第17話 オーランはどこに?

 彼女の抱える問題もストーリーの中で知っていた。だけど本物を目の前にするとその壁の高さは想像していたよりも高いものだった。

 そして何より、その美しさと彼女の芯の強さに私は改めて感心するしかなかった。あの考えを持っている同世代が何人いるだろうか。設定は15歳でも中身は25歳の私よりも大人びた考えをしているとしか思えなかった。


「いやーあれはファンが多いのも分かる。たまたまシャバーニがいたから個人的な推しトップになれなかったけど、シャバーニが居なかったら最推しの可能性もあったわね」


 彼女との話が終わると私は囲いの波が彼女に迫ると同時に囲いの外側へと押しのけられてしまった。結局私はその場を離れて1人でさっきのユリィと会ったところまで帰ってきていた。


「オーランまったく見当たらないわ。本当に存在してるのよね……」


 ここに戻ってくる間に3人ほどに聞いてみたけど、1年生じゃなかったのでまったく知らなかった。見渡しの良い所にくればと思って校舎入口まで戻ってきたけど、それも難しそうだ。


「オーランをお探しですか?」


 「オーラン」その名前を口にしてくれたのは見た目が少し幼い、よく言えばナチュラル、悪く言うと地味という印象を受ける男子生徒がいた。


「知ってるの!?」


 思わず彼の両肩をつかんで前後に揺さぶってしまう。彼は揺られながら肯定の返事を振り絞った。


「どこにいるの!?」


 さっきよりも勢いよく前後に揺さぶる中で、今度は否定の言葉をひねり出す。


「えっ、そこは知らないの……」


 否定の言葉に私のテンションが谷底に落下するかの如く萎えて行った。彼を揺さぶっていた手も自然と止まっていく。


「期待させて……すみません…」


 申し訳なさそうにしょんぼりとする彼はどことなく犬を想像させてくる。

 

「も、申し遅れました。騎士学校1年のマルズ=チーと申します」


 胸を張って右手を胸元に沿えて名前を告げた。緊張した声と若干まだふらついているのか足元が震えている。締まってないが半分は私のせいなのでなんとも言えない。


「私はフランソワ、あなたと同じ1年よ。よろしくね」


 スカートを少し上げるようにして貴族っぽいあいさつの仕方を見よう見まねでやってみた。あっているかどうかは正直分からない。

 

「オーランは今日の昼ごろから姿を見ていません。丁度門が開いた時あたりからでしょうか。それまでは教室にいましたので間違いないかと」

「あなたはクラスメイトなの?」

「はい。何回か話しかけてみたこともあるのですが、あまり反応がなく、独特な雰囲気をクラス内でも醸し出しています」

「そうなのね。ありがとう。そしたら彼を探すのはまたにするわ」

「いえ、彼にはフランソワ様が探していたと会ったときに伝えておきます!」


 オーランを探して歩いたのと、アルと一緒に校舎内を歩いたのが今になってドッと疲れになって襲ってきた。オーランに会えなかったのは残念だけど次の機会にしよう。

 親切にもオーランの事を教えてくれたマルズに再度お礼を言って私もユリィと同じように学院の方へ戻って行った。


「今日は早く帰って寝ましょう……」

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