第51話 case51

氷の壁で足止めを食らっていた亮介は、ふと疑問に思っていた。


『あいつ… 何で回復しないんだ? まさか、マナ切れ!? 氷の壁で魔力を使ってるのか!?』


「センセ!! ここに居たら邪魔になるだけだ!! あいつマナ切れ起こしてる!!」


亮介が怒鳴りつけると、その場にいた教師と共に、勢いよくその場を飛び出し、階段を駆け降りた。



くるみは風を使わず、勢いよくライオンの顔の横に回り込む。


が、ヤギの頭はギリギリと歯ぎしりをし、くるみの体を吹き飛ばした。


くるみはアックスを地面にたたきつけ、外に追い出そうとする勢いを止めると同時に、右腕の傷から勢いよく血が噴き出す。


「吹き飛ばしは聞いてねぇぞクソジジイ…」


くるみは痛む右腕を押さえながら、急いで教室の前に移動し、渋々回復魔法を使った後、『ラスト…』と思いながら、マナポーションの先端を指で弾き飛ばした。



「くるみ!! 壁解除しろ!!」


亮介の怒鳴り声が聞こえ、くるみは小さく笑った後「遅ぇよボケ」と言い、ポーションを飲み干す。


『死角が後ろしかない。 こっちに気を引きながら、背後から攻撃するにはこれしかねぇ!!!』


くるみは自分に物理攻撃アップの魔法をかけた後、その場でグルグルと回転を始める。


くるみの周囲には竜巻が起こり、あちらこちらから悲鳴が聞こえた。


「どっりゃああああああああ」


くるみは叫びながらアックスを手放すと、アックスは回転をしながら勢いよく飛び出したが、ヤギのせいで軌道が変わり、壁を壊しながら外へ飛んでいく。


くるみが右手を目の前に掲げると、ヤギはギリギリと歯ぎしりを立て、目の前の空間を歪ませた。


外に飛び出したはずのアックスは軌道を変え、回転しながらくるみの手に戻ろうと、勢いよく加速する。


回転しながら戻ってきたアックスは、ヤギの首根っこに突き刺さって止まり、ヤギは悲鳴を上げて暴れまわった。


ライオンの顔は咆哮を上げながら、ヤギを静止させようと引っ張るばかり。


「隙あり!!」


くるみは地面に向かって力を籠めると、ビキビキと音を立てながら床を凍らせ、暴れまわるキマイラの足の動きを止めた。


ヤギは首から大量の血を流しながら、ギリギリと歯を鳴らし、目の前の空間をゆがめる。


くるみは大剣を装備した後「いい加減くたばりやがれやあああああああああ」と叫びながら、大剣を槍投げのように勢いよく投げ飛ばした。


大剣はアックスの刺さっているところに突き刺さり、両サイドから剣の刺さったヤギの首は、勢いよく跳ね飛ばされた。


くるみは肩で息をしながら、氷のアックスを装備し、両手でしっかりと握り締めると、アックスの先端がビキビキと音を立て、大きな氷の剣を作り上げる。


その瞬間、ライオンの頭だけになったキマイラの足元にあった氷が姿を消し、キマイラは逃げ出そうと振り返る。


「逃がすかぁぁぁぁ!!!!」


くるみはアックスを両手で掲げたまま、勢いよくジャンプをし、着地と同時に思い切り振り下ろすと、辺りには粉塵と冷気が勢いよく噴き出した。


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