第二十四話 働くエルフとお手伝い



「エルフが働く?」


「そうなんですよセンセ! 物産展で凄く稼げましたからね! 個人商店構えていた連中は、稼いだお金で家庭用魔導機械器具や魔導調理器具とかを買って帰ったんですけど、これがまた他のエルフ族がうらやむほどで」


「引きこもりが働く理由としては十分だな」


「なんせ魔導調理器具の高額な方は材料を入れるだけで料理がすぐに完成するとか、ほっとけば勝手に掃除してくれる魔導家庭器具とかを見せびらかしてましたからね! エルフ族の連中がとても羨ましく思ったんです!」


「それ買っちゃったら余計に引きこもるだけだろ」


「とは言え動かすための魔石を買わないといけないですからね。定期的にファルケンブルクに稼ぎに行くんじゃないですか?」


「ああ、魔石を買うためか。最初は渋っていた楽器や衣服なんかの技術を教えて欲しいっていう件を急に引き受けるとか言い出したのは」



 クーポン券などの優待キャンペーンのおかげで盛況だった物産展は無事終了した。

 優待が無くなっても売り上げはそれほど落ちずに順調に経営できているらしい。これで来年度からの納税も期待できるな。



「なのでセンセ! アイリーンさんにエルフ族の護衛をお願いしたんですよね」


「護衛?」


「今日は暇なエルフ族を招集して、キャッサバの枝を土に埋めるんです。結界の外にも精霊魔法を使って大規模に植えるので、魔素がどうしてもピンポイントで濃くなっちゃうんですよね」


「ああ、竜種や亜竜種を呼び寄せちゃうのか」


「竜種や亜竜種以外にも体内に魔石を持つ魔物ならなんでも呼び寄せちゃうんですけどね、それらはエルフ族にとってはボーナスステージなのですが」


「まあわかった。アイリーンに任せておけば大丈夫だろ。どうせ魔導士協会の連中も出張ってくるだろうし」


「なのでセンセも行きませんか!」


「めんどい」


「えー」



 不満そうなマリアを横目に、朝飯のアジの干物定食をぱくつく。

 かなり高価な代物だが、シバ王が献上品として置いて行ったのだ。



「いいからマリアも食え。アジの干物が苦手でもハムエッグとか色々あるから」



 マリアは「むー!」と言いながらも黙って飯を食べる。

 無駄話をしていた俺たちと違って、そろそろ朝食を終えるガキんちょどもも出てきた。



「じゃあ兄ちゃん行ってくるな!」


「あの親父にパワハラされたらすぐに俺かアイリーンに言えよ一号」


「ぱわはら?」


「パワーハラスメントの略な。嫌がらせされたら言えよ」


「はははっ! 師匠は厳しいけど優しい人だぞ兄ちゃん。大丈夫だって」


「……優しい? まあいいや。何かあったらいつでも相談に乗るからな」


「ありがとうな兄ちゃん!」



 一号は自分の食べ終わった後の食器をトレーに載せて厨房に向かう。

 あいつ一人だけ家を出るのが少し早いからあわただしいんだよな。「食器ぐらい片づけますよ」ってクレアが言っても「これくらい自分でやるよ」と一号も律儀だし。


 それに感化されたのか、ミコトが真似をして食器を片付けてクレアやエリナに褒められるようになると、エマも真似をして自分の食器を自分で片づけるようになった。



「ママ!!」


「ありがとうございます。ミコトちゃんはお利口ですね!」


「えへへ!」


「くれあまま! えまももってきた!」


「エマちゃんもありがとうございます。ふふふっエマちゃんもとてもお利口ですね!」


「えへへ!」



 ミコトとエマが厨房の入り口でふたりを待っていたクレアに褒められてご機嫌だ。

 ふたりの背だと厨房の台に届かないからいつもクレアが様子を見て一足先に厨房の入り口で待ち構えてるんだよな。

 完全にお母さんじゃないかクレアは。



「センセ! ほっこりしてないで一緒に行きましょうよ!」



 リビングから天使のようなふたりを眺めていると、食事が終わった様子のマリアから再び声をかけられる。



「しかしな。南部の宿場町にも対竜種へ対抗できる戦力は配置済みだし、どうせ魔導士協会の連中も総出で竜種を探し回るだろうしな。わざわざ俺が行かなくても」


「でもセンセ! このまえミコトちゃんとエマちゃんに良い楽器を買ってあげたいとか言ってたじゃないですか! 最近は貯金額も大分減ってきたと言ってましたし」


「たしかに今は狩りをしてないから収入が無いんだよな。領主としての収入はクリスに任せて領地経営に使ってるし」


「じゃあ狩りましょう! 竜を!」


「でもなあ。出るかどうかもわからんし、出たとしても魔導士協会の連中に取られちゃうだろうしな。魔導ハイAの魔導砲だと一撃で竜種をってわけにもいかないし」


「センセ! そこはお任せください! 超音速魔導ミサイル搭載車両をセンセのために借りてきて改造しておきました!」


「いやしかしだな」


「パパ! おしごとなの?」



 クレアに食器を渡してきたミコトとエマがぽてぽてと俺とマリアの側にやってきて、今仕事中なのかを確認してくる。



「そうやよミコトちゃん! 今センセとお仕事のお話し中なんよ!」


「そうなんだ! パパがんばってね!」


「ぱぱがんばれー!」


「よしマリア早速エルフ族のキャッサバを植える作業の護衛に行くか!」


「はいな!」


「エリナとクレアはお留守番な。クリスとシルは学校に用事がないなら来てほしいんだが」


「わかった! ミコトちゃんとエマちゃんはクレアと一緒に見ておくね!」


「今日は魔法の授業もありませんし問題ありませんわ」


「お兄様! お任せください! すぐに装備を整えてきますね!」



 というわけでメンバーは俺とマリアとクリスとシルで行くことになった。

 エカテリーナはすでに現地へ向かってるとのこと。

 ミサイル搭載車両でも五人は余裕で座れるから途中で見かけたら拾っておくか。



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