第224話 枝垂れつつ花を散らせる桜かな

 

 

 

 むかし尼さんが住んでいたという小さな庵に覆いかぶさるように枝垂れ桜の大木があり、冬のあいだ、高い枝から枝へ、鳶が丸い巣をつくったりしておりました。


 この季節になると、まことにもって優美な花をいっせいに咲かせ、かすかな風にも花簪はなかんざしが揺れるすがたは、この世のものとも思われない美しさなのです。

 

 

                 🌸

 

 

 老枝垂れ桜の下は通学路になっているので、小学校への行き帰り、子どもたちは草庵の前で手を合わせ、ついでにというと、まことに申し訳ないのですが(笑)、そのかたわらに並んでいる20数体の石像群にも挨拶するのが習わしになっています。


 10メートルほど離れた墓地には、有名な百姓一揆で処刑された義民のリーダー3人の記念碑もあり、地域の歴史を物語る重要なスポットになっているのです。

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