第75話 用語辞典Ⅳ前編

⭐︎猪頭団

4章初めにチラッと登場後、魔王エルルちゃんにすぐさま壊滅させられた盗賊団。

畑の害獣として厄介な猪の名前を使っているが、もちろん猪も食利用がてら絶滅、ないしは一部の地域で細々と生き残っているだけなので、その名をつけた盗賊団はもちろん、なんなら農家の人たちが聞いても知っている人は少ない。

ただ、農家の敵として恐れられていた伝説の生き物みたいな話が農家の人たちの中でちらほら広まっていたので、そこから取ったのだと思われる。

団長は例に漏れず桜花神拳の使い手。


⭐︎桜花神拳

黄泉国で主流な武術のうちの一つ。

3つある流派の中でもっとも古く、門下生の多い武術。

黄泉国ではどの都市、村にも道場があるくらいには繁盛している。

しかし、繁盛しているがゆえに盗賊団の強盗手段の一つとして使われ始めると、黄泉国の人しか門下生になれなくなってしまった。

桜花神拳開祖がユリザクラと呼ばれる桜の木の一種で花見をしていた時に、そのユリザクラから教えてもらったという逸話があり、いかにも胡散臭いにも関わらず、意外とそれを信じている人も多い。

過去の用語辞典や作中にて魔力に対する解説をしたが、基本的に魔女と呼ばれる人種でないと自由に魔力を操ることはできない。

なのにも関わらず、桜花神拳は魔力を操るどころか体内に宿る他の電気エネルギーや熱エネルギーまでを利用して合計5種のエネルギーを自在に操るなどという離れ技を行う。

桜から武術を学んだ、という話は一から5種のエネルギーを編み出して、制御する修行法を発見したなんていう話よりは受け入れやすいということである。

5種のエネルギーは『魔力』を元として、神経を辿る微弱な電流と魔力を合わせて練り上げた『霊力』、体内の熱力と魔力を合わせた『気』、魔力以外の2種エネルギーを創り出す。

さらにはその2種の『霊力』と『気』を混ぜ合わせた『魂力(呪力)』、『魂力』に再度、魔力を重ねて練り上げることによって創り出される『神気オーラ』。

この5種のエネルギーを扱うことにより桜花神拳を修めている人間は超人的身体能力を得る。

同時に扱えるエネルギーの数の数え方は「束」で行い、5種全てを扱える5束者は開祖以来、誕生していないと言われている。

歴史が非常に長い流派なため、歴代の師範代や名のある達人たちが編み出した奥義が競い合い、淘汰されていき、今では十の奥義が生き残っている状態にある。

奥義についての詳細はいずれ。


⭐︎ユリザクラ

桜花神拳と関わりの深い植物。

名前の由来は百合の花のような甘い匂いを花や葉から発するため。

桜花神拳流祖が術理を得たというユリザクラは樹齢7000年を超える大木となっており、春先には非常に美しい花を咲かせ、周辺一帯はもちろん、春から夏にかけて百合のような甘い香りが国中に広がるという。

過去にはそのユリザクラを中心に首都が展開されていたが、近年の人口増加に伴い、邪魔くさいユリザクラのある首都は旧首都とされたという悲しい過去がある。

今は旧首都は聖都市と名を変えて、外国人の立ち入りは禁止されている。

とはいえ7000年間成長し続けた大木である。

街の外からでも十分に鑑賞でき、楽しめるために桜の咲く時期になると聖都付近に外国人が観光目的でたむろするのが黄泉国における社会問題となっており、いっそのこと聖都市の中に入れてしまった方が良いのではという声が広まっている。

ちなみに樹齢1000年を超えたユリザクラは数百年周期で光る。

人工的にユリザクラのみを植えた山もあり、ユリザクラの山々が一斉に光るタイミングは2000年に一度と言われ、非常に見応えのある景色だという。

光るメカニズムはユリザクラに限らず植物は外部から魔力を取り込むように出来ており、根から吸い上げた魔力のうち使いきれずに蓄積した魔力が数百年周期で発散される結果、光ると言われている。

