第25話 ~解呪の代償~
サリュナとトーヴァンが結ばれて一夜が明けた。
窓から入り込む日差しに、トーヴァンが目を覚ます。
隣に眠る愛しい人の寝顔を見ようと横を向き――
?!
「サリュナ、サリュナ起きてくれ」
慌ててサリュナを起こす。
「ん……どうしたの?」
まだ眠そうな様子のサリュナに、
「サリュナ……君だよな?」
??
「何の事? 私は私よ。」
戸惑うサリュナにトーヴァンは、
「君は本当に美しい人だね。」
そう言って手鏡を差し出す。
わけも分からず受け取った手鏡を覗き込んで、サリュナは絶句した。
――戻ってる!?人間に!!
手も、足も。隅から隅まで。人間に戻っていた。
「何故?! 何故なの?? どうして、こんな……」
色んな感情が一度に押し寄せてきて混乱した思考がそれらを処理しきれず、ただ幾筋もの涙となってこぼれ落ちる。
「サリュナ! 落ち着いて!」
トーヴァンはサリュナを強く抱き締め、
「何があっても、どんな姿に変わっても、僕がそばにいるから!! 悲しい時も、辛い時も、ずっといるから…」
そうしている間にもサリュナの双眸からは大粒の雫が溢れ出て。
――どれくらいそうしていたろうか。
怒りと、悲しみと。
何故こうなったのか。誰がこうしたのか。
そう。
誰がこうしたのか!!
「…突き止めてやる。」
唐突な言葉と、その底冷えのするような響きに、トーヴァンは血の気が引いていくのを感じた。
「誰が、何のために私を呪ったのか、何としても突き止める!!」
今の姿なら。人間に戻った今なら。できることがあるはずだ。
「……突き止めて、どうするんだい?」
――!!
突き止めて、その後?
呪った本人を見つけ出して?
その後――
一瞬でも恐ろしい考えに陥りそうになった自分自身が急に怖くなった。
「トーヴァン。」
「なんだい?」
「見届けていて。私、この呪いの真相を暴いてみせる!! 誰が、何故、私にこの呪いをかけたのか…私に呪いをかけたその人を見つけ出して、なぜそんなことをしたのか聞きたい。理由が知りたいの。もし、その理由を聞いて私が黒い感情に支配されてしまったら、その時は――」
「その時は?」
「その時は、貴方が私を止めてね。」
しばしの沈黙。
先程の毒気が抜けた、しかし固い決意を秘めた瞳。その瞳をしばらく見つめ。
「分かった。君の気が済むようにするといい。君が無理や無茶をしそうになったら、僕が止める。」
君が笑顔をなくすなら、僕がとりもどしてみせる!!
心の中で、そう付け足す。
「ありがとう。」
2人の旅路は、もう少し続きそうだ。
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