第11話 女の意地
下部に前作までの簡単な登場人物紹介があります。参考にして下さい。
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期末テストも無事に終わり1学期も残り僅かな日数を残すばかり。そんな中、ドコネを通じて和奏からデカデカとしたスタンプや絵文字を交えたテンションの高いメッセージが届いた。
[和奏] 期末テストの結果、学年1位になったよ!
[椎弥] 凄いじゃないか。彩光高校の学年1位じゃ日本1位を狙えるんじゃないか。
[和奏] まさか。そこにいるでしょ。私より上の人が。
[椎弥] 何を言っています。僕は期末テストの平均点は51点。学年平均にも届いていません。
[和奏] 軽口が言えるまでになってくれて嬉しいわ。でも今日は何を言われても許せるの。ふたりに教えてもらったところがピシャリと出題。まさかの学年1位になったんですから。
[彩衣] 和奏ちゃんおめでとう。また困ったことがあったら言ってね。
[和奏] ありがとう。彩衣と椎弥に勉強を教えてもらえれば1位キープも夢じゃないわ。
[和奏] それで椎弥。この間の約束覚えてる?
[椎弥] なんだっけ。
[和奏] 僕に出来る事があったらなんでも協力するよって
[椎弥] ああ、もちろん覚えているよ。何か困ったことがあったのかい?
[和奏] 何も言わずに野球の試合に出て欲しいの!
[椎弥] え!? なんで……。
[彩衣] 椎弥くん。和奏を助けてあげて。事情は聞いているわ。
[椎弥] 分かった。後で事情は聞かせてくれよな。
[和奏] ありがとう! 彩衣のメッセージで決心したようにも見えるけどこの際どっちでもいいわ。
[彩衣] じゃあ私がお弁当を作っていくわね。
* * *
彩光高校のグランドに僕は立っている。藍彩高校のジャージを着た僕に野球部員から突き刺さる視線が痛い。
和奏の話によると、電車やショッピングモールで僕といるところを良く見られていたようだ。藍彩高校みたいな底辺の生徒と何故一緒にいるのかとバカにされたので、ついカッとなって野球は凄く上手いんだよ、甲子園だって狙えるんだから。と言い返してしまったようだ。
言い返した相手も悪く、同じ特Aクラスの女子で野球部キャプテンの彼女。期末テストで負けた妬みから「それなら見せてみろ、いつも一緒にいる位なら頼めるだろ」と言われてしまい引き下がれなくなったそうだ。
「ごめんね椎弥。女の意地ってやつよ。でも凄いわね、椎弥も彩衣も。自分を抑えるって物凄く大変なことが分かったわ」
「まあ、僕たちはその方が良いと思ってやってるから苦じゃないよ」
「わたしもそうよ。自分を出して目立つより今のほうがいいです」
「ふたりのその余裕、なんか悔しいわね。でもいいわ。椎弥の力でみんなやっつけちゃってちょうだい」
「勝てるとは思えないけど和奏が恥をかかない程度に頑張ってみるよ。でも彩光高校がこんな遊びを許すなんてね。しかも甲子園前のこんな時期に」
「はじめまして。彩光高校3年、キャプテン茂木源太(もぎげんた)だ。学年1位を誇る原田さんのお勧めする男と勝負できるなんて光栄だよ」
「良かったんですか。僕なんかが練習の邪魔しちゃって。甲子園の準備もあると思いますし、3年生が1年生の僕なんか相手にして」
「彩光高校はね、学年3位までの成績上位者と好成績を残す部活の部長が生徒会を使って学校を良くする特S制度があるんだ。その1員である原田さんと2位の小百合の頼みとあっちゃあ断れないからね」
「椎弥、小百合って茂木先輩の彼女のことね」
「君は2軍チームのピッチャーで4番に入ってくれ。1軍チームにどこまでやれるか楽しみにしているよ」
和奏、彩衣先輩とともに2軍チームと合流する。
「花咲椎弥といいます。今日はよろしくお願いします」
「今日はよろしく頼むよ。2軍キャプテンの飯田(背番号202)だ。自己紹介しても名前は覚えられないだろうから背番号で呼んでくれればいいよ」
奥から205番を背負った男が駆け寄ってきた。その顔は驚嘆している。その表情にチームのメンバーが何事かというような顔をした。
「花咲くん、小学校で野球やってなかった? 君の名前『全国小学生硬式野球交流大会』に出てたよね。僕、応援してたんだー」
「椎弥、それって凄い大会なの? なんか県外にまで応援に行ったのは覚えてるけど」
「205:ちょっと原田さん。凄いってもんじゃないよ。小学校野球の頂点といっていいほどだよ。でも中学校で花咲くんの名前を全然聞かなくなったけど」
「205さん、僕は中学校では普通の部活動に入ったんですよ。勉強の方を優先したかったんでね。結局は藍彩高校だけど」
「202:じゃあ、彼は原田さんが見栄で連れてきただけの男じゃないんだな」
「飯田先輩(202)。わたしのことをそんな風に見てたんですね」
「原田さんごめん。じゃあ花咲くん僕がキャッチャーをやるから少し合わせてみようか」
何球か投球練習をして202さんに受けてもらう。相手チームも注目をしているので手の内を見せないように抑えて投げる。何球か投げると徐々に感覚が戻って来た。
「懐かしいなぁ……」
「椎弥、本当にごめんね。なんか大げさなことになっちゃって」
「いいさ。誰も今の僕を知っている人がいないからね。ギャラリーも数人だし中学の同級生もいないだろう」
「そうね、観客は特S(各学年上位3位まで+成績優秀部活長)だけだから」
「椎弥くん、頑張ってね。お弁当作ってきたから終わったらみんなで食べましょう」
「202さん、最初は僕の好きな通りに投げさせてください。いきなり全力でいくと体力がもちませんので守備を信頼して打たせていきます」
「ああ、さっき君の球を受けて分かったよ。構えたところにピシャリと投げる。君は本物だ」
和奏の意地から始まった紅白試合が始まった。
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前作までの登場人物:
1B:花咲椎弥(はなさきしいや)
……主人公:人間不信が特定の人に対しては発動しなくなった。
中村茜(なかむらあかね) ……クラスメート、美術部
西田謙介(にしだけんすけ) ……クラスメート、サッカー部、モテる
担任:涼島啓介(りょうしまけいすけ) ……担任、美術部顧問
美術部:2A:小鳥遊彩衣(たかなしあい) ……心が読める。気になる存在
2C:海野夏美(うみのなつみ) ……元気、あまり異性を感じさせない
3C:石原早希(いしはらさき) ……頭が良い。美術部が大切
幼馴染:原田和奏(はらだわかな) ……料理が上手い。意外に意地っ張り
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