第11回 儚きヒャダイン無双
本作Ⅳでは、最終章である第5章が事実上の本編であるという構成の都合により、1から4章に関しては、それぞれの導かれし者たちの前日譚的、
事実、各章のボリュームは少なく、とくに第1章などは、慣れれ来ると小1時間で楽にクリアできてしまうくらいだし、他の章にしても数時間もあれば、十分攻略できる程度の内容である。
そうなってくると、どうしてもクリアレベル帯というのもそれなりに落ち着き易く、公式ガイドブック記載の、5章での加入時見本ステータスを視てもそれぞれ概ねレベル10台での加入となっており、それは=各章クリア時のレベルを顕しているわけで
第2章でいえば、ふつうにプレイをしていけば、アリーナがエンドール武術大会で勝ち抜くために必要なレベルなど14もあれば十分なのだ。(成長率にもよるが)
むしろ、緊迫感を味わいたいならそれ以下で挑んでも楽しいかもしれない。
さてご存じの方には説明不要のこととは思うが、敢えて、このエンドール武術大会というのは第2章のクライマックスであり、所謂ボス戦となるイベントである。
優勝者には姫との結婚権利を与えるという向こう見ずな武術大会を開催してしまったエンドール王が、後に引けず困っていたところに、我らがおてんば姫が到来。
女性であるアリーナ姫が戦い優勝してくれたならば、姫は結構しなくても済む。
そこで、待ってましたとばかりに、出場を依頼されてしまうという、何ともコメディ色の強いイベントなのである。
ただし、その時点での優勝候補つまりアリーナが勝ち抜いた場合の大戦相手がデスピサロ(Ⅳのラスボス。ただし、この時点では正体不明)だということ。しかも、彼が何故か決勝を前に忽然と姿を消してしまいアリーナの不戦勝に落ち着くという件 そして、時を同じくして起こったサントハイムの人々の謎の失踪
その
さて閑話休題。つまるところ、本章のクリアレベルはアリーナで14前後ということになる。アリーナより、レベルの上がり悪いブライだと12または13といったところか。
ここで、ヒャダインの習得レベルが27だということを思い出して頂きたい。
そうなのだ、こんなレベルではヒャダインを活躍させるどころか習得さえできないのだ。
これでは、いくら前作のプログラムミスを修正したところで、梨のつぶてである。
レベル32であろうが27でも、このレベル帯からみれば遙か雲の上なのだから。
ここまで読まれた方の中には、「単純にレベル上げてヒャダイン覚えさせればいいんじゃないの?」と思われた方も居るだろう。
確かにそれも間違いではない。否、それしか実質ヒャダインの勇姿を存分に味わう方法はないのかもしれない。
ただ、上述したようにこの時点でのレベル27というのはまさに雲の上なのだ。
そもそも、クリアレベルを14程度で見据えている時点で、まず、モンスターがそれに準じたランクのものしか出現しない=レベル27に到達するための経験値稼ぎが、非常に大変である。という問題が立ちはだかるからだ。
無論、これは大袈裟といえば、大袈裟で、例えば(現在の)筆者のようなやり込みユーザーや、ある程度効率を考えられるユーザー、またレベル上げのルーティン作業に耐性が
あったり そもそも大人であれば辛うじて、そこまで時間を費やし達成することは
不可能ではないし。
しかし、当時小学生だった筆者の視点からすれば、それは果てしない悠久の時を要するような気の遠くなる話だったわけで
まあ、よくいわれるように子供と大人では体感時間が違うらしいので、大人ならば耐えられると言ったのはそういった意味からである。
※ちなみに、本章で初登場するメタルスライムを聖水で葬るというⅣ特有の仕様を突いたバグ技を用いれば、多少は楽になるが、それでもやはり道は険しい。
メタルスライムでレベル上げが楽になるのはよくて20前半まで 27ともなれば本来はぐれメタルの恩恵が欲しいところ(約10倍の経験値差は悩ましい限り)
何はともあれ、仮にその延々と続く
これで、ようやく夢にまで見たブライ爺によるヒャダイン無双が実現する。
