みじかい話

これる

第1話 花火

 今日は近くの河原で花火大会だ。

 ハナとお父さんが縁側で花火を見ていると、隣の猫のオンちゃんがやってきた。


 ドン、パラパラパラ


 花火の花が咲いて、大きな音がおなかにひびく。


「たまやー」


 お父さんが声を上げる。


「われわれ猫は」


 オンちゃんが話し始めた。十二年も生きてるオンちゃんはときどきしゃべるけど、ハナにしかその声は聞こえない。


「花火を食べることができる」

「またまた、うそでしょ」


 ハナは鼻で笑った。


「うそではないぞ、ハナ。次の花火を食べてやる」


 オンちゃんは、口をぐわぁっとあげてきばをむきだしにした。

 シュルシュルシュルと、次の花火が打ち上げられた。

 パッと爆発するのを待っていると、全然何も起こらない。


「えー、どうして?」

「不発だな。たまに、あるんだよ」


 お父さんが説明してくれた。


「なーんだ」


 一瞬、本当に、オンちゃんが食べてしまったのかと思った。

 ハナがオンちゃんの方を振り向くと、もうその姿はなかった。


 ニャクショイ!


 となりの家の中からオンちゃんのくしゃみが聞こえた。

 パッ、ととなりの家の窓に、小さな花火が咲いた。

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