第240話-2 彼女は飛燕の練習をする
吸血鬼を二時間ほど痛めつけた結果、『衝撃』に似た『牙突』に、並の人間や魔物であれば首を斬り落とせるような『飛燕』、切り傷を多数作る『蝶舞』という三つの形式で魔力の斬撃を飛ばす事ができるようになっていた。
『鎧を着こんだ奴の場合、斬れなければ『牙突』で昏倒させるという方法も悪くないな』
「そうね、危険な状況で離れている味方を援護するにも良いでしょう。『蝶舞』は集団で攻撃してくる魔物に対する牽制や攪乱に使えそうね。ゴブリンの集団や狼、グールも平服なら切り傷を作る程度の効果が望めるもの」
『……あれを見ると、そうかもな……』
深く、浅く様々な切り傷を付けられ、自己修復を進めている元傭兵首領の吸血鬼はぐったりしているものの、傷は治しているようである。あとで、鶏の血でもかけておけばOKだ☆
『ウウ、ヒデェ……人デナシ……』
「吸血鬼は人ではないから問題ないわ」
『ああ、マジなに言ってんだお前。人間辞めてんのに、人でなしはお前だろって言って欲しいのかね』
夕闇迫る射撃演習場に、オッサン吸血鬼のすすり泣く声がこだましていた。
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剣技に優れている伯姪なら、恐らく一撃に特化した『飛燕』か『牙突』でも良いだろうし、距離も数mでも効果があるだろう。囲まれる前に接近する敵に攻撃を加えて包囲を破るといった用法もありだろう。
伯姪が出来れば、茶目栗毛や赤毛銀髪、青目蒼髪、赤目蒼髪まで覚えて貰おうかと思う。剣や槍が主武装でない他のメンバーはとりあえず必要はないだろう。茶目栗毛は……魔力量が心許ないが。
夕食後、彼女は院長室に引き上げ、そこで伯姪も事務仕事を手伝う事になっていた。意見を交わしながら進めたい案件もあったからである。昼間の早期入学希望者に教会の薬草畑を管理させる形で予科を設ける提案には「いいわね」と賛同してもらう事が出来た。
「それで、斬撃飛ばすのは上手くいったの?」
「凡そね。魔力を飛ばすときに、自分と繋げたまま飛ばすのがコツね」
「ああ、投げ縄みたいなものね。曲げたりできると良いわね!!」
彼女はそれは盲点であったと思った。弓や銃弾では直線的な目標を狙う事は出来るが、通路の脇に潜むような敵を攻撃する事は難しい。曲げることで、『走査』と組み合わせれば、直接見えない位置でも攻撃を加える事ができるかもしれない。
「魔力の量が少ない私には無理でも、あなたには可能かもしれないじゃない?」
「研究するに値するわね。剣を持たない魔力の多い子達にも……練習してもらおうかしら」
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