第53話 海辺のモンスター

「いざ、海へ!」


 何だか口調がおかしくなっているが、気にしない。


 装備も整えたことだし、さっそく海辺で狩りと洒落込もう。


「潮の香がする…こっちだな」


 元々が港を抱えた街だけに海までの道程は短い。何しろ、いつもの門を抜けて外周を回って行けば良いのだ。


 海マップに行くのは初めてだが、ゲーム的には海専用の素材があって然るべきだろう。市場で購入したアンドレの木材も海近くで自生するらしいし、他にも採取素材があるはずだ。


 外壁にそって進んでいく、しばらくすると視界が青一色で満たされた。


「おお、海だ!」


 海の青は空の色が映り込んだ色だそうだ。ゲーム内ではどう色付けされているのか分らないが、現実でも滅多に見られない色合いでは無いだろうか。


「んーっと」


 辺りを見渡し、モンスターを探す。


「…お」


 砂浜でもぞもぞと何かが動いた、咄嗟に大鎌を構える。


 何かが動いた場所に近づくと砂の中から、大きなカニが現れた。


「大体、30センチって所かな…」


 横幅ではない、高さである。


 カニと言えば固い装甲がポピュラーだが、こいつはどうだろう。


「試してみるか…『サモン』『召喚』」


 ゴブリンゾンビを3体、黒猫を1体召喚して様子を見る。


 召喚モンスターは、今の所攻撃力が高いわけではない。しかし、識別を使う時間ぐらいは稼いでくれる。


グランブルクラブ 水棲 レベル5 ランク1


 識別の成功と共に、グランブルクラブのHPバーが浮かび上がる。


「レベル5か…」


 ラージラットの時と比べると大した事のない様な気がするが、俺のレベルが6な事を考えると十分な脅威だ。


「『ポイズン』せいっ!」


 大鎌に【呪魔法】をかけて振りかぶる。


 ガキンっという金属音が響き、大鎌がハジかれた。


「…固った…」


 いくらか装甲を削れたかも知れないが、HPは全く削れていない。


 仕方なく杖に持ち変え、魔法を準備する。


「毒は…入ってないか」


 ポイズンは不発に終わった様だ。


 しかし、固い装甲を貫通出来る魔法は、手持ちに少ない。


「通じれば良いけど…『ダークランス』」


 グランブルクラブの装甲を削り取ることを祈りながら、狙いを定めて打ち込む。


 MPを考えると余り連発はしたくない。


「『ダークピット』」


 削れたHPは、3分の1程度だろうか。


 今の威力で三発、確実に倒そう。


 順調にモンスターを打倒し、最後のグランブルシザーと対峙する。


「『ダークランス』」


 トドメの一撃を受けて、グランブルシザーが光になって消えた。


「こっちも上位種か?」


 グランブルシザーが現れたのは、グランブルクラブを立て続けに討伐したのが原因トリガーだろうか。ジェネラルゴブリンの時も複数体のゴブリンを倒した後だった。


 他のモンスターもいたから、特定モンスターの総討伐数かもしれない。


「ドロップは…」


 休憩がてらドロップアイテムを確認する。


クラブの甲膜こうまく 素材 ランク1 品質B

 グランブルクラブの装甲膜。頑強というより柔軟な素材。


クラブの爪 素材 ランク1 品質C+

 ハサミ未満の爪。強度はそこそこ。


グランブルシザーの大バサミ 素材 ランク1 品質A

 グランブルシザーの大バサミ、固くてよく切れる。


グランブルシザーの装甲 素材 ランク1 品質B+

 グランブルシザーの装甲、岩よりも固いが同じ大きさの鉄と比べるとかなり軽い。


水色の貝殻 素材 ランク1 品質A+

 水砲貝の宝物。微かに波の音が聞こえる。


 確認するのは当然一番品質が良いアイテムだ。素材アイテムだから、品質の悪いアイテムは使うことは少ないだろう。


「ハサミは、鎌が作れそうな…。鍛冶で行けるか?」


 それでもランク1のアイテムだから、適当に木材と組み合わせる程度で終わってしまいそうだが。


≪大鎌アーツ『ポイズンエッジ』『パラライズエッジ』『スロウエッジ』を習得しました≫


「ん?」


 呪魔法を大鎌に付与してモンスターに切りかかっていたのだが、それで条件をクリアしたのだろう。多分、毒草を使って大鎌を使ったとしても同じアーツを会得出来たのではないだろうか。


「レベルも上がった事だし、街に戻るか…」


 忘れていたが回復ポーションも揃えておかなければ。


 今度は忘れない様にメモでも書いておこう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る