act.16 粉砕! アクアボール!
「よし、ここら辺の奴らは1通り倒しただろ」
「そうね。それにしてもバージスの近くに生息してるスライムだから警戒してたけど、それほど強くはなかったわね。すばしっこくて苦労したけど……」
溜息をつき、ただ追い回していた時間を思い出すモニカ。それと共に疲労も彼女を襲ったようだ。
「ちょっと休憩してバージスに戻りましょう」
木にもたれ掛かり、ズルズルと座り込むモニカ。疲労困憊と言った感じだ。短めのスカートが捲れ、白い太股が露わになるもモニカは気にしない。イグナールは素早く目を離して何も見ていませんとアピールする。
「貴様ら、よくも我が愛しい子らを……」
「ん? モニカなんか言ったか?」
「許さんぞ!」
「いや! 俺はなんも見てないぞ!」
弁明のためモニカの方を向いたイグナールの目の前へ、水の固まりが迫りくる。
「クソ!」
上半身を大きく捻り、水弾を避ける。標的を見失った水弾はそのまま直進を続け、木を3本程粉砕し弾けた。
「おいモニカ! いくらなんでもやりす――」
「私じゃないわよ!」
素早く立ち上がり駆け寄ってくるモニカ。
「じゃぁ何だって言うんだ……」
2人で警戒態勢をとる。鬱蒼と生い茂る木々が邪魔をして、遠くまで見通すことは出来ない。この森の中で2人を狙い、水弾を放った何者かの気配を探る。
「クソ! どこに居やがる……モニカ魔石をくれ」
「ごめん、もう品切れなの」
先のスライム討伐のために購入した魔石は全て使ってしまっていた。どうしようかと考えるイグナールは殺気を感じ取り敵の方向を割り出す。
「憎き敵(かたき)を粉砕しろ! アクアボール!」
「伏せろモニカ!」
そう言ってモニカの頭を手で押さえ、共にしゃがむ。先程まで頭のあった所を水弾が勢いよく通過する。
「あっちね! 『我に眠りし力よ、我が意思に従え』『揺蕩う水よ、形を成し顕現せよ』」
モニカは自身の魔力を使い、人間2人は軽く飲み込みだろう巨大な水弾を形成した。
「吹き飛ばせ! アクアボール!」
先程水弾が飛来した方向に向けて放つ。立ち並ぶ木々を飲み込むように勢いよく突き進む。しかしある所で水弾の勢いが死に、止まる。
「この程度では我に傷1つ付ける事叶わんぞ」
モニカが作り出した水弾は1点に吸い込まれるように収縮していく。しばらくすると彼女の放ったアクアボールは消え去り、彼らを襲う声の主が現れる。
「な、なんだアレは……」
人の形をしたナニか、遠目でもその体はゼリー状であることが分かる。
「ヒューマン・スライム!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます