サクラサク、その知らせを待ちわびてる

 まだかな、まだかな。そわそわしながらスマホと睨めっこしてる。

 待っている用件は2つ。1つは自分の受験結果の発表。もう一つは同じ大学を受験している幼馴染の結果。自分のものについては時間になったらサイトを確認するだけなので、そわそわしても仕方がない。幼馴染についても向こうの方が成績は良いのだから気にしても仕方がない。どちらかと言えばわたしが落ちる可能性の方が高いのだし。

 ああでも。こんなことなら一緒に居ればよかった。幼馴染の部屋に行って一緒にそわそわしていたかった。でも断られてしまったのだ。

 「片方落ちてたら気まずい」

 そうなんですけど! そうなんですけど!!!!! でもさー一人でいると心細いじゃない。親は仕事でいないし、いてもたぶん気を遣ってくれて声をかけてきたりはしないだろうし。あ~~~~~一緒にいたかったなあ!!!!

 なんて、何か違う方向にうだうだ考え始めた時。ぴんぽ~んと抜けた感じの音が響いた。インターホンに出るとまさかの幼馴染で、驚いて変な声を出しつつも急いでドアを開ける。

 「いーちゃん、どうしたの?」

 「どうもこうも。結果が出たから様子を見に来たんだろうが」

 え? 慌てて時計を見たら確かに結果発表の時間は過ぎている。

 「うえ"!!!???」

 「な、ま、お前気付いてなかったのか!?」

 いーちゃんがぎょっとしたような声を上げた。

 「はい、気付いておりませんでした……」

 「えー、馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど、えー……」

 「ちょ、待って。確認する」

 「しなくていい。二人とも合格してる」

 呆れたような声と、それでも嬉しい結果に目の前が明るくなる。

 「ほんとに!? やたー!! じゃあ春からもいーちゃんと一緒に通学できるんだね!? わ~~~~うーれしーいなーーーー!!」

 そう呑気にはしゃいでいると、いーちゃんがなんとも言えないような顔で黙り込んだ。

 「いーちゃん?」

 そしてゆっくり口を開く。

 「なんで、そんなに喜ぶんだ?」

 「なんでって? 大好きないーちゃんと少なくともあと4年は一緒に居られるからだよ」

 「それはどういう意味だ?」

 「どうって?」

 「なあ、けいちゃん。俺はそろそろただの幼馴染でいるのはやめたいと思う」

 「うん? じゃあどうする? 付き合う?」

 「ああ、けいちゃんが嫌じゃなければ……って!!!! はあ!?」

 いーちゃんが目を丸くした。なにか間違っただろうか。

 「あれ? 違った? 結婚は早いかと思ったんだけど」

 「はえーよ!!! そうじゃない! えー…俺から言おうと思ったのに……」

 幼馴染はがっくりとうなだれてしまった。そっかー、いーちゃんはそういうこと気にするタイプだったかー。しかしわたしはまだ肝心なことを言われていない。

 「でもさ、付き合うにしてもわたしはいーちゃんがわたしをどう思ってるか聞いてないけど」

 「お前……この流れでお前~~~~。コノヤロー!!!! 水木佳香さん。好きです。付き合ってください」

 そんなぶっきらぼうな……。まあ、それがいーちゃんなんですけど。

 「はい。よろしくお願いします」

 なんにせよ、わたしたちの桜は咲いたらしい。いろいろと。

 「ところでいーちゃんはいつから家の前にいたの?」

 「10分くらい前」

 「言ってくれたら入れたのに。寒かったでしょ」

 「待ってるのがけいちゃんのことだったから寒くなんかなかった」

 「そういうとこ好きだよ」

 「うるせっ」

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