後後250 暇な一日など


東武領の領主邸に戻っていた泉とガク。

今日もアニャータは忙しいらしく・・・。


「泉さんはアニャータと一緒じゃなくていいんですか?」

「あー、今日はいいんだとよ。いろいろ説明されたが面倒くさいんで聞き流した」

確かに中身はおっさんだよなーそんなところは。


領都には農国から来てくれたレストランが何軒かある。また数軒の商会も出てきているようだ。勿論武国の商会も農国に出ている。

どうせなら、共同出資で両方から人員入れて商会作ってしまえばいいのに、と思うだろう。が、それでは自社の経験が付かない。楽しようとすると、リスクは必ずあり、そしてそのリスクは最初はわかりにくいが、あとあとになると取り返しが効かないモノが大半だ。

農国のにも、武国の商会にも、そういうアホウなオーナーはいない。


逆に、お互いに使用人を送り込む、ということはあることもある。が、それもリスクを負うので、よほどの環境が整っていなければやらない。


ガクは商会に寄ってカレーのスパイスを買って行こうかな?と思ったが、やめた。

まず、自分では作らないだろう。そうすると、シューレの食堂に持っていくことになる。シューレがじきじきにやってくれればいいが、もし弟子たちに良いように使われたら台無しに成る可能性は高い。期待してがっかりになるくらいなら、ここの本場の店で食べるほうがいいや!と思い直したのだ。


旅先の食べ歩きは楽しかったが、もう見知った地元の街でのそれは、さほど楽しくも思えるものでもない。


街をぶらぶら歩きながら、どうしようかなぁ?と思っていた。

「もう、この街も飽きたな」

と、露骨に言う泉さん。

「直球ですな」

「取り繕ってもなぁ?」

そーだけど


長期旅の弊害だな、とガクはわかった。

だって他の者がそんなことを思う事なんてないもん!!


ちなみに、海外に住み始めると、まずそういうこと(飽きた、とか)は思わない。慣れた街でも住んでいる者達はそこの国の者達。だから自分が外人であり、いくら住んでも言葉がわかっても、文化が違うのでいくらでも知らないこと、新しいことが出てくるし見つかる。

なので、意識しなくとも外出するときはそれなりの緊張をしているものだ。面白さが消えることはない。



うー、王都だったら農国への門があるのになぁ、、と思うガク。

すくなくとも、あっちにいけば何かしらおもしろいことはある。


自分の物差しの基準が、面白いこと、になっていることにガクは気づいていない。


「まぁ、そう焦るな。酒でも飲もうぜ?」

と、目に付いた蕎麦屋に入っていく泉さん。

そうだね、そんなんでいいか。と、ガクも思った。


壁のメニューを目にした泉

「お?ガクの好きなみりん干し、あるぞ?」

「へぇ!珍しい!おかみさーん、俺みりん干しの大盛りと燗酒で!」

「へぇおまえが率先して酒飲むのは珍しいな?」

ああ、そうかも?


「でも、みりん干しはごはんより酒、燗酒のほうがあうでしょう?」

「まぁそうだな、んじゃおかみ!おれも燗酒とみりんぼしくれ」

「あいよー!」


これは商会のおかげかも知れない!

向こうのみりんぼしがうまいんで、こっちで真似してうまくできたんで広まってるのか、もしくは向こうのものか。

今までもこっちにもみりんぼしはあったが、さほどうまいものでもなかった。兵隊の保存食かな?程度であったのだ。




ガクがみりん干しで浮かれているその頃。

小館村。


「そこはそれ、私はアニャータの叔母なのだから側にいるほうがいいだろう?もし子ができてみろ、育児の助けになるだろうが。小さい邸でいいのだ、どうか頼む!」

「うーん・・・でもなぁ、勝手にそんなことしたら・・・」村長。


農国の女公爵のグレースだ。アニャータの叔母であり、泉さんの本体の叔母さんでもある。

今回ガクと泉がいないのを良いことに、村の中に自分の邸を作ってよいかと村長に願い出ているのだ。


村長は村長で、村に外の者、それも位が高い者などいれたらガク達になにされることか。最悪主要メンバー連れて村を出られてしまうかも知れない。外国に行ってしまうとかもありえる。奴等なら喜んで受け入れるところは多いだろう。

なので、村長は「うん」とは言えないのだ。


(まずったなぁ、会ったのがまずかったなぁ、居留守でも使っておけばよかったー)村長。

後悔先にたたずである。


公爵も

(今回を逃したらもうチャンスはない。作ってしまえばこっちのもんだ!)

と思っている。甘いけどね!


「村長?どうしたのだ?」

と現れてくれたのはシューレ。神出鬼没!!ちょっと違う?

「何か不穏な空気を感じてな。問題か?」


「おお!どうかおたすけおおおおお!!」と、シューレの足にすがりつく村長。ちいさいからね、丁度いい感じに?

で、

これこれこうで困っているのです、と説明する村長。

でも!私は叔母として!と譲らない公爵。


「ではこうしよう、まず私が許可を出してよいか?村長。」シューレ

「はぁ、大聖霊様が許可出すのであれば反対できるものなど・・・」

いるけどな、泉とガクは普通に反対するだろうよ。と思うが口には出さないシューレ。


「で、だ。ガクと泉が帰ってきて、ダメ、と言ったら、その邸は私が消す。もし奴等が許しても、もしおぬしがあやつらが悲しむようなことをしたら、おぬしの国ごと消す。これでどうだ?」

完全に脅しだよねー


「むう、だがしかし!私がアニャータも泉もガクも悲しまないよういにしていればいいだけのこと!よし!乗ったっつ!!」

肚を決めたグレース。


「ほう、なかなかだな?もし私が些細なことでダメ出ししたら、おぬしの国は消えるぞ?いいのか?」

「・・いや、大精霊様はそんなことしないだろう、それ以前に、そんなことを許す3人だとは思えん。」


「へぇ、奴等のことをそれなりに判ってるのか。ま、よかろう。村長、ほどほどの距離を保った場所にしとけよ?なんたって奴等新婚だからな?早々邪魔されてもな」

「へぇ、わかりました」


で、結局村長屋敷のとなりに広がる村長んちで使っている林を伐採して作ることにした。

村長のとこの女性陣が一応お目付け役ということで目を光らせるようだ。


暇な公爵様、と影で呼ばれるようになるルイーズ。

自分の領地を放置して、外国の小さな村に移住みたいなことしてるんだからな。




領主様の離宮

将軍様の離宮

迎賓館

日のいずる国国王の離宮

農国王離宮

そして

農国公爵の邸


なぜここまで増えた?



ガク、ブチ切れるんじゃないか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る