第85話 case85
シュウヤは今まで見たことがない方法で進んでいくセイジと、その後を追いかける2人を見て、呆然としていた。
すると、ノリを抱えたくるみが上空から降り立ち、2人は「ただいま~」と言いながら合流する。
「あっちコカトリスいたよ」
ノリが言うと、セイジは「そうか。 姫、手伝ってくれるか?」と声をかける。
くるみが「ドーン?」と聞くと、セイジは「ああ。 歩きにくくて敵わん」と言い、くるみの後ろに移動した。
くるみは「ほーい」と返事した後、その場でしゃがみ込み、セイジはくるみの背後に立った後、アックスの柄を握りしめた。
『何するつもりなんだ?』
シュウヤが不思議に思う中、セイジは「もう少し右だ」と言いながら、アックスの柄の先端を移動させる。
「もう少し右だ。 そこで良い」
セイジはそう声をかけた後、アックスの柄を握り締めて力を籠め、くるみも柄に力を籠める。
「行け」
セイジが呟くように言うと、先ほどとは比べ物にならないほどの、大きすぎるくらい大きな火球が、アックスの先端から爆音と共に勢いよく放たれた。
火球は魔獣にぶつかった後も、勢いを弱めることはなく、開けた場所を通り抜けていく。
すると、開けた場所から、先ほどよりも大きなコカトリスが、火だるまになり暴れまわっている。
「な、なに!? そんな馬鹿な!!??」
シュウヤは目の前の光景を疑っていたが、セイジたちは平然としている。
「放っておけば死ぬんじゃない?」
ノリが言うと、セイジは眼鏡を擦り上げながら答えた。
「いや、10分以内に終わらせる」
セイジの一言で、全員はコカトリスを囲むように配置に着き、武器を構える。
太一は一切ひるむことなく、盾を構えながら1歩前に出ると、コカトリスは太一に向かって大きく息を吸い込み、胸を膨らませていた。
が、その瞬間、ノリと亮介が飛び上がり、燃えて細くなりつつあった、コカトリスの首を、挟み込むように落とす。
コカトリスは叫び苦しむ暇もないままに、頭を地面にたたきつけ、血の雨を降らせていた。
「何分だった?」
「5分32秒」
ノリが聞くと、セイジが時計を見ながら答える。
「移動に時間がかかったかぁ。 近場に居たら3分切れたかもね」
「そうだな。 直線状に居たら1分切っていたかもな」
セイジはニヤッと笑いながら言うと、金色の蝶がヒラヒラと舞い踊る。
セイジは金色の蝶を見ながら「明日からはA+だ。 集会所の場所も変わるから、帰って引っ越しの準備をするぞ」と言い、みんなは「うぃ~」と答え、ゲートの中に入って行った。
『ありえん… こいつらがB級だと? 全員S級でもおかしくないだろ? なんなんだこいつらは… あのウォーリア2人の速さもありえん… それにあのナイト、タンクナイトではないんだろ? 普通ならコカトリスの吸い込みが起きた時に、少しは怯むはずなのに、全く怯んでいなかった… 本当にナイトなのか?』
シュウヤは目の前で起きた光景が信じられないままに、ゲートを潜り抜けていた。
集会所に戻った後、シュウヤはすぐさまくるみに声をかけた。
「うちのギルドに移動しないか?」
「ヤダ」
「・・・・」
シュウヤは即答してきたくるみに対し、言葉を失っていた。
「・・・S級ギルドに入れるんだぞ?」
「だから何?」
「魔法石と名誉、それに強い装備を作ることが出来るんだぞ?」
「そんなの興味ないから。 みんなと一緒に楽しく居たいだけだから」
くるみはそう言うと、呼び止める声に耳も傾けず、ギルドルームの方へ向かってしまう。
シュウヤは悔しそうに手を握りしめ、セイジに向かってこう言い放った。
「どうなるかわかってるだろうな?」
「・・・・はい」
「あとはお前次第だ」
シュウヤはそう言うと、握り締めた手をそのままに、集会所を後にしていた。
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