21話 ミティの冒険者デビュー

 防具屋に到着した。

アドルフの兄貴とレオさんに連れてきて頂いた防具屋だ。

店主はドワーフとかではない普通のじいさんである。

話しかける。


「すいません。彼女の防具を購入したいと考えているのですが」


 じいさんはこちらをギロリと睨んできた。

さらに、ミティの体を上から下へとじろじろと見ている。


「ふん。誰かと思えば、いつぞやの小僧か……。予算はいくらだ?」


 この防具屋には一度しか来たことがないんだが。

よく覚えているな。


「予算は金貨数枚ほどで考えています」


「金貨数枚だと? その程度の予算じゃ大したものは買えんぞ。せいぜい革の鎧だな」


 じいさんはそうぶつくさと文句を言いつつも、良さそうなものをいくつか見繕ってくれている。

これがツンデレってやつか?

しかし男のツンデレなんぞ誰も望んでいないぞ。


 じいさんが見繕ってくれたものをミティに試着させ、着た感じが良いものを選んでもらう。

俺用にも1つ選ぶ。

2つとも普通の革の鎧。

初心者用装備等一式で出てきたものと同じような質だ。

じいさんに鎧の代金を支払い、次は武器屋へと向かう。



 武器屋にやってきた。

ちなみにここの店主もドワーフではない。


「こんにちは。彼女が使うハンマーを購入したいのですが」


「ほう、ドワーフの娘か。このあたりでは珍しいな。……よし、この槌を試してみろ」


 ミティが店主からハンマーを受け取る。

先端部分が木でできているようだ。

先端部分の大きさはミティの頭と同じくらい。

ミティが軽く素振りをする。

問題なく振れているようだ。


「ふむ、その重さなら少し軽いかもしれんな。次はこっちを試してみろ」


 店主が次のハンマーをミティに渡す。

今度のは先端部分が金属製だ。

先端部分の大きさはミティの肩幅ぐらい。

ミティが素振りをする。

ちょっと重そうだ。

手がプルプルしている。


「さすがにそれは厳しかったか。しかし若さの割には力が強いな。なかなか将来有望だぞ。次はこの槌はどうだ?」


 店主が新たなハンマーをミティに渡す。

先端部分が石でできているようだ。

先端部分の大きさはさっきの2つの中間ぐらい。

ミティが素振りをする。

これが一番しっくりきているようだ。


「ふむ、それぐらいが良かろう。ドワーフの娘よ、振ってみて問題はないか?」


「はい、問題ありません。タカシ様、これが良いかと思います」


 ミティは気に入ったようだ。

店主もオススメしている。

このハンマーを購入することにした。

このハンマーをストーンハンマーと名付けよう。



 防具も武器も購入した。

いよいよファイティングドッグ討伐だ!

と言いたいところだが、その前に冒険者ギルドに向かう。

ミティの冒険者登録をしておかないと、討伐報酬がもらえないからな。


 冒険者ギルドに到着した。

受付嬢と目が合う。

20歳くらいのお姉さんタイプの人だ。

彼女とはもう何度も顔を合わせており、ある程度打ち解けている。


「こんにちは。こちらのドワーフの冒険者登録をお願いしたいのですが」


「こんにちはタカシさん。あら? そちらのドワーフの彼女は、もしかしてタカシさんの奴隷ですか?」


「ええ、この前のホワイトタイガー討伐でまとまったお金が入りましたからね。そのお金に借金分を足して、思い切って買っちゃいました」


「随分と思い切りがいいですねえ。昨日報酬を受け取ったばかりなのに……」


 心なしか受付嬢の視線が冷たい気がする。

やはり男が女性の奴隷を買うのは心証が悪いのだろうか。

別にナニする目的で買ったわけではないよ。

本当だよ。

ホントウダヨ。

ちょっと言い訳しておこう。


「近いうちに東の方に行こうかと思っていまして。1人だと不安なので、戦力増強のために購入しました」


「ふーん。まあいいでしょう。彼女の冒険者登録ですね? 登録料として銀貨1枚を頂きます。こちらの用紙に名前と職業をご記入下さい」


 そういって紙を1枚渡してきた。

ミティに字が書けるか聞いてみる。

彼女は字が書けないそうだ。

俺が代わりに記入しよう。


名前:ミティ

職業:槌士


 これで良いだろう。

記入した紙と銀貨を受付嬢に提出する。


「お名前は、ミティ様……。職業は槌士ですね。ではギルドカードを発行致しますので少々お待ち下さい。」


 そう言って彼女はカウンターの奥へと引っ込んでいった。

しばらく待つ。

彼女が戻ってきた。


「お待たせしました。こちらがギルドカードになります」


 受付嬢からギルドカードを受け取る。

もちろん最初はEランクだ。

礼を言い、冒険者ギルドから出る。



 防具も武器も購入した。

いよいよファイティングドッグ討伐だ!

