第5話 婚約者が媚薬を盛られたようです
あの夜会から1週間…私の婚約者様がまた引き籠っているそうです。
最近は会うようになったのに…やはり夜会がうんざりだったのかしら?
とにかくゴット様が来てくれとばかりに手紙を寄越すので私はファインハルス侯爵家へと馬車を飛ばしました。出迎えたのが義妹のラウラ様だ。
「あら…エルメントルート様ではございませんか!」
はぁ、見れば判るのに何でしょうか?この…お前なんか呼んでない感は。
きちんとお義父様に呼ばれて参りましたのに。ゴット様はお仕事でいらっしゃらないですが。
「何かお身体でも崩されたのでしょうか?ケヴィン様は?」
「ケヴィンお義兄様は!無理をして夜会に行ったので心を病んでしまわれたのですわ!ええ、エルメントルート様が付いていながら?どうしてこんなことに!」
と私が何かしたみたいな言い方ですけど。
「とにかくお会いできますか?」
と言うと
「それはどうでしょうか?私がお声掛けしても部屋から何の反応もございませんわ。お食事は取られておりますから大丈夫ですが…」
「まぁともかくケヴィン様のお部屋に案内してもらえますか?そこの貴方」
とメイドの1人に言うとギロリと睨む美少女のラウラ様。バッチリ見てしまいました、メイドとのアイコンタクト。
メイドは…
「あ、あのぉ…エルメントルート様…ケヴィン様は具合が悪くて本当に…お会いできないかと…」
「はぁ…仕方ないからかえ…」
すると凄い勢いで上から
「エルッ!!帰るな!!来い!!」
と階段上からあの方が叫んだ。
「はっ!お義兄様何故っ!?全く部屋から出なかったのに!!」
ケヴィン様は寝巻きのままでした。何か顔が赤いわ。あら?本当に病気?
「くっ!黙れ!ラウラ!!メイド達も近づくな!」
「お義兄様それはどういう!?まさかお部屋で婚前前に!?それはお止めしないといけませんわ!」
は?何言ってんのこの子は?
「とにかくエルだけ上がって来い!」
と言うので上がろうとすると塞がれる。
「お義兄様は病気です!お帰りくださいませ!」
「でも呼ばれてますわ!どいてください!」
「帰って!!」
と美少女が顔を崩して怒鳴る。ひっ!!
「エル!!突破しろ!!」
無茶言いますわね。突破って。
仕方ありませんわね。両手を伸ばして階段を塞ぐラウラ様に対して私はワンピースの裾を持ち上げて助走をつけて牛みたいに突っ込んだ!
「なっ!ダメ!!」
ドン!!
と体当たりしてラウラ様はよろけて階段から落ちそうになってメイドが助けているうちに突破した。
「エル!!凄い!!よし!こっちだ!」
と手招きでダダーとケヴィン様のお部屋に走りバンとケヴィン様は部屋の鍵を閉めたが数分後にバンバンと美少女が叫んだ!
「お義兄様ああああ!!ダメですわよ!!ハジメテは私とですのよ!!」
と。
「あの…何なのですか?」
と言うとケヴィン様はそれ以上近づくなと手で制した。
「エル…やられた。ラウラに強力な媚薬を盛られた!」
「ええっ!!?」
「まぁ大分抜けて来たけどね!1週間経ってようやく薬抜けてきたけど念の為、危険だから近付かないで!って言ってんのにあのクソ親父がエルを呼んだのよ!」
何てことでしょうか…。1週間もずっと我慢してたと?我慢というか…。
「ううっ!よくもあの女ああああ!」
「あの…1週間我慢してたってどっちを見て興奮していたのですか?男?女?」
「私も最初はイケメン見て自慰するしかないの?って思ってたけど、この身体…男なのよ!見りゃ判るけど…悲しいことに女性に反応して心も女性な私はどうすればいいのよ!!」
ということで引き籠ってしまわれたのですって。
そしてふっと少しだけ顔を赤らめて謝罪した。
「ごめんなさいエル…ほんっっとにごめんなさい!!」
「えっ!?何ですか?」
「流石にあのラウラやメイド達を思い浮かべる訳にいかなかったの…。あんたなら正気に戻っても普通の顔だしいいかと思ってって失礼な話なんだけど!」
「ああ…はい、みな迄言わずとも察しました。まぁそういうことなら完全に抜けるまでは近寄りませんから私も」
「助かるわ…。持つべきものは親友よね!ずっ友よ」
と言う。友達ってそう言うのでいいの?って思うけど媚薬は仕方ない。
「あんの女狐!私本読んで知ったけどこの世界マンドラゴラってのがあるんでしょ?私の前世なんか想像でしか出てこなかった植物よ!希少でここでは媚薬に強力な作用をするらしいわ」
「ああ、マンドラゴラ…確かに高価ですねあれは。それが含まれていたと?」
「そっそう…!夜会から帰った日にメイドがお休み前にどうぞとホットミルク持ってきたの。それ部屋で飲んでたら…もう言いたくないけど大変なことになったわよ!!私もう死にたい!!その後もラウラが甘い声出して部屋の外から誘惑してくるしほんとハラタツからエルのことしか考えなかったの!!…ごめんなさい!!」
と私を見て顔が赤くなるケヴィン様。
何かこっちも恥ずかしくなる。
「来ない方が良かったですね…すみません」
と言っておいた。
「いや…もう来ちゃったし仕方ないわ…ぐはあっ!!!!」
と頭を抱えていきなり苦しんだケヴィン様!
