第25話 異変 前編
「それじゃあアリスまた休み明けの学院で会いましょう」
「はい。お土産を買ってきますね」
そんな他愛ない言葉を交わしてアリスは大型の馬車へと乗り込んでいった。アリスは今から乗合の馬車に乗って実家へと帰っていく。別れてしまうとさっきまでのおしゃべりの反動でいつも以上に寂しくなった。
さっきまで晴れていたのに少し曇ってきたような気がする。まるで私の心を写しているかのよう。
辺りを見渡してホリナを探した。うまく隠れていたようでアリスといる時にはどこから私を見ているか全くわからなかった。
「いたいた」
私がさっきまで背中を向けていた方にホリナはいた。買い物をする市民のように人の中に混ざりこんでいたらしい。
「楽しそうで良かったです」
「えぇありがとう。ホリナのおかげで心配なく羽を伸ばせたわ。そっちは何もなかった?」
「そうですね。特にはなかったですが、人がかなり多かったのでお嬢様を見守るのと同時に、スリの警戒も必要でしたね。中層と言っても下層に近い部分もありましたので」
「下層ってそんなに治安が悪いの?」
「何をいまさらな事を。当たり前です。ぶつかってきた人はスリだと思えと言われるくらいです。私も何回人とぶつかったか」
こっちの世界では常識らしい。最近慣れてきて忘れてたけど私はこっちの常識が分からない。
「私も確かに人とぶつかったけど、人と多いからだと思ってたわ」
「人が多いのも確かですよ。少なくともお嬢様はスリには遭遇していないようで良かったです」
そう心配してくれるホリナの表情は優しかった。だけど何か違和感がある。
「ねぇホリナ何かあった?」
「いえ、特に……どうしましたか」
「なんだかホリナ顔が赤いわよ」
「えっ……」
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