と言いたいところだが、いきなり実戦はマズイ。

まずは街から出て少し歩いたところで練習することにする。


 最初は地面に石を置いてそれをハンマーで叩く練習だ。

問題なく当たる。

いくら器用のステータスが低くとも、これぐらいならば外さないようだ。


 次に、ゆっくり動く俺をひかえめに攻撃してもらう練習をした。

これも大きな問題はない。

しかし若干ハンマーの攻撃精度が落ちる。

ミティ1人でファイティングドッグと戦うのは危険が伴うな。

俺がサポートする必要がありそうだ。


 最後に回避の練習もした。

俺がそこそこの速さで攻撃し、それを回避してもらう。

これはまったく問題がなかった。

回避には器用のステータスが影響しないみたいだ。


 そんな感じで、小一時間ほど練習した。

いよいよファイティングドッグの討伐である。

辺りを索敵していると、ファイティングドッグを1匹発見した。


 まずは俺が手本を見せる。

今の俺のステータスとスキルであれば、正面から奴と対峙し倒すこともできるだろう。

しかしそれではミティの参考にならない。

初心を思い出し、まずは回避に専念する。

そして隙を見つけて重い一撃をぶつける。

こうすることによって安全に狩れる。

兄貴達の教えだ。


 無事討伐が完了した。

ミティも戦闘の雰囲気は掴めただろう。

次は彼女にも攻撃してもらう。

緊張している様子だったので声をかける。


「とにかく落ち着いて回避するんだよ。ファイティングドッグは動きが単調だから、焦らずに見極めれば怖い相手じゃない。俺もサポートするから」


「分かりました! 頑張ります!」


 よしよし、元気はあるな。

その調子なら大丈夫そうだ。

辺りを索敵し、ファイティングドッグを発見した。


 まずは俺が前に出て、奴の注意を引きつける。

回避に専念し、隙を見て攻撃を加える。

奴の注意が完全に俺に向いている。

ミティが奴の後ろへ回り込む。

ハンマーを振りかぶり、奴へと振り下ろす。

見事にクリーンヒットした。


「よし、いいぞミティ! 素晴らしい攻撃だ!」


 やはりハンマーの威力は高いな。

俺がある程度弱らせておいたのもあるが、彼女の一撃でほぼ瀕死になっている。

レベリングのこともある。

念のため彼女にとどめを刺してもらった。


「この調子でガンガン狩っていこう。ミティには才能があるぞ。天才かもしれないな!」


 どんどんほめて彼女には自信を取り戻してもらうつもりだ。

それに才能を感じるのも嘘ではない。

少なくとも俺よりはありそうな気がする。

ミティもほめられて満更でもなさそうだ。


「ありがとうございます。全てはタカシ様のおかげです。これからも頑張ります!」


 そうしてその後もしばらくファイティングドッグ狩りに励んだ。

ミティのレベルが2から3に上がり、スキルポイントが10追加された。

どうやら彼女の場合は、レベルが1上がる度にスキルポイントが10入ると考えてよさそうだ。


 彼女のポイントを10消費し腕力強化を取得する。

長所を伸ばす方針だ。

これでさらに彼女のハンマーの威力が上がる。

当たりさえすれば、ファイティングドッグを高確率で一撃で倒せるようになるだろう。

犬狩りの効率が上がることに期待したい。


 

 そろそろ今日の狩りは終わりにするか。

少し早いが、初日から無理することもないだろう。

それに、宿屋や飲食店を見て回る時間も欲しいからな。

まずは報酬を受け取りに冒険者ギルドへ向かおう。



レベル10、たかし

種族:ヒューマン

職業:剣士

ランク:D

HP:79(61+18)

MP:100(40+60)

腕力:36(28+8)

脚力:35(27+8)

体力:81(35+11+35)

器用:42(32+10)

魔力:36


武器:ショートソード

防具:レザーアーマー、スモールシールド


残りスキルポイント5

スキル:

ステータス操作

スキルリセット

加護付与

異世界言語

剣術レベル3

回避術レベル1

気配察知レベル2

MP強化レベル3

体力強化レベル2

肉体強化レベル3

火魔法レベル4 「ファイアーボール、ファイアーアロー、ファイアートルネード、ボルカニックフレイム」

水魔法レベル1 「ウォーターボール」

空間魔法レベル2 「アイテムボックス、アイテムルーム」

MP消費量減少レベル2

MP回復速度強化レベル1


称号:

犬狩り

ホワイトタイガー討伐者



レベル3、ミティ

種族:ドワーフ

職業:槌士

ランク:E

HP:38(29+9)

MP:21(15+5)

腕力:46(25+8+13)

脚力:13(10+3)

体力:25(19+6)

器用:4(3+1)

魔力:18(14+4)


武器:ストーンハンマー

防具:レザーアーマー


残りスキルポイント0

スキル:

槌術レベル1

腕力強化レベル1

MP回復速度強化レベル1


称号:

タカシの加護を受けし者

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