パンドラの箱

教授 「吉川くん! ついに発見じゃ!」


吉川 「やりましたね。教授」


教授 「長く険しい道だった」


吉川 「古文書に書いてあることは本当でしたね」


教授 「うむ。この部屋に……パンドラの箱が!」


吉川 「しっかし、何もない部屋ですねー」


教授 「おぉ! あそこにいかにもパンドラ風味の箱が!」


吉川 「本当だ。思ったより小さい」


教授 「間違いない。パンドラの箱じゃ」


吉川 「本当ですか?」


教授 「マジックでパンドラって書いてある」


吉川 「えー」


教授 「ほら、ここ。ワレモノ注意のシールの上」


吉川 「そんなシール貼ってあるんだ。しかもカタカナで書いてある!」


教授 「ゆるぎないな」


吉川 「いや、これはだいぶ揺れてるでしょ。嘘っぽいもん」


教授 「開けて見りゃわかるじゃん」


吉川 「そんな! あけちゃダメでしょ」


教授 「いいじゃん。すぐ閉めるから」


吉川 「そういう問題じゃないでしょ。パンドラの箱ですよ?」


教授 「二秒!」


吉川 「二秒でもダメだって。でちゃうよ! 厄災が出ちゃうよ」


教授 「さすがのパンドラも賞味期限が切れてるだろ」


吉川 「賞味期限ないよ! そういうモノじゃないでしょ」


教授 「熟成されてるから食べごろかもよ?」


吉川 「なにを食べる気だ。バカか」


教授 「なにって……野菜でしょ?」


吉川 「野菜はいってないよ! そんなのスーパーで買えよ」


教授 「野菜じゃないの!?」


吉川 「バカ! なんで野菜を取りにこんな危険な場所まで」


教授 「ベジタリアンだから」


吉川 「厄災やくさいだよ。野菜じゃない! 世の中のありとあらゆる災難が詰まってるんだよ!」


教授 「まじで!?」


吉川 「あと……希望」


教授 「見てー。超見たい。やっぱり開けようよ」


吉川 「ダメだよ。世界レベルの問題じゃん」


教授 「俺がなんとかするから……」


吉川 「あんたになにができるんだ!」


教授 「こう見えても、意外と家庭的」


吉川 「そんな情報は聞いてない! 家庭的でなにを解決するつもりだ」


教授 「お風呂とか掃除するよ?」


吉川 「勝手にしろよ。あれか? 世界の厄災は水垢レベルか?」


教授 「うるさいなぁ。人類の命運は今、俺の手に委ねられてる」


吉川 「あなたは厄災というものがどういうものだかわかってないんだ!」


教授 「あぁ、わかってないさ! いーじゃん別に」


吉川 「すねてる! たち悪いなぁ……」


教授 「よぉし。ご開帳!」


吉川 「どうなっても知らないぞ……」


教授 「ワハハハ。神の裁きを受けよー!」


吉川 「……どうです?」


教授 「……あれ?」


吉川 「もう……厄災でちゃいました?」


教授 「すごいぞ! 吉川くん! 小人だ! 小人が二匹!」


吉川 「え……」


教授 「わぁ。動いてる。すげー」


吉川 「本当だ! ちっちゃい!」


教授 「二匹いるから繁殖させて一儲けしようぜ!」


吉川 「なんて俗物的な……学術的な探究心はないのか」


教授 「だって珍しいじゃん! あんまり可愛くないけど……」


吉川 「でもこれ……両方ともオスみたいですよ?」


教授 「マジで? 服ぬがしてみようぜ!」


吉川 「やめなさいよ……おびえてますよ」


教授 「神の意志の前には小人は無力じゃ!」


吉川 「まだ神様気取りか」


教授 「こら! 逃げるな! デコピーン!」


吉川 「デコピンしたら死んじゃう!」


教授 「しまった。虫の息だ! 虫だけに!」


吉川 「いや、虫じゃないでしょ。小人じゃん。なに上手いこと言った風の顔してるの?」


教授 「こっちのヨボヨボの小人は、ほっといて若そうな小人を辱めてやろう……」


吉川 「キョキョキョ……」


教授 「落ち着きたまえ。これからが見ものだぞ!」


吉川 「キョキョキョキョ……教授!」


教授 「なんだ吉川くん! いきなりスクラッチしてラッパー気取りか?」


吉川 「そうじゃなくて!」


教授 「オオオオオレもママママ負けない! チェケラー」


吉川 「チェケってないで! 天井! 開いてる!」


教授 「あ、本当だ。この部屋の天井は開閉式だったのか!」


吉川 「教授! 巨人です! 巨人が覗いてます!」


声「ワハハハ。神の裁きを受けよー!」



暗転

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