ACT53 校舎にて

 学園都市スレイツェン。

 初等部校舎の屋上ではノエルとパトリス、クライヴの三人が空を仰ぎ、天空に響き渡るリューシンガの言葉に耳を傾けていた。

「ディア先生だ……」

 クライヴが呟く。

「聖女様……だったんだ」

 パトリスが言う。

「違う、聖女様になったんだよ」

 ノエルが言った。

「なあ、これからどうなっちゃうんだ?」

「なんだよ、心配してんのかクライヴ?」

「だって、これって世界が大きく変わっちゃうってことだろ?」

「大丈夫。だってあのディア先生なんだよ? ううん、今は聖女クローディア様だね」

 三人はスレイツェンの町並みを見下ろす。

 何処もかしこもが騒然としていた。

 だがその喧噪に耳を澄ましてみても、リューシンガを批判するような声が聞こえなかった。

 ふと、何処からか掛け声が聞こえてくる。

 まるでお祭りでも始まったかのような威勢の良い声。

 その声は波となって街を覆い尽くし、人々は口々にその言葉を発していた。

 ――聖女クローディア様万歳。

 三人は、幼いながらもその歴史の変わり目を肌で感じていた。

「……がんばってね。ディア先生」

 手摺にもたれるノエルが、クローディアの凛々しい表情を眺めながら小さく呟いた。

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