第12話 アルは錬金術を使う
「よし。まずは利害を一致させようじゃないか」
「利害……ですか?」
俺の言葉にティアはキョトンとしていた。
「ああ。ティアにやってもらいたいことがあるんだ。だけど、ただやってもらうだけじゃなくて、ティアにも利益があるようにしたい。まぁ、異世界で言うところのウィンウィンと呼ばれるやつだ」
「私はご主人様が喜んでくれるのであればそれがご褒美なので、貴方のために働かせてもらうだけで十分でございます」
なんてメイドの鑑のような子!
だけどそれでいいのだろうか?
俺は一瞬思案するが、多分この様子じゃ何を言っても何も欲しがらないと考え至る。
だったら彼女の利益を、俺が後から考えてやろう。
「分かった。ティアには町の外にいるモンスターを倒してきてほしいと考えている。素材を回収しながらブルーティアの性能を強化し、さらには俺の手が空くという、一石三鳥の重大任務だ。よろしく頼んだよ」
「かしこまりました……ちなみにご主人様は何をするおつもりですか?」
「俺? 俺は俺で色々とやりたいことがあるんだ。そのためにティアに力を貸してほしい」
「はぁ……」
ティアは一度頷き、話を続ける。
「後、ご主人様」
「はい?」
「モンスターと戦いたいのは山々なのですが、ご主人様のいない私は普通の娘と変わらない能力しかございませんので……」
「ああ。戦う術が必要なんだよな。ちなみに、ティアの能力はどうやったら上がるんだ?」
「そこは人間と同じでございます。モンスターと戦い、技術を磨く。そうやって私は強くなります。ただジョブという概念が存在しませんので、戦闘スタイルは自由に選べます」
「なるほど。それは便利だなぁ……」
俺はふむと、彼女の戦闘スタイルについて思案する。
「よし……ティアには刀で戦ってもらおうかな」
「刀……異世界の武器でございますね」
「ああ」
【知識】も機能しているのだろう。
ティアは説明をするまでもなく、『刀』のことを知っていた。
俺はさっそくティアに刀を用意するために錬金術を使用することにした。
「ティア、武器になって欲しいから、ちょっと操作するよ」
「いえご主人様。その必要はございません。【自我】を得たことにより、こちらでサポートできるようになりましたので、私に言い付けてくだされば武器に変形できます」
「そうなの?」
今までは操作しなければモードの変更はできなかったが、言葉だけで可能になったと。
また便利になったな、この子。
「じゃあ……ソードモードだ。ティア」
「かしこまりました」
頭を下げたティアはソード形態になり、俺はブルーティアを背中に背負う。
「【収納】から『鉄鉱石』を取り出してくれ」
『かしこまりました』
黒く四角い物体、鉄鉱石がコトンと目の前に落ちる。
俺は両手を鉄鉱石に向けて、【錬金術】を発動した。
錬成陣が地面に浮かび上がり、鉄鉱石が光り出す。
『素材』とこれから作ろうとしている『刀』のことを深く理解することによって、鉄鉱石を刀に錬成するとこが可能となる。
人間が何十年もの歳月をかけて錬金術のスキルを磨いていく中、いまだかつて誰も到達したことがないスキルレベル10になってしまった俺は、人間に創造を許された物は、全て製作可能となっている。
さらにスキルレベルが高いと、【上級錬金】が可能となり、同じ物を作ったとしても通常よりも性能の高い物、あるいは別の上位の物を錬成することができるのだ。
鉄鉱石の輝きが収まり、それは形を変えて『刀』に変化していた。
「できた……」
俺は初めての錬金術に興奮していた。
本当にできるものなんだな、と感心しつつも、ふと冷静になり性能はどうなっているのだろうかと考える。
「この刀……どれぐらいの性能なのだろう? ちゃんと【上級錬金】は機能していたのかな?」
『ご主人様、【
「そうか。なら【
『レベルはどういたしましょう?』
「うーん……奮発して10にしておこう」
『かしこまりました。では、習得しておいてよろしいですか?』
「あ、それもティアがやってくれるんだ。じゃあ頼むよ」
自分でスキルを選択する必要もないのか……本当に使える子だな。
背中でポッと光るブルーティア。
『【
俺はさっそく、【
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
刀+
ランク:C+
攻撃力:58
追加性能:敏捷+10
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「おおっ。狙い通りの物ができたな」
通常、鉄鉱石で作れるのは『刀』だが、【上級錬金】のおかげで『刀+』になっている。
ランクもCからC+になっていて、この素材では破格の攻撃力を誇る武器となった。
ティアは人間の姿に変化し、刀を腰に装着する。
このレベルの武器があれば、ティアでもここら辺に出現するモンスターにも勝てるだろう。
「じゃあ明日からよろしく頼むよ」
「かしこまりました、ご主人様」
とりあえずこれで、俺は別のことをしていても勝手に強くなると……
俺はあまりの嬉しさにニコニコ笑顔でティアを見る。
ティアもやんわりと優しい笑みを浮かべた。
もう最高すぎて笑顔しか出ないよ。
結局俺は、眠る直前まで終始笑顔を浮かべ続けていた。
まるでオモチャを与えられた子供みたいに。
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