第17話 ~恋人達の夜明け~ザルドローグ滞在3日目
――ふわぁ、そろそろ起きなきゃあ。
評議員からの手紙を読んで、自由行動になったのが昨日。
久しぶりの自宅を久しぶりにゆっくり堪能していたレイ。
ベッドとお友達になりたい所だけれど、そろそろお腹も空いてきた。
サリュナたちと一緒にいない時間に買った、有り合わせの食材で簡単に朝食を作る。
――うーん、美味しい!!……でも1人はちょっと寂しいですねえ……
3人でご飯を食べるのが当たり前になっていたのだ、1人になると寂しさを痛感させられる。
とその時。
ガタン!!
唐突にドアの開く音がした。
「誰?!」
咄嗟に身構えるレイ。
ところが―
「お前こそ誰だ!! ……って、レイ!! 帰ってきてたのか!!」
「??! アクス?!!」
そう、それはかつて彼女が故郷に置いて出た恋人、アクスその人だった。
「レイ!! やっぱり君か!! 良かった、帰ってきてくれたんだな!!」
「アクス……」
突然の事態に戸惑いを隠せない。
まさか探し人が自分から会いに来てくれるとは。
聞けば、毎週1回はここに来て、部屋の掃除や片付けをしてくれていたのだそうだ。レイが帰ってくると信じて――
数日前からこの家に誰かいる、というのはアクスも把握していたらしいが、週一回の掃除の日に確認すれば良い、と思って確認が今日になったらしい。
――全く、アクスらしいですねえ……
思わず苦笑するレイ。
「とりあえず座って下さい、さっき買ってきたお茶、淹れますね」
そう言って2人分のお茶を淹れる。
淹れたてのお茶を楽しみながら、2人は逢えなかった時間を埋め合わせるようにお互いが経験したことを語り合った。
楽しかったこと、時には辛かったこと、嬉しかったこと、悲しかったこと――
一晩では語り尽くせないほど、沢山話した。
実際、話すことが多すぎて気付けば語り明かしていた。
白み始めた空を見て、驚きつつなんだか余計に楽しくなってくる2人だった。
ひとしきり話して気が済んだ頃にはもう日が高く。
「ふぁぁ。さすがに眠いですねえ」
「一緒に寝るか?」
「もう、調子に乗りすぎですよっ!!」
「冗談だって。」
あはは、と笑いあってレイは思う。
――あの時から何も変わってないな――
それが嬉しくて、笑う。
それに安心して、笑う。
「決まったか?」
「ん?」
「あの時の答え。この旅で見つけてきたんだろ?」
「はい。でも、もう少し待ってくださいー。サリュナさん達をこの街から見送るまで、待って下さい。」
「サリュナとトーヴァンだったか。なんか大変なことに巻き込まれてるんだなあ。まっ、待つさ!! ここまで待ったんだ。あと数日増えたところで誤差だろ?」
「ありがとうございますー!」
眠い目を擦りながら、しばしの別れを告げる。
「とりあえず今日はお互い寝ましょうー。お話の続きは3日後に!!」
「分かった。返事、楽しみにしてる。」
そう言って、アクスは帰っていった。
――なんだか、久しぶりに幸せな気分ですねえ。
そんなことを思いながら、まだ日が沈みきらぬうちに眠りにつくのだった。
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