小学生日記

文戸玲

ぼくは日記を書くことにした

 今日から日記をつけることにした。なぜなら僕は賢いからだ。賢い人は必ず日記をつけている。アンネフランクだって日記を書いていたし,ニュースなんかでも,悪いことをされたときに自分が残していた記録で相手の理不尽さを証明することが出来るということを見てぼくは自分の身の回りのことを自分で記録することの大切さをよく知っている。それに,日記を書くことは脳に良いことは科学的に証明されている。夢を書いても良いし,ネガティブな悩みや上手くいかなかったことを書くのも良いらしい。小学三年生の僕が日記を書いていると後々貴重な資料になるかもしれない。図書室で読んだ伝記や小説のように上手くはいかないかもしれないけれど,天才的な小学生の日記は今のところ僕の知る範囲では世に出ていない。きっと僕は大物になるに違いないのだから,今小学生の僕が感じたことや経験したことを残しておくことはきっとこれからの世の中の役に立つはずだ。



 ぼくは将来偉い人になるらしい。おばあちゃんは夏休みに会うたびに,「コウくんはえらい人になる。あんたは賢いねえ。」という。今年で80歳になるおばあちゃんが言うのだからぼくが偉くなるのは間違いないのだろう。おばあちゃんに言わせれば,ぼくは他の子どもとは違うことに興味を持って,何にでも疑問を持ち,そしてよく探検に出る。そんなところが天才なのだという。コウくんという名前も天才たるゆえんで,ぼくのコウシという名前は昔の偉い人と全く同じ名前らしい。名前から違うのだと言っていたけど,そうだとしたらぼくのお父さんとお母さんはかなりの天才なのかもしれない。お母さんのことはぼくはほとんど知らないのだけれども。

 とにかく,ぼくは他の人とは違う性質を持っていて,名前からして生まれながら特別な存在であるらしい。そして,ぼくが賢いことはよくよくおばあちゃんから言われていたのだけれど、本当にぼくのすごいところは優しいところらしい。やさしいというのは生きるうえでとても大切なことだとぼくは知っている。おばあちゃんが良くいっているからだ。賢いだけではいけない。人にやさしくないといけない。人にやさしくしていると,自分のやさしくされる。人は,人にやさしくして,やさしくされていないと幸せを感じることをできないんだ。人は幸せを感じるために生まれてきているから,人にやさしくしないといけないんだ。やさしくないといけないんだ。っておばあちゃんはよく言っていた。どういうことか分かるにはもう少し時間がかかりそうだけど,きっともう少し大きくなったら分かるだろう。だってぼくは賢いんだから。とにかく,人にはやさしくしないといけない。やさしくだ。


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