第 5回 哀愁のヒャダイン
リメイク版を用いての検証考察は、現実的でないと判断したところで、ではどのようにしたらよいのか。それはもう、空想実験しかないわけである。
そう、仮に従来通りの順序でヒャダインを習得したと想定してみるのだ。
ご存じない方もいるかもしれないし、本作を実際プレイしたことある方ならば体験を持ってして実感している事柄だろうが、このⅢでは、レベルアップ時のステータスの上昇値がランダムに設定されている。ま、実際には完全なランダムではなくある程度の成長候補パターンから毎度抽選される形のようなのだが、この仕様により、賢さの上昇具合に伴い、呪文の習得レベルにもある程度ズレが生じてくるのだ。
尚、このシステムについて話しだせば、今回の本筋から逸れてしまうため、詳しい言及はここではしないので悪しからずである。ただ、そのくらいに、ライト層が考えているよりは奥深さを持ったゲーム、それがドラクエなのだということは伝えておきたい。国民的とはいえ侮れないのである。
さてそんなわけで、公式ガイドブック記載の呪文習得レベルもあくまで目安でしかないのだ。ただし、これも全くあてにならぬわけではない。ズレるといってもせいぜい1か2レベル、ごく稀に成長如何では、習得できなくなるような呪文も存在するらしいが、これまでの人生において50回以上は周回してきた筆者の経験ではそんな現象は皆無である。そのくらいの確率だと思っていい。
逆に、賢さの成長率に関わらず、必ず規定のレベルで習得するように設定されている呪文も存在する。これもまたややこしい話なのだが・・・
さて、閑話休題
そんなわけで公式ガイドによればヒャダインは魔法使いがレベル26で習得するようになっている。そしてマヒャドが32である。
無論、これが、実際には逆になっているわけだから、まずはマヒャドを26レベル付近で習得することになる。
ここで、呪文習得表を見直して気付くことがある。それは、このマヒャド習得の3レベル後にはベギラゴンを習得するのである。
ベギラゴンといえば、ギラ系最上位である。しかも、その効果範囲、与ダメージは実はマヒャドともろ被りの呪文なのだ。
ここまで、ついてこられている方には、説明するまでもないだろうが、本作も含めこれまた当時のRPGでは、属性による弱点や耐性というものの表現が、効くか否かという二極、そう、白か黒か 効くヤツには効くが効かないヤツには効かない(効きにくい)という至極シンプル設計が幅を利かせていた。
おそらく、昨今のゲームに慣れている方なら、属性というと、弱点属性を突けば大ダメージ(通常よりダメージUP)、逆に耐性持ちならば与ダメージ減少となるようなシステムを思い浮かべてしまうだろうが、本作はそうではないのだ。
つまり、このマヒャドと、ベギラゴンの差異は、単純にそれが効く(効きやすい)敵、効きにくい敵の棲み分けができているという点ただそれだけなのである。
しかも、これについても、予めどのモンスターにはどちらが有効なのかを自力で把握しておかねば、使い分けることも難しく そもそもとくに両方とも効き易いようなモンスターもいるわけで、とくに初心者がこの弱点か否かを念頭にいちいち使い分けるようなプレイスタイルを執るか?と聞かれたら、まず答えはNOだろう。
むしろ、こうしたプレイスタイルはある程度、システムを熟知したり、慣れたユーザー向けの比較的高度なプレイではないか。
そんなわけで、メインのターゲットであった
そう、言い換えれば、もしマヒャドを設定どおり32レベルで習得していた場合、このべギラゴンが先行してしまい、なんとヒャダインだけでなくマヒャドもその存在意義が怪しくなっていたかもしれないのだ。
さて、このようにマヒャドとベギラゴンが同じそれぞれの最上位呪文であり、近いレベル帯で習得するが故、上記のように比較してみたわけだが、では、ヒャダインはどうだろうか?
そもそも4段階のヒャド系で3段階目(準最強)の位置付けのヒャダインには他呪文(3段階しかない)に比較対象が存在しないのだが、それでも敢えて比較するならば
一番近いところでレベル23で習得するイオラとなるだろうか。
このイオラがまた秀逸な呪文で、このレベルで習得する全体呪文のくせにヒャダインとのダメージ差は微々たるものなのだ。
正直、このイオラ習得後に、ほぼ威力の変わらないヒャダインを習得してもそれは、やはり不要と言われれも仕方がないのかもしれない。
それは設定ミスにより32レベルで習得(9レベル差)していようが、設定通りの26レベルで習得しようが、変わらない事実だ。
もちろん手慣れたプレイヤーは、その効果が及ぶモンスターを把握し効率よく使い分けることで、意味を見出すことは可能なのだが・・・
今回は、ちょっとややこしい話になったが、これでわかっていただけただろうか。
つまり、本作でのヒャダインというのは、その存在自体が・・・というよりはむしろそれを取り巻く環境要因により、陽の目を見る事ないポジションに追いやられたと言っても過言ではないのだ。
しかし、真に特筆すべきは、この短期間にこれだけの攻撃呪文を詰め込み習得させるという無茶ぶりだろう。
前作からその数を増し過ぎた呪文をたったの2職業に振り分けたこと、それも攻撃呪文のその殆どを魔法使いという職業に背負わせた事。
この結果が、同レベル帯に同じような呪文が集中してしまい、結果 その使い勝手や本来の魅力を発見してもらいにくいという不遇を生み出すことに繫がっているのだ。
巡り巡って、その犠牲となったのがヒャダインなのだ。
ただ、本作1作のみで降板させられたわけではない。Ⅳにも登場しているのだから
では、ここまで不遇なのに何故、次作でも続投したのだろう。
想定していたより、長い
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