　私がいま作業している場所って、違法オートマタが製造されていた廃工場が崩れたところで、ほぼ野外なのね。違法オートマタって、まぁ簡単に言っちゃえば、この街ってオートマタ産業が盛んなわけ。いろんなところで実用されてるんだけど、例えば病院で医療用に活用されたり、銀行の警備用とかで重宝されている。それらは正規品で、その証明として頭上に円環タグが回ってるの。たまに手首に表記されている時もあるけど、一応そういう決まりがあるわけ。型式とか製造元とかを表記するっていう決まりね。

　でも、なんでも正しく使う人がいれば悪く使う人もいるわけで、犯罪とか戦争用に改造してる業者が沢山いるわけよ。そいつらの作った失敗作が放置されたのが、いわゆる違法オートマタ。その筆頭が、このメトロシティのオートマタ産業のほとんどを担っている笠原工業。表では主に警備用を造っているんだけど、裏で違法オートマタを製造してるのね。当然、世間には知られてないことで、これが明るみになったらどうなるんだろう。

　で、私は同僚の黒澤さんと、そいつらの暴走を食い止める仕事をしてるわけ。壊すか追い払うかの2択が多いかな。違法っていってもピンキリで、雑多な業者が造った鉄くずの塊みたいな機体もあれば、正規品を改造した高性能なものもあるし。バグを起こして共食いみたいに絡まった機体もあったし。なかなか骨が折れるのよね。実際に折ったことはないけど。

　あ、私は高見っていいます。それで結構前に、伊野田さんって人たちと組んで（あの時は湊って名乗ってたけど）、その違法オートマタを撃退したと思ったんだけど。確かウェティブなんとかって名前の機体だったなって思い出してみれば、そいつは笠原工業の特別な違法オートマタで、なにやら自分のデータを他の違法オートマタに飛ばせるんだって。だから笠原工業にいる本体を壊さない限り延々と出てくるらしいのね。