第152話 週末に備えて
「ごめん。今帰ってきたわ!」
私とユリがみんなの元に戻るとさっきまでは居なかった人も増えている。シャバーニだ。今日もがっちりしたシャバーニ、その姿は前回よりも輝いて見える。
みんな楽しく談笑していたか、私の離れた所よりも校舎側の長椅子があるスペースに移っていた。それでもすぐに分かったのは、周りにこんな大所帯そうはいないからだ。
「おかえりなさいフランソワ様」
「どうですか? 会えましたか?」
「帰りが早いから振られたなお嬢」
「またそんな事言って、怒られるよ」
みんなが各々の言葉で私を出迎えてくれる。
「残念、振られてないわよ。無事に会えて今週末に街に行く事になったわ。そこで更に勧誘するのよ!」
「まぁ! 情熱的ですわねフランソワ様」
「ありがとうアン。私、頑張るわ!」
まだ先のことなのに手に力が入る。どう言った話をしようか。彼をどうやって説得しようか。私の頭の中にある彼のデータから効果的な誘い文句を今から頭の中に浮かべている。
「そしたら俺らも初仕事だな」
「えぇ、そうですね」
「えっ?」
ヤンとユリの言葉に反応したのは私だった。
「どゆこと?」
「そりゃ俺たちは近衛騎士だ。主人を守るのが仕事だぜ。街に行くなら護衛は必要だろう」
「えぇ、ヤン先輩の言う通りです」
「でもそんな要らないわよ。ただ街に行くだけだし」
「その街でトラブルに巻き込まれた人がいるらしいぜ」
「うっ……。確かにその通りだけど」
そこには何も言い返せなかった。紛れもない事実だからだ。
「確かに2人の言う通り近衛騎士の初仕事としては良いんじゃないでしょうか。僕は少し用事があってお供できないませんが」
「そうなのか? 休みの日に?」
「ヤン、君には言っただろう」
「あぁ、そう言えば言ってたな」
「フランソワ様にはまた詳しくお伝えしますが、少し学校絡みでありまして。申し訳ございませんが、ヤンとユリさんの2名の護衛となります」
アルは品行方正で優等生だし、学校絡みで色々あるのは知ってる。確か生徒総長になってた話もあったっけな。
と言う思い出を引っ張り出している中でいつの間にか私に護衛がつく前提になっている事に気づく。
「待って、待って。護衛なんていいわよ。休みの日なんだからちゃんと休んでよ。それに護衛なんて居たらオーランがびっくりしちゃうわよ」
なんか少し前にこんなやり取りをした様な気はする。相手はホリナだったけど。
「ダメですよフランソワ様。仮に私達がついて行かなくても、誰かついて行かなければならないでしょう」
「そうだ。俺たちが行かなくても、お付きの人が来るんだろ、それなら俺たちの方がいいだろ」
確かにホリナに言えばついてくるだろう。それこそ前回の街での話もある。
「そしたらこんなのはどうでしょうか。ヤンとユリさんは2人で遠くからの護衛という事で。それなら相手も驚きはしないでしょう」
アルは譲歩案を出してくれた。確かにそれなら問題はないと言えばない。ただ、気がかり事がある。
「いいの? せっかくの休みなのに」
ヤンのため息が漏れた。何やら私をみる目が冷たい様な気がする。
「フランソワ様、私とヤン先輩は貴方のなんですか?」
「えっ……。近衛騎士よ」
「それが答えですよ」
「お嬢は気を使いすぎなんだよ。嫌なら最初から言わねーよ。用事があるならアルみたいに言うさ」
そうか。2人とも自分の意思で来てくれる。これが近衛騎士なのかと改めて考える。不思議とどこか嬉しさが込み上げてくる。
「ありがとう、2人とも。そしたらそこまで言ってくれるならお願いしようかな」
こうして私の近衛騎士の初任務が決定した。
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