第147話 クロバク ☆

 スファレ島から距離にして4時間。長い長い航海を終えて、ようやくクロバクに辿り着いた。


「ふぁー、やっと入港だぁ」


「…眠い」


 眠たげな声を漏らす母と姉を尻目に、余力を残したメンバーは段々と濃くなる影に落ち着いて来たテンションがまた上がり始めたようだ。


「まさか移動に一日掛かるとはね」


「しょうがないだろ、面白そうな小島があったんだから!」


「無人島で宝探しって、海賊みたいで楽しかった!」


「ふふ、そうね」


 唯の移動であった船旅が、トレジャーハンターのような波乱万丈の冒険活劇に変わるのにそう時間は掛からなかった。


 目指すべきクロバクは、スファレから北西の位置にある。俺たちは羅針盤を頼りに北西へと進み、途中アメシスト帝国の港を横切って順調に進んでいた。そんな中、退屈への我慢が限界を迎えたヤッパ―が竹の生い茂る小島を指さして「上陸だー!」と叫んだのである。


「まったく…収穫があったから良かったものの、貴方の所為で到着時間が長く後退したのよ?!」


「悪かったって!」


「オトネちゃんと楽しそうに島の奥に行くから心配したのよ」


「進む後ろ姿は…姉妹そのものだったわ」


 島の大部分を占める竹林が相手では自分の活躍する場は無いからと、シラユキ共に船に残ったユンは止める間もなく進む二人の背中を呆れながら見送っていた。


 島に寄ったおかげで、教本がお勧めする回避スキルを試せたのは良かった。島の主との激しい戦闘にこそなったけど、転職後初めてなるレベルアップも出来たので、満足のいく結果となった。


 小島を出た後は退屈な船旅が再開したので、その間にステータスを振り分けていた。



名前  ジン

性別  男

種族  夜行族Lv2

職業  ネクロマンサーLv2


HP  229

MP  177

筋力  40+15(55)

体力  40+19(59)

器用  39+9(48)

精神  39+9(48)

知力  40+7(47)

俊敏  33+3(36)

運   36


種族ポイント  0

スキルポイント 28


グリモワール  収録の魔道書 (グロノス)

武器1     フィルカーズ・サイス

武器2     ピーターの杖

頭      

胴       グランブルアーマー

腕       グランブルガントレット

腰       旅人のポーチ

足       グランブルレガース

靴       旅人の靴

アクセサリー  旅人のマント

アクセサリー  地竜の腕輪

アクセサリー


所持金      70コル


スキル

武器スキル   【大鎌術Lv11】【杖術Lv3】

魔法スキル   【風魔法Lv7】【土魔法Lv5】【闇魔法Lv10】【呪魔法Lv6】

        【下僕召喚Lv10】【召喚魔法Lv6】

生産スキル   【鍛冶Lv3】【木工Lv2】【調薬Lv2】【皮革Lv1】

        【調理Lv1】【道具Lv1】【裁縫Lv1】

        【アンデッド作成Lv5】

補助スキル   【魔書術Lv10】【採取Lv2】【採掘Lv1】【伐採Lv1】

        【鑑定Lv5】【識別Lv5】【召喚Lv6】【罠Lv2】

        【幸運Lv4】【剛力Lv4】【巧みLv4】【速足Lv4】

        【気配察知Lv5】【魔力察知Lv5】【生存術Lv1】

職業スキル   【ネクロマンシーLv1】【死霊術Lv1】

固有スキル   【有形無形Lv8】【暗香疎影】


称号『始原の魔道』『絶望を乗り越えし者』『ゴブリンキラー』『漫才師の勲章』

  『恐怖を知る者』『語られぬ英雄』



 折角竹林を見つけたのだからと竹を採取していたら、【採取】のレベルも上がっていた。流石に取得したばかりの【生存術】のレベルが上がることは無かったが、このスキルのおかげで苦手だった回避が少しは様になったかなと思っている。


「ドワーフって言っても岸壁がんぺきは木製なのね」


「そりゃ、木製の船ばかりだからだろ?」


 船を港に停泊させる場所の事を岸壁と言うのだけれど、港に繋がれている船は全て木造船である。いくら減速して接岸すると言っても、下手な操舵をすれば船の横腹が傷だらけになってしまう。


「でも普段見るのってコンクリート製でしょ?」


「コンクリートを作る技術がまだ無いんだろうな。だから新しいものを用意しやすい木で岸壁を作ったんじゃない?」


「へー」


 停泊した船から競う様にして岸壁に飛び移る。


「クロバクか…街並みはカルセドニーとそう変わらないな」


「ドワーフって小柄な種族だったと思うんだけど、家のドアとか普通のサイズに見えるわね」


 クロバクの地盤がしっかりしているのか、カルセドニーの石畳とは違い、踏み固められた土の上に家が立ち並んでいる。


 港の管理者との話を終えると、今回の目的であるダンジョンの情報を求めて冒険者ギルドに向かう。


「結構、プレイヤーもいるのね」


 港を管理するドワーフから聞いた冒険者ギルドへの道すがら、すれ違うプレイヤーを横目にユンが呟やいた。


「そうですね…私たちがゲームを始めた時と同じ格好をしていますし、第二陣の始めたばかりのプレイヤーでしょうか?」


「多分、そうなのでしょうね。未だに商店街の福引なんて見かけるくらいだもの…景品に出されていたリンクスが今日手に入った人だってきっといるわ」


 8人という大所帯での移動だけに、俺たちに向けられる視線は途切れる事が無い。


 ゆっくりと流れてゆく街並みを眺めながら、ぼんやりと今は無きカルセドニーの風景を思い出す。


 もう二度と見られないなら、ゆっくりと歩いて回ればよかったな。

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