7話 奴隷商館とミティ
奴隷商館にやってきた。
大通りから少し外れたところにある。
入口に門番が居るため、少し緊張感がただよっている。
建物の外観はきれいだ。
あまり「奴隷商館」という感じがしない。
まあ虐待されている奴隷とか見せられても俺の精神が持たないしな。
これはこれで歓迎すべきことだろう。
ただ、この様子だと「凄惨な環境の奴隷を購入して甘やかす」という方向性は少し厳しいかもしれない。
普通に甘やかすだけでもある程度の忠義度は稼げそうだが、加護を付与できる忠義度50までは遠い。
ちなみに今の俺の所持金は、金貨7枚と銀貨10枚と銅貨12枚だ。
銅貨の下に鉄貨や賤貨も存在するが、今はおいておく。
日本円にしておよそ8万1200円ほど。
分かっていたことだけど、絶対足りないよなー。
まあ下見だけでもさせてもらうか。
思い切って店内に入ろうとすると、門番に止められる。
いかつい顔で少し怖い。
「ちょっとお待ちください。店内への武器の持ち込みはご遠慮して頂いております。こちらでお預かり致します」
意外に丁寧な口調だ。
大人しく武器を渡して預かってもらう。
武器を渡すのに不安はあまりない。
考えてみれば当然だ。
宝石に引けを取らない高価な商品を扱っているんだし。
強盗を警戒しているんだろう。
改めて入店すると、若い店員に応接室っぽいところに案内された。
ソファに座る。お茶が出される。
丁重なもてなしに内心焦る。
これだけの扱いを受けて「金貨7枚しか持ってませーん」とか言ったらキレられないかな?
不安だ。
俺の外見からは、「あまり金は持っていない」という雰囲気を感じるだろう。
別にこのレベルのもてなし程度は普通なのかもしれない。
「ひやかしっぽい客でも、一応はもてなす」みたいな?
そんなことをゴチャゴチャ考えていると、50歳くらいの店員が部屋に入ってきた。
俺の向かいのソファに腰掛けて、話しかけてくる。
「お待たせしましたお客様。ラーグ奴隷商会へようこそ。本日はどのようなご用でしょうか?」
「私は冒険者をしているのですが、戦力の足しになる戦闘奴隷を購入したいと考えています。ただ、何分初めてのことですので、奴隷の相場というものを知りません。今後の目標を持つという意味で、今回は下見をさせて頂けたらと…………」
下手にハッタリをかける必要もないだろう。
内心は不安でいっぱいだが、正直に話した。
俺の不安が顔に出ていたのか、彼は優しそうな声でこう答えてくれた。
「ええ、大丈夫ですよ。高価な買い物ですし、何度も検討を重ねた末に決断するのが普通です。特に当店は、比較的若い冒険者のお客様も多いです。相場を知らないからと下見にいらっしゃる方も少なくありません。それで、具体的にはどのような戦闘奴隷をお望みですかな?」
「魔物と戦う気概と最低限の戦闘能力さえあれば、それほどの実力は要求しません。私もまだまだ駆け出しですし。ただ、できれば若い女性がいいです」
本音を言うと、若い女性はほぼ必須条件だ。
俺、女の子好きだし。
ただ、あんまりがっつき過ぎるのも恥ずかしい。
最後にさりげなく付け足す感じでごまかした。
すると、彼は意味ありげに微笑んでこう答えた。
「分かりました。その条件ですと、お値段は金貨400枚から600枚といったところですな。あくまで目安ですが。一度実際にご覧になりますか?」
俺が頷くと、彼は一度部屋から出て行った。
たぶんお見通しなんだろうなあ。
若い冒険者もたまに来ると言っていたし、こんなやりとりを何回もしてきたのかもしれない。
大人しくそのまま待つ。
この部屋に連れてくるのかな?
それとも俺が見に行くけど、今は準備中とか?
しばらく待っていると、彼が部屋に戻ってきた。
「お待たせしました。奴隷の準備が整いましたので、こちらへお越しください」
案内に従い、違う部屋に向かう。
部屋に入ると、7人の奴隷が立って並んでいた。
少し離れたところにソファがある。
そこに座るように促されたので座る。
「では各奴隷のご説明を致します」
そう小声で話しかけてくる。
奴隷とはいえプライバシーみたいなものもあるのかな。
大声では説明しないようだ。
彼の説明を聞く。
1番左の娘は20代前半のヒューマン。
元は村人で、狩りの経験あり。
そこそこ美人。
2番目の娘は10代後半のヒューマン。
少し臆病である。
外見は癒し系。
3番目の娘は10代後半の獣人。
年齢の割には戦闘能力が高い。
キリッとした目つきの美形。
スレンダーな体形をしている。
4番目の娘は10代後半のドワーフ。
一般的にドワーフは器用な者が多いが、彼女は生まれつき不器用。
鍛冶はできないが、力は強い。
年齢の割にやや子供っぽい外見。
5番目の娘は10代前半の獣人。
犯罪歴があるが、実力は確か。
目つきが濁っている。
6番目の娘は20代半ばのヒューマン。
色っぽい。
明らかに戦闘向きじゃないだろ。
7番目はヒューマンの男だ。
20代後半。元冒険者で実力もなかなか。
がっしりしている。
1番目の娘は無難の一言だ。
彼女の目を見ると、そこそこの活力が感じられた。
2番目と6番目の娘はさすがに戦闘能力に不安がある。
加護が付かない内は本来の実力で戦ってもらう訳だからな。
3番目の娘は良さそうだ。
しかし心なしか俺への視線が冷たい気がする。
4番目の娘も良さそうだ。
先ほどからこちらをチラチラと見ている。
なんだろう?
なんか気になるな。
5番目の娘は抵抗がある。
最初の奴隷が犯罪奴隷はちょっとハードルが高い。
目がにごっているし。
7番目の男は悪くはない。
ただし、加護は付けられる自信がない。
主に俺の精神的に。
いい年した男を甘やかすとか……無理だな。
1番目・3番目・4番目あたりが良いかな。
店員に彼女らが奴隷になった経緯を聞いてみたのだが、答えてくれなかった。
やはり奴隷とはいえプライバシーみたいなものがあるんだろう。
ただし、いずれも犯罪歴はないとのことだ。
値段も聞いてみた。
1番目のヒューマンは金貨500枚。
若い女性の場合、金貨500枚くらいが最も一般的な奴隷の相場らしい。
3番目の獣人は金貨900枚。
戦闘力の高さと見た目の良さから値段が跳ね上がっているということだ。
4番目のドワーフは金貨400枚。
世間では「ドワーフといえば鍛冶」という印象が一般的。
もちろん鍛冶職以外に就くドワーフも多い。
しかしそういった場合でも、手先の器用さが必要な仕事に普通は就く。
「鍛冶ができないくらい不器用」というのは、ドワーフにとって大きなマイナス評価になるようだ。
さて、今日のところはこのくらいにしておこう。
あくまで下見だ。
実際に買う訳ではない。
これ以上の長居はさすがに悪い。
店員もそろそろ頃合いだと感じたのかこう切り出してきた。
「どうですかな? ご参考になりましたか? 今日は下見とのことですが、いずれ奴隷を購入される時には、ぜひ当店をご利用頂きたい」
「ええ。とても参考になりました。本日はご丁寧にありがとうございました」
そう言って俺は部屋から出ようとする。
ふと奴隷達の方を見てみると、ドワーフの娘と目があった。
彼女の名前は「ミティ」だ。
うーん。
彼女とはどこかで一度会っている気がする。
しかし思い出せない。
俺の好みだけでいえば、彼女が一番だ。
何度見ても可愛いなあ。
ついそのままじっと見つめていると、彼女はニコッと微笑んでくれた。
レベル4、たかし
種族:ヒューマン
職業:剣士
ランク:E
HP:40(33+7)
MP:19
腕力:16(13+3)
脚力:14(12+2)
体力:22(18+4)
器用:19(16+3)
魔力:18
武器:ショートソード
防具:レザーアーマー、スモールシールド
残りスキルポイント65
スキル:
ステータス操作
スキルリセット
加護付与
異世界言語
剣術レベル1
肉体強化レベル2
レベル?、ミティ
種族:ドワーフ
HP:???
MP:???
腕力:高め
脚力:???
体力:???
器用:低め
魔力:???
スキル:???
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