

現状ではスキルポイントを10残しておけば良いだろう。

すなわち、15ポイント分は今消費してしまって構わない。


 どのスキルを取得もしくは強化するべきか。

森の狩りで役立つスキルか砦防衛に役立つスキルを取るべきだ。


 森の狩りを重視するなら何がいいだろう。

現状でゴブリンとハウンドウルフは問題なく討伐できる。

問題はクレイジーラビットだ。

もしクレイジーラビットを狩れるようになれば効果は大きい。


 そう考えると、魔力強化を取るのがいいかもしれない。

クレイジーラビットは討ち漏らしが怖い。

ゴブリンと違って少しのミスが命取りになる。

魔力のステータスが上がることにより、魔法の威力や範囲の調整が上手くなる。

その結果、討ち漏らしが少なくなるだろう。


 剣術はどうか。

剣術は基本的には1対1の攻撃系スキルだから、殺到するクレイジーラビットを何とかするのには向いていないな。


 回避術はどうか。

クレイジーラビットは囲んで攻撃してくるから、多少避けたところであまり意味はない。

盾術も同じようにあまり意味はないな。


 うん、魔力強化を取るか。

砦防衛にも役立ちそうだし。

火魔法レベル5を高い魔力で自在に操れば、砦防衛で大活躍まちがいなしだろう。


 ステータス管理でスキルポイントを消費し、魔力強化の項目を選択し実行、続けてレベル2に強化する。

一瞬視界が点滅する。


 よし、これでクレイジーラビットも狩れるようになっただろう。

魔力の値が上がったことにより、ついでにアイテムボックスの容量も増えた。


 次にミティだ。

彼女はレベルが5から6に上がった。

スキルポイントは10。

少し考えて、腕力強化をレベル3にした。

ハンマーでの攻撃にも石を投げつけるときにも、両方に効果がありそうだ。

特に投擲術には影響が大きそうだ。

もう小さめの岩なら投げられるんじゃないかな。


 俺とミティが2人とも強化された。

これでさらに効率が良くなる。

明日の狩りが楽しみだ!

そんなことを考えながら歩いていると、ちょうど冒険者ギルドに到着した。



 中に入り受付嬢にギルドカードを渡す。

討伐の報告をし、素材の買い取りもお願いする。


 今日の報酬は金貨8枚だった。

昨日よりも若干上がった。

明日はクレイジーラビットも狩る分、さらに上昇が見込めるだろう。

なかなかの効率だ。


 冒険者ギルドから退出し、宿に向かう。

その途中で、例のチンピラ4人組と出くわした。


「ん? これはこれは、期待の新人様じゃねえかあ。狩りの調子はどうでえ?」


「くっくっく。今さら賭けの取り消しは認めんぞ」


「ご心配なく。狩りは順調ですよ。昨日と今日で金貨15枚の報酬です」


 相手は4人。

こちらが確実に勝っているという自信はないが、少なくともいい線はいっているはずだ。


「なにい? たった2人でそんなに稼げるわけがねえだろうが!」


「くっくっく。ふざけやがって。いったいどんなイカサマをした?」


 こいつらがこんなイチャモンをつけてくるということは、こっちが勝っていると見てよさそうだ。


「イカサマなんてしていません! タカシ様の実力をもってすれば、この程度は当然です!」


「本当かあ? 口では何とでも言えるからな」


「くっくっく。いいことを思いついたぞ。明日は俺達がお前らの狩りに同行しよう。そうすればイカサマをしていることがすぐに分かる」


「そいつはいい考えだ。おいガキ共、明日の朝に冒険者ギルドに来い!」


「くっくっく。来なければイカサマを認めたとみなすぞ。せいぜい上手い言い訳でも考えておくんだな」


 そう言ってチンピラ達は去っていった。

なんだか妙なことになってきたぞ。

あいつらが狩りに同行?

どうなんだろう。


 現状で十分効率的に狩りができているし、メリットは低いな。

デメリットはどうだ?

報酬は狩った人のものだ。

あいつらと山分けなんてことにはならないだろう。

報酬面は問題ない。


 あいつらに背後を襲われるかもしれないな。

俺を殺してミティを奪うとかありうるかもしれない。

いや、さすがにないか?

いくらチンピラとはいえ、そんなに極悪なことはしないような気もする。

しかし注意はしておくべきだ。

一応、ギルドの受付嬢に相談しておくか。



 冒険者ギルドに戻り、受付嬢に話しかける。


「すいません。ちょっと相談がありまして」


「なんでしょうか?」


「実は、明日あの人達が狩りに同行することになったのですが、大丈夫でしょうか? 背後を襲われたりしないか心配なのですが」


「さすがにそんなことはしないと思いますよ。悪い噂が流れれば、冒険者としての信用にかかわりますので」


「でも、例えばミティを奪うために襲ってきたりとか」


「主人が死亡した場合、残された奴隷の所有権はサザリアナ王国に移ります。ミティ様目当てで襲われる可能性は低いかと」


 うーん。

心配はしなくてもいいのかな?

確かにミティの所有権を得られないのであれば、俺を襲うメリットはほとんどない。

せいぜい生意気な新人を懲らしめるとか掛け金の金貨10枚をなかったことにするとか、それぐらいだろう。

大丈夫そうだな。



 受付嬢に礼を言い、ラビット亭に向かう。

街の露店通りに入ったときに、またあの少女と会った。

リンゴ売りのまだ小さい少女だ。

頭には可愛らしい犬耳がある。


「あ、あの、またリンゴを買っていただけませんか?」


 そう言ってカゴに入ったリンゴを差し出してくる。

向こうも俺のことを覚えているようだ。

相変わらず薄汚れている姿が、同情を誘う。


 この2日間で少し金銭的に余裕ができた。

この少女と再び会ったのも何かの縁。

少し奮発するか。


「ああ、全部買うよ。お釣りはいらない」


 俺はそう言って銀貨1枚を彼女に渡し、カゴに入っている6つのリンゴ全部を買う。


「あ、ありがとうございます。ほ、本当に、ありがとうございます」


 彼女はしつこいぐらいにお礼を言い、何度もお辞儀をしていた。

これで少しでも彼女の生活が楽になれば良いのだが。


 ラビット亭に着く。

メインにはもちろん肉料理を注文した。

そして、せっかくなので先ほど買ったリンゴをモニカに渡し、リンゴを使った料理をお願いした。

するとデザートとしてアップルパイのようなものが出てきた。

なかなか美味だ。

今後もあの少女を見かけたらリンゴを買ってあげることにしよう。

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