第十一話 リッターシュラーク
食事が終わるころになって、アイリーンが到着する。
シルはすっかり元気になって腹いっぱい食べた後、シバ王やサクラと食後のお茶をしながら歓談している。
シバ王はやたらシルの強さを褒めていたが、実際クリスやシバ王が規格外過ぎるだけで、それ以外には無双してるんだよな。
魔導士協会の中ならシルより強いのがあと数人いるかもしれないくらいか。爺さんも強そうだし。
「閣下、遅くなりました」
「ご苦労アイリーン。食事は済んだか? まだなら用意させるが」
「いえ、済ませてまいりました。そしてこちらを」
そう言って俺の前に高級そうな箱ふたつと、布袋が置かれる。
「これは?」
「仮の騎士爵に叙爵する叙任状と、賞金の金貨十枚、そして副賞の品です」
「仮の叙任状って……。さっきクリスと話したばかりなんだが」
「多分そういう形に落ち着くだろうと思い準備いたしました」
「じゃあちわっこの方にもすでに連絡済みか」
「はい、王女殿下には内々で伝わるように手配いたしました」
「ならいいか。シバ王は明日の朝帰るそうだから、早速今渡すか。副賞の品は?」
「我が領の専属鍛冶師が打った業物の脇差です。シバ王ならお喜びになるかと思い準備させました」
もうアイリーンが領主やったほうが早いな。と思いつつ、サクラ、シルと歓談中のシバ王を呼ぶ。
ちなみにシルの賞金やら副賞はすでに渡してある。
「閣下お呼びでしょうか」
「シバ王、仮だが騎士爵に叙爵するから、叙任状を渡しておく。後日正式にラインブルク王女に騎士叙爵してもらうからそれまではファルケンブルク領内にしか効力はないけどな」
「はっ光栄至極!」
箱から取り出した仮の叙任状をシバ王に渡す。
「あと賞金の金貨十枚と副賞の脇差な。親父の打った業物だからシバ王に気に入ってもらえると思うが」
「おお! 我が愛刀を打った名工の作ですと!」
白箱を渡すと、すぐに中を確認したいと目で訴えてくるので、黙ってうなずいてやる。
そそくさと脇差を取り出し、周囲を確認して懐紙を咥えて抜刀したシバ王は、刀身を眺めて目を見開く。
ガキんちょがいるから抜かないでほしかったが、一応周囲の確認をしてたし達人っぽいから平気かな。
そう少し心配していたが、すぐに満足したのか、そそくさと納刀し、白箱に脇差を仕舞う。
「どうだシバ王」
「大変すばらしいものを頂戴いたしました。この御恩は忘れませぬ」
「いやバトルトーナメント優勝の副賞だから気にしないでくれ。あとこれが賞金な」
「かような厚遇を賜り恐悦至極でございます」
「帰りにでも何か買い物して帰ってくれ。領内で消費してくれた方がありがたいからな」
「では日本刀を購入して帰ります」
「専属になって親父の直営店の場所が変わってるからな、あとでアイリーンに確認してくれ」
「はっ」
「じゃあ親子の会話の途中ですまなかったな」
「閣下……、首打ちの儀式はされないのですか?」
「それは後日ちわっこがやるから」
「某は閣下に忠誠を誓いたいのですが」
「任命権はラインブルク王国にしかないし、すべての貴族はラインブルク王国へ忠誠を誓うものなんだが」
「是非! 騎士叙爵式を!」
「あーわかったわかった。ただしあくまでも仮だからな。後日ラインブルク王女に対してもやるんだぞ」
「御意!」
シバ王は正座すると、自身の愛刀である三日月宗近を抜刀し、俺に差し出してくる。
随分作法が違うけど、実際にはローカルで色々あったみたいだしな。まあ仮の
三日月宗近を受け取とった俺は、そのまま正座して瞑目するシバ王の首に三度
「善良な人々すべてを守護すべし」
「はっ! お任せあれ! この命、閣下の御為に!」
三日月宗近をシバ王に返して、仮の
というかこの人隣国の王様なんだけどな。なんか非常に重たい宣誓をされたけどスルーだスルー。
「じゃあサクラの所に帰って良いぞ。こっちはまだアイリーンと打ち合わせがあるから」
「御意」
シバ王はそそくさと娘の元に戻り、興奮したようにサクラとシルに話しかけている。
滅茶苦茶自慢してるけど、シルは伯爵位を持ってるし、サクラも叙爵はされてないけど隣国から招へいされた技術者ということで准男爵待遇だ。
自慢してるシバ王が一番階級的にはしょぼいんだよな。
あとあまりファルケンブルクに入れ込むようだと亜人国家連合の中で内乱が起きたりしないのかね?
少なくとも亜人国家連合の代表が隣国の騎士爵に叙爵されたなんて屈辱だと言い出す輩は多いと思うんだが。
ちわっことは定期的に手紙でやり取りしてるけど、そろそろ一度王都に行かないと駄目かね。
街道整備が終わって移動距離が短縮されたし、魔導ハイAなら一日で行けるからな。
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