眼つきの悪い聖女は妹に婚約者の王太子をとられ、婚約破棄追放されるも、望み通りでした。

克全

第1話追放上等

「オブライエン公爵家令嬢ローザ、聖女の名を騙った事、許し難し。

 その罪万死に値するも、オブライエン公爵家の長年の忠勤に免じて罪一等を減じ、国外追放の刑とする、不服ないな!」


 全ての貴族に恐れられている断罪の間で、私はいわれのない罪に問われている。

 まあ、こうなる事は分かっていたし、望むところではあるのだが、一方的にやられるのは趣味ではないので、それ相応の反論だけはしておこう。

 追放してくれるのなら、これほどありがたい事はないので、無罪になるとか減刑されたりしないように、手加減はしてあげましょう。


「不服はございますは、王太子殿下。

 私は一度も自分から聖女を名乗った事はございませんの。

 その私に聖女を騙ったと言いがかりをつけて、聖女だと認定した大神官や国王陛下の罪を問わないのは、どういったわけでございますか?」


「えええええい、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ!

 それは、そう、それは、お前が聖女ではないと否定しなかったからだ。

 大神官や国王陛下の聖女なのかという問いを否定せず、聖女を騙ったからだ!」


「相変わらず頭が悪いのですね、王太子殿下。

 それとも、わざとはぐらかしておられるのです?

 私がお聞きしているのは、聖女だと言い出したのが、大神官と国王陛下だという事ですよ、それがお分かりになりませんか、それともわからないふりですか?

 私を罠に嵌めるために、聖女ではないのに聖女に認定されたのですか?」


 断罪の間にいる多くの貴族達が、一斉にざわめきだした。

 この断罪追放劇を、毎度ある宮廷闘争の一つに過ぎないと考えていた貴族どもが、一つ言葉を間違えたら、国王や大神官まで断罪することになる思い至ったようだ。


「おのれ、おのれ、おのれ、もはや許さん。

 国王陛下や大神官を陥れようとしている事、今の言葉で明白だ。

 オブライエン公爵家の長年の忠勤も、もうお前を守る事はない。

 この場で斬り殺してくれる、そこに直れ!」


「この場で罪を悔い慈悲を願うのは貴男ではありませんか、王太子殿下。

 私を聖女を騙った罪で追放した後で、偽聖女を認定した罪で国王配下と大神官を弑逆して、王位を簒奪する企みではないのですか!

 その為にオブライエン公爵家のアラベラ嬢と婚前交渉を重ね、王宮での権力と兵力を準備したのではないのですか!」


「あ、わわわわ」


 馬鹿な奴ですね、この程度の幼稚な企みなど、少し考えれば分かる事です。

 腐りきったこの国では、真に能力のある者が国の中枢に入ることができないので、この程度の陰謀もやりたい放題ですね。

 まあ、好きに殺し合えばいいです、私の知ったことではありません。


「では、私はこれで失礼させていただきますね。

 こんな腐りきった滅ぶしかない国に用はありません。

 ああ、私に手をだしたら神罰が下りますよ。

 腐れ王太子が何を言おうと、私が聖女なのは間違いないですから、何かしようとすれば、守護神様がその者に罰をお与えになりますからね」


 口から出まかせですが、効果はあるでしょう。

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