「ちょっ!大丈夫ですかっ!?」
「だっ!大丈夫!近寄らないで!!」
とまた制する。
「ちょっとトイレ!!」
と部屋の備え付けのトイレへ向かった。
あ…と私は半目で察しました。
これは困ったなぁ。とそこで机の紙を見つけ、私はそこに絵を描いてジョキジョキ切ってお面にしてみた。
ガチャリと絶望しながらトイレから帰ってくるケヴィン様は私が変なお面つけているのを見て固まった。
「ぶはっ!!何それ!!あははっ!!」
「いやこうすれば萎えるかと…」
「確かに!!ないわ!!あははっ!!」
と笑ってるが目は死んだままだ。
媚薬飲んでも目が死んだままとかもはやこの方ほんとに終わっています。
しかし一瞬だけほんの少し死んだ目が嬉しそうに光りました。すぐ元に戻ったのですが。
「エル!あんたバッカ!バカだわこの子!!あはは!!」
相変わらず外ではバンバンと音がする。美少女まだ諦めていないのね。
「まぁほんと抜けてきたわ。もう大丈夫かな…」
と一頻り笑った後落ち着いた声を聞いて私はお面を外して見るとやはり凄い綺麗だけど死んだ目が私を静かに見てた。
「うん、おっけ!大丈夫!もう!」
「まぁ良かったですねー」
「エル…私今回はちょっとムカついたからラウラに仕返ししたいの…協力してくれない?」
と言う。
「あらあら何をするつもりかしら?」
と私もニヤリと笑う。
*
それからようやく数時間後部屋を出た私に掴み掛かってくるラウラ様。
「ちょっと!何もしてないでしょうね?」
するとケヴィン様と打ち合わせ通り手を握って微笑み合い、
「あら?何のことでしょうか?ラウラ様?」
「ラウラ…野暮だね…。お父様には感謝申し上げるよ…おかげで可愛いエルと一つになれたよ…もしかしてラウラも奥手な私にエルと仲良くなって欲しくて媚薬を混ぜたのかな?」
と言うとビクっとしてラウラ様は
「え?あ、あの何のことでしょうか??お義兄様??そ、それに一つって…何のことでしょう?」
「ははは…ラウラ…そこまで聞くの?やらしい子だね…では詳しく話そうか?エルがどんなに可愛い声を出したことか?ねえ?聞きたいのかな?本当に?」
「うふふ、ケヴィン様それは2人の秘密でしょう?」
「あはっ、そうだったねエル!愛してるよ!」
と言われて演技とは言えドキっとするけどチラリとラウラ様を見ると物凄い形相をしている。こ、怖い!!
「じゃあ、エルを送って行こう!」
と馬車へと行くと玄関を出た後
「きええええええええ!!!」
と奇声が上がり、ケヴィン様と私はブハっと吹いた。
「アホだわあの子。凄い顔してた」
「してやったりですわ」
「エルもありがとう…今度お詫びの品を贈るわ」
「いえいえ友達でしょう?私達…」
ちょっと間があってケヴィン様は
「うん、そうね!私の唯一の親友ね!これからもよろしく!」
と笑う。私はハッと息を飲む。
ちょっとだけ照れ臭そうな婚約者様の目が少し輝いていたのは気のせいでしょうか?
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