こんなマスクあったら

クースケ

第1話このシチュエーションって?

コロナ渦が続く中、いろいろな業種が下降しているが、マスクの需要は、伸びている。



私と、私の父とまだちいさな娘とテレビを囲んで夕食だ。毎日コロナの患者数の発表に、うんざりしながらニュースをみるのが日課になっている。


「年寄りにも重症者が増えてきたそうだな。」父がポツリという。

60を過ぎてもまだまだ変わりなく見えるが私が離婚してから、一人親になって頼り過ぎではないだろうか。とか思うが口に出してもこの状況は変えられない。

親は、ありがたい。感謝しかない。

寡黙な父だが私が仕事に精をだせるように掃除に洗濯、娘ールルの保育園の送り迎えなど率先して世話をやいてくれている。

私の父の思い出は、朝から晩まで仕事で顔を合わせたことがめったになかった。たまに父が家にいても疲れてほとんどねていた。そんな父は、空気の存在だった。子供の私にとって興味のない存在だった。


それが、夫と離婚して行き場のない私たちをあたたかく迎えいれてくれた。

母が他界してから一人で細々と暮らしていた父。何十年も離れていたのに、家族だからと。

嬉しかった。

父も孫におじいちゃんと、甘えられて満足そうだ。


最近の父はマスク作りにもはまっている。

第1作品は娘、ルルが大好きなアニメのキャラの生地で作ったものだった。父は、昔から器用だったらしい。それから気を良くして23作まで作った。お気に入りを残して、保育園のバザーに出すとすべて売り切れてしまった。

それからも、また少しづつ増えている。

生地の材質や色々な工夫をしているので、見るのが楽しみだ。


ある日、父が新作ができたというので早速試してみる。

父いわく、ヒモなしマスクだ。口元に当ててみるとフィットする。

なるほど落ちない。自然に肌に馴染む。

ルルも気に入ったようだ。


しばらくして、マスクをはずす。んん。

少し、力を加える。え?

ルルを、みると同じ動作をしている。

取れない。

えっー。どうして?

父も、同じように動揺している。

父いわく、マスクに負荷をあたえたら外れるらしい。

しかし、父が試してもだめだった。

あまり、力をこめると皮膚が引っ張られ痛さが増す。

どうしよう。三人の顔は、マスクで隠れていて表情は読み取れない。



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