第243話 後後118 ヤマト発進!


翌朝、宿の一階の食堂

うまそうな朝食らしい匂い、、、におい?


「お、味噌汁だな!」泉さん

武国以外では珍しい

昨日の風呂屋のヤマトさん(仮名)と関係あるんだろうなぁ、、、

洋風文化圏なのに、風呂屋がアレで、この和風のかけらもない宿に味噌汁、、


席についてほどなく食事の盆が来た。

和食、朝定食だな、、、もろ。

「泉さん、昨日の女湯、どうでした?」

「おう!もろ日本の銭湯だったな、壁に富士八景の一つが書かれていたぞ」

ごはんをほうばりながら答える泉さん、米粒飛んでるよ、、


「日本人、居るんじゃないスカね?」

「あー、風呂屋もそう古くなさそうだったしな、、まだ生きているかもなー」

「そっかー、、俺の時代と近い人みたいだったけど、こっちにいつ来たかはわかりませんもんね」

「そうだな」もぐもぐ


大田さんは懐かしそうに食っていたけど、ハンバーグとかカレーとかのがいいかな、、とかつぶやいていた。あの世代の人たちって、、、


若者たちは珍しそうに食べていたが、苦手そうには見えなかった。さすが食の国(農国)の子達!!


シューレに言って、今日は俺らは日本人いるかもしれないんで探したいから、と別行動にしてもらった。

大田さんは興味ないらしく、、シューレと美味しい方向に行くという。若手も当然美味しい方向。


食後には番茶が出てきた。すげーな、、、


「でも、和菓子屋とか見なかったっすよねー」

「あー、作れなかったのか、好きではないのか、、」

「もし好きなら、武国に連れてってやると喜ぶんじゃないスカね?」

「ああ、この分なら、そうだろうな」


多分、たった一人で日本の食事やら風呂やら広めてきたんだろう、、苦労したんじゃないかなぁ、、

自分がツキに恵まれていた分、そして福田さんや特に大田さんが酷い経験をしてきたことをきいていたので、

そのヤマトさん(仮名)の苦労が少しは判る感じがして、気の毒に思った。もしもう老人になっていたなら尚更だ。


早々に宿を出て、早速風呂に向かう2人。

風呂がヤマトさん(仮名)に関係あったことは確かだろうから。


風呂屋は朝から開いていた。客も入っている。ま、文化違うからね?

で、番台の人に訊くと、裏に回れ、人が居るから、と言う。

裏に回ると、窯が在り、人が火の調節をしていた。


「こんにちは、お仕事中すみません、少し聞きたいことあって、、」

「あ?日本人かおまえ?」

あ、この人か、、

最近何?この回収スピード、、、なんかあったのか?どっかから回収は速攻で、とか指示あったの?


