第7話 友達
そう言ったは良いものの僕はとりあえずその獣に石ころを投げつける。だがそんなのは効くはずも無かった。でも巨人の注意だけは引けていた。
とりあえず今は引きつけるしかない・・・他にこの巨人の相手をできる人は見た限りいない。
「セイナ・・・!?」
レナさんはこちらを見て驚く。でも僕はとにかくどう凌ぐか考えるのみだった。
「僕のできること・・・そうだ」
僕は試験の時あのピエロがベースを使えないと言っていた発言を思い出した。
僕は巨大な足に必死にしがみついた。髪はボサボサになりゆさゆさ揺らされる。
「うぅ・・・止まれ・・・!!」
すると巨人の足の機能が低下する。みるみる内に巨人は体勢を崩して転けた。
「おりゃァァァァ!!!」
レナさんの腕に物凄いエネルギーが溜まる。ベースを腕に集約されていると言った所だろうか。そのまま巨人を暗器の一刺しで倒してしまう。するとそれは砂のように溶けていってしまった。
「ふぅ・・・」
レナさんは一呼吸置いた。体は傷ついていて少し見ていて痛々しかった。自信無さそうな顔でレナさんに駆け寄る。
「あ、えっとごめ──「凄いじゃん!セイナ!」」
レナさんは笑顔で親指を立てた。
「え、レナさん・・・?」
僕は少し困惑をする。
僕がもっと強ければこんな傷を負わずに済んだのかもしれない──────
その思考が頭を巡っていた所をレナさんは明るい表情で僕を照らす。
「いや、何のアビリティかわからないしそれも凄いんだけどさ。良くあんなおっかないのに飛び込もうと思ったなってな、ハッキリ言って最初あんた見た時はちょーっと心配だったけど見かけによらず勇気あるんだな」
「それはレナさんも同じですよ・・・。えへへ」
僕はつい笑顔が零れる。するとレナさんからも笑みが零れていた。その瞬間周りからの歓声が聞こえてくる。
「おお! ありがとう二人共!!」
「助かったわ! 本当に!」
辺りからどんどん黄色の歓声と拍手が聞こえてくる。それに合わせてレナさんと顔を見合わせ少し照れる。
「あの、レナさ───「別にレナでいいよ、水臭いだろ。後敬語もなーし」
僕が話そうとしたことを察して言葉を返す。
「はい!・・・じゃなかった、うん! よろしく、レナちゃん!」
「ちゃんってな・・・ったく。んじゃ帰るぞー」
レナさんは振り向き元来た道を歩いていく。
「あ、待ってレナちゃん!」
僕にとって今日は本当に良い日だった。
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