ユリザクラだけではなく、魔力の発散が下手かつ寿命の長い大木の類で散見される現象。

ちなみに光っているのは魔力そのものではなく、魔力を排出しようとしたユリザクラの細胞が光る。

魔力そのものは桜色で、細胞内の葉緑体と一緒に光るため、緑がかった桜色に包まれる幻想的な光景が広がるとのこと。

開花の時期が終わる秋頃には百合の芳香がほんのりついたサクランボが成る。

収穫量や味に定評があり、各国にカサブランカチェリーの名前で輸出もされている黄泉国の特産品。



⭐︎源流院 景虎

黄泉国、最西に位置する朧村、桜花神拳道場の次期師範代と噂される凄腕の武術家。

というか現在、留守中の師範代の代理を勤めている。

現師範代は持病の痛風を悪化させて、朧村の隣にある大都市の総合病院に入院中。

源流院の見た目は劇画調の濃ゆい顔の角刈筋肉ダルマ。

作中にて理由は判明していないが、魔王エルルちゃんをモノノ怪と呼び、なにかするまでもなく強い敵意を向けてきた。

妻子がいる。

妻の容姿が非常に幼いために影でロリコンゴリラと呼ばれている。

ロリコンと称されているが、彼の好みのタイプはむしろ真逆。

余談だがちょいちょい野生動物が絶滅している世界でもゴリラは有名。猪のように名前だけが一人歩きしているパターン。人間に近い姿形をしているが明確に違う奇妙な生き物として地球で言うところのドラゴン的立ち位置な人気具合。

もちろん実際に見たことのある人はいない。

絶滅しているので。

現在の地球ですら絶滅危惧種になっているのに、人間の勢いが地球の比ではないこの世界で生きていられるわけがないのだ。


⭐︎次元ポーチ

魔王エルルちゃんが盗賊団を倒して回る際に手に入れたウエストポーチ。

次元という名は付いているが、4次元ポケット的なアイテムではない。

そんな超常技術を布でできたウエストポーチにつけるなんて無茶もいいところである。

よしんばあったとしても、盗賊が持てるアイテムであるはずもなし。

実際は中を真空状態にする魔法を仕込んだことで衣類を圧縮、沢山入れられるようにしたウエストポーチ。

すごく手軽な持ち運びできる布団圧縮袋みたいなものと考えればいい。何度、開け閉めしても常に真空パック状態である。

真空になるので食べ物を入れれば細菌が活動しにくくなり、腐りにくく、酸化しにくくなる便利グッズ。

これはこれで地球人からすれば超常技術であるけど次元や空間に干渉するよりは遥かに簡単。

その効果の割にはリーズナブルで、ウエストポーチくらいの大きさなら2、3万くらいで買えてしまう。

旅の必需品。

食べ物以外でよく売れている商品の一つ。


⭐︎アルバトロス

3章47話に言葉だけ登場した組織名。

農業国家プラベリアに存在する盗賊団殲滅組織。

国営。

軍事組織を持たないプラベリアに於いて、唯一の戦闘部隊。その組織の実態は殆ど知られていない。

アルバトロスという名前はアホウドリを指す。

アホウドリは警戒心がなく、簡単に捕まえることのできる阿呆な鳥、ということでアホウドリの名がついたらしい。

そのため、羽毛目的の人間などに捕殺されやすく、ふえにくいということで絶滅危惧種に指定されている。

もちろんこの世界では絶滅済み。

プラベリアが今の農業国家になるまで様様な苦難があり、その苦難の一つである3回あった特に大規模な食糧難の全てにおいて大きな助けとなったとして、プラベリアではアルバトロスが国鳥に指定されている。

そのため、国営に関する名前はアルバトロスという名前が使用されることが多い。

異世界産アホウドリはプラベリアのみを生息地にしていたが、地球においては渡鳥の一種であり、地球の鳥類としては最大級の大型鳥類である。



用語辞典Ⅲに書くのを忘れていたため、とりあえずこちらに書いておきますが、しばらくしたらアルバトロスについてはⅢに移します。


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