「えっとー、そうですけど、、なぜわかったんですか?」

「ああ、なんだろう、、仕草?」

まぁ、たしかに俺もこの人だとすぐわかったし、、、


その人は白髪こそ見えるが、まだ老人とは言えない年齢だった。

が、鍛え上げられたわけではない体は、毎日使ってきて出来上がった引き締まった、細いが頑強そうなそれで、今まで楽してきたのではないことはうかがい知れた。


「まぁ、俺もここではじめて日本人に出会った。いろいろ話もしたい。少し待ってくれ、、」

と、側にある一般家屋のほうに行った。

ほどなく若い子を連れてきて火の番をさせた。


「んじゃ、奥に行くか。」

俺達は家の奥に案内された。


「俺はこっちでは大和と名乗っている。本名は、忘れた。」

と始めた大和。

話しながら後ろにある棚から一升瓶とぐい呑3つを取り出し、注ぎ、俺らに手渡す。


1980年台半ばにこちらに送られた。ガクに質問されたが、自分が死んだ記憶はないと。

送られた時期は大学生だった。

(大田さん達に近いかな?)ガク

こっちでは、特に何もされなかったが、でも助けてももらえる状況でもなかった。

貧困がひどかった。

戦後だったという。


そんな中でも、自分も酷いのに俺に食い物を分けてくれた家族が居た。

そこの旦那さんと一緒に森に行き、魔獣を狩るようになった。

その家族の旦那は元狩猟者で、猛獣なら一人で狩れるが、魔獣は一人では無理なので手助けがなかったから無理だったと。

俺もそんなことしたこと無いが、恩もあったし、何より無我夢中だったんだと思う。

怪我もしたし、数日動けないこともあった。が、どうにか一家と俺が食っていくだけのものが確保できていた。

10年ほど。街も落ち着き、狩りも慣れれば楽になり、俺にも時間ができるにつれ、なんかやりたくなった。


旦那さんに相談し、この村には無かった銭湯を始めようと。

幸い、ここは水は豊富で井戸を掘ればすぐ水が出る。

金属を加工する者もいたし、その頃にはもう俺も村の一員になっていた。

村の人びとの協力であの銭湯はできたんだ。

嬉しかったもんでな、、数カ月掛けてあの壁の絵を描いた。


番台に寄ったか?ああ、そうだあの爺さんが、その旦那さん。その娘は俺の嫁で、、、

「おーい、、クリスチナ!」

「はーい」たたたたた、、と足音、障子が開き、薄い金髪の女性が顔を見せる

「あら!お客さんだったの、、いやだ、失礼しました、、」

「いや、いんだ、同郷の者だ。酒飲んでるんで、なんか肴になるもの、あるかな?」

「見繕ってきますね」と、戻っていった。


「あれが俺の嫁だ。娘と息子が居る。」

「そうでしたか、、あ、この泉さん、見た目は西洋人の子供に見えますが、、中身は江戸末期の武士です」

「・・・ほう、、、それは、、、気の毒に、、、大変だったろう、、」

「いや、お主ほどではないわ。見つけられたのが海に浮かんでいるときでな、死ぬかも思ったが、それ以降は、幸い、ラクばかりさせてもらっている」

「僕も同じで、

(ぷw僕だって、、)泉さん

ポコン!

「まったく、、、あ、俺も幸運で、道を逆に行っていたら野垂れ死にコースだったけど、幸いぎりぎりいい人に拾ってもらって、あとは結構楽、というか、かなり幸せにさせてもらってます。、、ただ、他に3人ほど日本人がいるんですが、、そのうち2人はえらい目にあい、一人は奴隷落ち。最初に居たその仲間の2人は多分殺害されています」


「それに比べてみりゃ、俺も幸運だったなぁ、、、、」大和


「あ、あとも一人いたろ、ほれ先日」泉さん

「ああ、ここから西に行った海に面した国ありますよね、あそこを支配していたのが日本人とアメリカ人?白人で、、」

「ああ、あれか、、イカレポンチだったろ」

「征伐したけどな」泉さん

「それは、、助かった。かなり逝かれた国だったんでな」


「マクベス、って知ってます?」

「おう、味噌とか醤油とか調達してくれた。」

「あれ、精霊なの知ってますか?」

「あー、やけにすごい魔法ばかり使うなと思ってたが、そうなのか」

「少し抜けた精霊だけど、彼がこの大陸、主に食事関係を牛耳ってるというか、導くというか、、の、精霊みたいなんですよ」

ふうん、、


「うちの大陸はもっと良い精霊で、主に洋食が凄く発展してて、元の世界より美味しいものが多いくらいです」

「・・・・・・・・・・・・・それは、、、、うらやましいな、、」

「うちの国は昔の日本みたいな感じで」

「おう、俺のいた時代の少し前くらいな感じだな、だから日本のメシは美味いぞ。」

「そうか、、、」

あ、やっぱこの人も大田さんと同じでハンバーグとかカレーとかオムライスなのかな?反応が洋食の方が良いよw


「ハンバーグとかカレーとかタイ料理みたいのとか、ロシア料理みたいのとか、ケーキとか、すごいっすよ?」

「それは、、是非行ってみたいな!!」

やっぱそーか、、、


「でもご家族が、、」

「いんじゃないか?多分行きたいと言うぞ?」

まじっすか、、ノリが、、、

「おじいさんも?」

「ああ、あの人も、俺の世界に行きたがってたくらいだからな、、帰る時は連れてけって煩かったよ昔は」

・・・・・


その後、シューレ達を呼んで、大和さんと話しさせて、

農国がいい、となった。

うん、大和さんの食の傾向はもろ農国だよな。

家族も雪は大丈夫だろう、むしろ見てみたい、生活してみたい、とかの反応だった。


場所は、、オーウトみたいな居心地いい街がいんじゃね?とガクが言い、若手が一人、話しつけてみると、シューレに転移させてもらって帰っていった。

2日ほど街をぶらつきケーキ三昧していたら、その若手からシューレに連絡入り、シューレは家財道具一式と大和一家を連れて向こうに転移した。

銭湯は、街の者が継ぐ話を付けたから、と大和さんが言っていたので、こんままでいいのだろう。



大田さん一行と泉さんと一緒に酒蔵に行き、メシ食いながら酒を飲み、シューレの帰りを待つ。1−2日もあれば帰ってくるだろう。


「今回は気分よかったな」泉さん

「ええ、同郷の者でしたからね」

「ああ。」

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