ゆっくりと、這うようにして、ビルを出た。右手をかばうように、壁に寄りかかって、歩く。


 街を出よう。


 守った街を。この先の景色を。


 見なければいい。


 街から出れば、誰に会わなくてもよくなる。もう、街は、私を必要としていないんだ。だから。もう、出ていこう。


 記憶も。導線も。もう必要ない。


 昼下がりの、街の景色。二度と見ることはない、私の大好きな景色。


 それを目に焼き付けながら、ゆっくり、ゆっくりと、歩いた。

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