第180話 勢力シーソー
「まぁ当然よね。みんなが私をそれだけ評価してくれているなら、付いた方に今後有利に、付かなかった方はそれだけ不利になるものね」
「ただ、御二方はフランソワ様が自陣に付くと考えてはいないとも思います。さっき言ったように総長側にならない様にだけ努めていたと思います。ただ、逆に総長側ではフランソワ様を何とかして派閥に入れたかったのだと思います」
当然の事のように聞こえる。ただ、アンの考えは言葉通りではないように聞こえた。
「御二方の方ではフランソワ様を無所属で留めて置く事が本当の狙いなのだと思います」
「その狙いは?」
「無所属である事で次の選挙の行方が分からなくなるためです。総長側へ付いた場合はその時点で勝負がついてしまうんです」
「なんだかその意図が私には読めないわね」
「あくまで私の推測なので……」
私の中ではそれが本当の意図だったかを推理するための材料が足りない。だから、その考えをすぐに飲み込めなかった。
「今の総長は去年の選挙で大勝した結果です。上級生が抜けて去年投票した人が減っても、残った下級生だけでも投票率は高いのだと思います。ただ、そこにフランソワ様が現れた」
「私?」
「そうです、こんなにも早く家柄だけではない注目の的になる人物となりました。そうなると総長としては不安要素が出て来ます。フランソワ様がもし、総長側以外の派閥に入った場合、次の候補への勝負に揺らぎが出る可能性があったのではないでしょうか」
だから総長は私に声をかけた。早く囲んでおく事で不安要素を消すための策だったと言うのがアンの見方らしい。
「なるほどね。そしたら昨日の二人はどうして私を無所属にしておきたかったの?」
「今の状態を維持するためです。勝つために」
勝つために相手の不安要素を残して置く。
分からないでもない、だけど、それなら勝つために自分達の方へと引き込まないだろうか。
「アンがさっき言っていた様に私が二人のどちらにも付かない前提よね」
「はい。ただ、付けばそれはそれで良しと言った所です」
私を派閥に誘わなかった理由。ここまで言われたら少し分かってきた気がしてくる。
「私を誘えば反発すると思ったから?」
「そうです。取り合いになれば今の時点で勢力が大きい方に付くと考えたのだと思います。だから、敢えて誘わずに、もし、フランソワ様が総長側へ揺れているのなら何かしらの言葉でそれを中立にするように仕向けたかったのだと思います」
「確かに、自然と大きい方についちゃいそう。だけど、私はまだ決めかねていたから特に何も言われなかったって事ね」
どっちに付くかと言われたら私はメジャーな方に付いていると思う。
もちろん人柄とかもあるだろうけど、総長と話していた感じとしては人柄も悪い感じはしなかった。
「でもそうなると真っ当に誘って来てる総長側の方がどっちにしても有利なままよね」
「その通りです。ただ、そこは考えがあったのだと思います。フランソワ様のように物事を深く考える人物だからこその思惑が……」
かなりの買い被りだけど、だからこそ私の主観では考えられない事がある。
アンの言葉に静かに頷いて私は耳を傾ける。
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