甘い優しさ

 次の日、私は目覚ましの鳴る少し前に目を覚ました。


「うわぁ、嘘でしょ.....まだ二時間前じゃん......」

 私は不安なことがあったり、緊張するとすごく早い時間に起きてしまうことがある。

 今回早起きしてしまった原因は、おそらく、隼人君のことだろうと思う。


「しょうがない、音楽聴くかなぁ.......。」

 私は机の上からスマホとイヤフォンを取って音楽を流した。


「うーあ、今日も朝から甘いねぇ.......。」

 シャッフルにして流れて来たのは今流行りの恋愛ソング、友達にすすめられた曲だ。

 実を言うとそこまで好きじゃなかったりするけれど.......いつまで経ってもスマホから消さない私も私だ。


「なぁにしてんだろ.......遅れるわ.....いこ」


 ✱✱✱


 今日の学校はいつもより賑やかだ、今日は夏期講習に加えて部活もあるから当たり前か。

 私は少し歩くスピードを早めて教室まで急いだ。

 今日は教室がいつもよりザワザワしている気がする、そんな風に感じるのも昨日のことがあったからだろうか。


「あ......」

 いつもと同じ席に、隼人君の姿を見つけた。

 姿を見た瞬間........胸が少しきゅっとなった気がしたけれど、私はそれを見て見ぬふりをした。


「あ.......咲良ちゃん、おはよう.......」

 お疲れ様隼人君はぎごちなく笑って、いつも通り挨拶をしてくれた。

 隼人君のそんな表情を見ていると、なんだか昨日の出来事が思い出されてしまって....挨拶もできなくなる。


「どうしたの?元気ない?あ.......もしかして、昨日のこと気にしてる?」

 私のことを気にしてか、優しい言葉をかけてくれる。何も考えずに口にしたのは私なのに......隼人本当に優しくて、私はその優しさについいつも甘えてしまう。


「ほんとに気にしなくていいからね?いつもの事だし。」

 こうやって今も、優しい言葉をかけて強ばっていた私の気持ちをほろりと解いてしまった。


「そうやって、身構えられるの好きじゃないから」

 そうぼつりと呟いたのを、私は聞き逃さなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る