マニュアルコマンドでヒャダインを選択し、並み居る敵をその氷刃で一掃する。
そう、まさに一掃である。とりこぼしなど皆無である。まさに最強無敵である。
それもそのはず、この第2章に配備されたモンスターなど、そもそもがヒャダルコで十分なのだ。ヒャダインでなくともほぼ一掃できるというもの。結局頑張って習得したヒャダインも、敵が弱くては、その威力を真に生かすことままなぬのであった。
嗚呼、哀れヒャダイン
更に追い打ちをかけるようだが、この強引に2章でレベルを鍛えてからクリアする弊害というのも実は無視できない。
まず、本章でヒャダインまで習得したブライが、では第5章で活躍できるというとこれもまた厳しい。それは単純にAIだからというよりは、この時点(ブライが加入)で攻略する最寄りのダンジョン『ソレッタ南の洞窟』が、氷に覆われた洞窟であり、ヒャド系に耐性を持つモンスターが多いのだ。そのうち、物語を進めれば、先に加入していたマーニャや勇者がイオラを習得してしまう。そうなると、もうヒャダインあれどブライなどお払い箱当然となるわけだ。嗚呼無常。
と、これは弊害?というのとは部類は違ったかもしれないが、実は、真の弊害はアリーナにある。
ブライと違い、アリーナは本作最強のアタッカーとして人気であり プレイヤーの大半が加入から終始スタメンに起用するようなキャラクターである。
前作の武闘家の特性でもあった『レベルがあがると会心率上昇』というスキルは凄まじい効力を発揮し、本作クリアレベル帯ともなれば、体感で3分の1くらいの確率で会心撃をぶっ放つように成長する。あの ガシャガシャ~ン!という小気味良い響きがテンポよく鳴り響く戦闘は爽快そうものだ。
また会心率だけでなく、素のステータスも優秀で、とくに20台での成長率は伸びが著しく、とても強力なキャラに仕上がっているはずなのだ。
そんな強化型アリーナがいきなり加入すれば、その直後に控える 本作随一の難敵として有名なキングレオさえ雑魚と化してしまうのだ。
さらに、キングレオよりも強敵とされるサントハイム巣くう憎きバルザックさえ
苦戦することなく倒せてしまうのだ。
正直、これはリアルタイムで子供時代に本作を体感した筆者の主観であるが、
このキングレオとバルザックの2強ボス戦に関しては辛酸を舐めた経験がある故、
マゾヒズム的ではあるのだが、逆にこの苦戦を愉しむというか、白熱のバトルを切り抜ける達成感を是非味わってこそだという思いがあるのは確かだ。
その意味で、この強化しすぎた導かれし者の加入は本作の醍醐味を潰してしまう要素だと捉えるのだ。
であるから、人によっては弊害と感じないかもしれない。ただ、この2強以降、登場するボスキャラクターは、お世辞にも苦戦を強いてくるような輩はいないと思っている。エスタークが、ただ寝てるだけで、弱すぎなのだが?という話はよく聞くが、苦戦したなんてことはまず聞かない。ラスボスのデスピサロにせよ、HPこそ膨大だが、本作の売りである馬車入れ替えで8人戦が可能なため やはり、中盤4人で挑まねばならぬボスとはその難易度は比較にならない。
最後に余談が過ぎた感は否めないが、以上が、ヒャダインについての筆者なりの考察である。
Ⅲで登場し、Ⅳにてその役割を終えた ヒャド系の異端児 ヒャダイン。
その消え去った影には、このような波乱万丈に満ちたドラマがあったことを
忘れないでほしい。
ところで、2017年発売のⅪにおいて、ベロニカとセーニャの姉妹による連携技として『マヒャダイン』なるものが登場している。
この連携自体にヒャダインは関係ないのだが、そのネーミングにしっかりオマージュされるなど、まだまだ完全に見捨てられたわけではない?ヒャダイン。
もしかすると、今後こうしたラブコールにより復帰の可能性もあることを、切に願いつつ 本項を閉じよう。
ヒャダインに栄光あれ!
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