第193話 波乱の風
晴天と呼ばれる天気の下で交流会の門は開かれた。
いつもと違うのは校庭の真ん中には人が集まっていないと言うことだ。
なぜならそこは白線が引かれ、大きな陣が描かれている。長方形の陣の両端に一体ずつカカシの様な物が立っている。
陣の外には人が座るスペースと書類を持った大人がいる。
あのスペースが多分言っていた模擬戦の場所なのだろう。
周りを歩く生徒達の注目の的になっている。
「あれが言われていた模擬戦の場所なのでしょうか?」
「多分そうじゃないかしら。アンなら知らないかしら」
アリスも同じ事を考えていたらしい。答えはしたけど確証がないのでアンに振った。
「そうですわ」
アンが言うなら間違い無いだろう。
「あの陣の中で一対一で相対して、先に相手の後ろ側にある人型に一撃入れた方が勝ちの試合です」
「流石ね、困ったことがある度にアンに聞くことにするわ」
「ありがとうございます。付け加えるなら、基本的には一年が出る事が多いらしいですわ。ちなみに去年の一位はアル様との情報もございます」
その情報は初めて聞いた。ゲームの中ではこんなイベントはなかったからだ。
たまたま自分の知っているゲームと似た世界なのか、はたまた私が見ている夢なのかもしれないけど、近い世界だけど、細かい点は違うのかもしれない。
それでも、アルが去年の優勝という事を聞くとなんだか鼻が高くなる。
「相変わらず目立つから見つけやすくて助かるよお嬢」
人波を掻き分けてこっちに来たのはヤンとユリだった。
「そこでヤン先輩と会いまして、一緒に探していたんですよ」
先輩後輩と言う立ち位置ではあるが、仲は良さそうだ。同じ同僚としては是非、このまま仲良くやっていてほしい。
「そうだったの。ありがとう」
とりあえず私の騎士達は揃った。
いつもの集まりと言えばシャバーニがいない。
アリスもそれを悟ったのか一人でシャバーニを探しに行った。
「フランソワ様、お伝えしたいことがあります」
そんな事を切り出したのはユリだ。
その口調につい身構えてしまう。
「まさか貴方もアルみたいにどっか離れちゃうとか?」
「いえいえ、違いますよ」
「そうだったの。良かったわ」
ほっと胸を撫で下ろす。
ここで彼女まで居なくなってしまうと寂しくなり過ぎてしまう。
「えーと。それでどんな事?」
「私、今日の模擬戦に出場致しますので是非見ていてください」
「えっ! そうなの!? 絶対見るわ!」
私の返答が嬉しかったのかユリの表情が綻んだ。
「近衛騎士を任命して頂いておりますが、だからこそ、フランソワ様のために力を尽くして勝ちたいと思います」
「無理はしないようにね。貴方の実力はちゃんと知ってるから」
ユリの実力はしっかりとこの目で見ている。
怪しげな教団の男にだって勝ったんだから並の生徒以上の実力はあることは実証済み。
それでもユリは今日の模擬戦に出て私に、いや、周りの人達にアピールしてくれるらしい。
「今日はアルと入れ替えで他校から来てる生徒も出るらしいからな。見ものだろうな」
「そうなの? 入れ替えって事はその人達は二年生なの?」
「あぁ、だけど交流戦って事ででるらしい。それが分かってたら俺も出て見たかったんだけどよ」
ヤンが悔しそうにする。
「今からは出れないの?」
「事前申請してからなんだよ。それ以外は受け付けてもらえねぇ」
「そうなんだ。去年アルが優勝したって聞いたんだけどヤンはどこまで行ったの?」
「俺は出てねーよ」
「そうなんだ。残念」
なんだか少し気落ちしたけど、なんだかヤンらしい。
ユリが出るなら一層楽しみになってきた。今日の交流会はいつもより楽しくなりそうだ。
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