ホワイトデーに気持ちをこめて

「──ということがあったんだ」

「なにそれ? 生まれてこの方、未だに恋人の一人もいない私への自慢?」


 バレンタインの翌日。俺は朝から最寄りのコンビニで、朝から働く腐れ縁の千夏ちかに、昨日のことを話したら怒られた。


「ん。まあそれもある」

「うわーすげー腹立つ」


 特に「自分、余裕あるんで」感のある雰囲気が嫌だわぁと、客に言ったら親しい人でもアウトなくらいの言葉がズバズバ飛んでくる。いや事実だから否定もしないけれども。


「んで? まだ何かあるんでしょ?」


 惚気なら殺すといった雰囲気の千夏に軽く引きかけたがそれはさておき、俺も俺で真剣ではあるので、気を引き締める。


「実は、ホワイトデーに何をお返しすればいいのかわからないんだ」

「帰れ惚気野郎」


 有無を言わせぬ雰囲気に締め出された俺は、とりあえず買ったミネラルウォーターを一口飲んで、スマホで『ホワイトデー お返し』と検索をかけながら帰路についた。


■■■■


 色々と検索をしてみてわかったことだが、どうやらホワイトデーのお返しの贈り物には、色々な意味があるらしい。

 例えばチョコレートを返せば『現状維持』や『想いを返す』。キャンディーであれば『大好き』など、調べてみると色々あって面白い。

 またアクセサリー類だと、財布を贈れば『いつもそばにいたい』という意味をもったり、マグカップだと『もっと仲良くなりたい』という意味になるらしい。

 贈り物と一言に言うが、中々に奥深く、面白い。

 こうしてみると、どれにしようかとても迷う。無難に桃音の誕生花をプレゼントなんて考えたのだが……花言葉が不吉だったり、色が白だったりと、色々考えた結果止めた。

 本当にどうしようか……そう迷うこともほどほどに、俺は一つ大きく伸びをして、いつものように仕事を始めた。

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