ああ、もう四日
さて、GWも間もなく終わりそうである。そんな五月晴れの今日はデートだ。相手である京極君が何と呼称しているかは知らないけど、わたしは勝手にデートだと思っている。
「おはよー」
「おうはよう、浅井さん」
いつも通り礼儀正しく、背筋が伸びている。京極君のそういうとこ良いと思う。二人でああだこうだ言いながら図書館に行く。そこで互いのおすすめの本を借りて近くの公園でパラパラ読む。いたく健全なおデートだ。
「この本おもしろい」
「そう? なら良かった。こっちもおもしろい」
「ねえねえ」
「うん?」
「……やっぱいいや」
京極君は不思議そうな顔をしている。京極君がうつむいて本を読む横顔がセクシーだったからキスしてみたくなったけど、実際口に出すのは恥ずかしいなと、言おうとして気付いて止めた。そもそも真昼間の公園で、家族連れがにぎやかに過ごす公園で高校生カップルがキスしているのは健全なおデートではない。たぶん。
そもそもわたしが彼を好きかどうかはわからない。彼がわたしを好きなのは知ってる。そのことを彼は知らないけど。わたしじゃなくて、双子の藍に相談したと思ってるし。
「浅井さんは」
「うん?」
「俺のことどう思う?」
「おおお???」
いきなりぶっこんで来たな? どうってなあ。
「横顔がセクシーだと思うよ」
「えー…。いや、そうではなく」
「好きか嫌いかで言えば好きだよ。そうじゃなきゃ休み中にデートなんてしないもの。本の趣味と服の趣味が良いのもいいよね。大事」
「そうなのか」
京極君はぽかんとしている。
「そういうわけで伊澄君と呼んでもいい?」
「え、うん。いい、けど」
「わたしのことも好きに呼んでいいよ」
「じゃ、じゃあ紺乃さん……」
「紺でいいよ。そっちの方が言いやすくない? みんなそう呼ぶし」
彼は少し考えてから口を開いた。
「紺乃って呼ぶ。みんなと同じ呼び方したくない」
「えー…。伊澄君、そういうタイプなんだ。めっちゃ好き」
「えー…」
淡々としててクール系かと思いきや独占欲をチラ見せしてくるのめっちゃ良いと思う。かわいい。
「あと、服のセンスがいいのは俺じゃない。妹だ」
「そうなの?」
「紺乃と出かけるときは毎回妹の花音が選んでるよ。兄ちゃんのセンスで外出させられないって」
「逆に気になるわあ」
ふと伊澄君が真顔になった。
「キスしたいんだけど」
「いいけど場所を変えよう。ここは健全すぎるから」
そうしてわたしたちは場所を変える。続きは不純異性交遊といこうじゃないか。不純かなあ。違うよなあ。この場合は不健全おデート、かな?
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