033 ドッキリテレビ
街を歩いていたら強面の男にいきなり襟首を掴まれた。
「おいっ、てめぇ! 俺にぶつかっただろう!」
「えっ、えっ……ぶつかってませんよ」
「いや、絶対ぶつかった! あー、肘が痛ぇわ」
「いや……ほんと……ぶつかってい――」
「どうしたんだ? 兄貴」
声がしたほうへ振り替えると、これまたガタイのいい男が立っていた。
「おお。実はよこの兄ちゃんがよぉ、体のよわーい俺にぶつかってきてよぉ、肘を痛めたんだわ」
「はぁ!? 兄貴にケガ負わせたのか!? てめぇどうなるか分かってんだろうなぁ!?」兄貴と呼ばれる男の話を聞き、途端に男が絡んでくる。
「ほんと、ほんとぶつかっていませんよ……」
通行人に助けを乞おうと周りを見るが皆我関せずと通り過ぎていく。
絶体絶命だ……そう思ったとき――
「すいませーん。どっきりでしたぁ!」
振り向くと『どっきり』と書かれた看板を持つ女性が立っていた。その後ろにはカメラらしきものを担ぐ男も立っている。
「驚かせてごめんねぇ。これ、テレビなのよぉ」
笑顔で話しかけてくる女性の顔を見て全身の力が抜けていく。こんなに恐ろしい思いをしたのは借金取りから逃げた時以来だ。安堵と共に目に涙が潤んでくる。
「通行人がいきなりヤクザに絡まれたらどうなるか!? っていう内容でコーナー組んでみたのよぉ。いやぁお兄さん、ほんとにビビっちゃいましたねぇ。きゃははー」
リポーターの女がいきなりケラケラ笑い始めた。
「ほんと笑い事じゃないですよ……死ぬかと思いました」
「ははは、ごめんねぇ。じゃあさ、Aさん。どっきりの感想聞きたいから車乗ってもらっていーい?」指で指した方向には白いミニバンが停まっていた。
「じゃあ宜しくねぇ!」
俺はリポーターに促されながらヤクザ風の男二人と共に車に乗り、事態を知った。
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