公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

第35話 部活動の始まり

　私とレティは、家庭科部に来ていた。

「お、ルリアにレティ、来てくれたんだね？」

「あ、うん。トルカと」

「二人とも、いらっしゃい」

「こ、こんにちは……」

　家庭科室に入ると、トルカとティアナさんが迎えてくれた。

　何故か、トルカは少し驚いているように見える。

「まさか、昨日の今日で来てくれるとは思わなかったよ。ルリアはともかく、レティは乗り気じゃなかったみたいだし……」

「ああ、そのことか……」

　トルカの言葉で、彼女が何を驚いているのかわかった。

　どうやら、レティが来たことに驚いているようだ。

　確かに、昨日レティは来ないかもしれないと言っていた。

　そのため、そう思うのも無理はないだろう。

「まあ、一日も来ないのはあれですから、それなら早く来て、残りの日をサボろうと思ったんです」

「レ、レティ、そんなこと言ったら……」

　そこで、レティは理由を言ってしまった。

　レティは、今日来たという実績を残して、二週間ぐらい来ないつもりだったのだ。

　そんなことを聞いたら、トルカとティアナさんは悲しく思ってしまうはずである。その理由は、あまり言わないで欲しかった。

「なるほど、確かにそういう考え方もあるか」

「レティちゃんは、合理的な考えをするのね」

「あの、レティがすみませんでした。こう言っていますが、きっとまた来ると思うので……あれ？」

　しかし、私の予想に反し、二人は笑っていた。

　意外にも、レティの発言は気にされていないらしい。

　私が、必死に擁護しようとしていたのに、あまり必要なかったようだ。

「あ、ルリア、気にしなくていいよ」

「え？　そうなの？」

「うん、私もティアナも、人が来ないのには慣れているから、来てくれるだけでもうれしいよ。だから、細かいことはどうでもいいんだ。ね？　ティアナ？」

「ええ」

　二人の言葉は、少し悲しいものだった。

　今まで、この部活には三人の人間しかいなかった。しかも、その内一人は忙しいため、中々来られないのだ。きっと、私やレティが来て、本当に嬉しいのだろう。

「レティ、これからもここに来ようね？」

「いや、来ないために今日来たんですよ？」

　私はレティに、そう声をかけた。

　すると、少し嫌そうな声で、そんなことを言ってきた。

　ただ、恐らくレティも本心では私と同じようなことを思っているはずだ。レティは、本当はとても優しい子である。

　そもそも、ここを嫌っていた場合、レティはこのような態度で来たりはしない。先程、自然体で発言したことこそ、レティがここを好きな証拠なのだ。恐らく、トルカやティアナさんが、自然体なのが、その要因だろう。

　そのため、口で発言している程、レティは来る気がない訳ではないはずだ。

「さて、二人も来たし、今日は早速活動をしていこう」

「家庭科部は、裁縫や料理をやるはずだよね？　今日は、一体何をするの？」

「うーん、そうだなあ、せっかくだから、二人がやりたい方にしようか？」

「私達が？」

「うん。遠慮しないで、いいよ」

　そこで、トルカがそんな発言をしてくれた。

　今日の活動は、私達の采配に任せられるらしい。

　それなら、何がいいだろうか。

「レティ、どうする？」

「え？　私は別にどちらでもいいですけど……」

「で、でも、決めないと……」

　レティに質問してみたが、どちらでもいいようだ。

　レティは、活動内容自体には、それ程興味がないように見える。ということで、決めるのは私になりそうだ。

「私のおすすめとしては、料理の方かな？」

「え？　料理ですか？」

　私が悩んでいると、ティアナさんが話しかけてくれた。

　どうやら、料理の方がおすすめであるらしい。

「裁縫は、少し時間がかかるから、日を跨ぐ必要があるの。料理だったら、今日でも終われると思うわ」

「な、なるほど、それなら、料理が良さそうですね」

　ティアナさんの提案は、とても合理的なものだった。

　先程、レティも来る気がない訳ではないと思ったが、それでも週に二回くらいが限界のように思える。

　それなら、今日で終わるものの方がいいだろう。そのことで、成功経験が得られれば、レティも部活に乗り気になる可能性もある。

　そのような考えで、今日は料理がいいと思った。

「よし、それなら、今日は料理だね。材料は買ってあるから、安心して」

　こうして、私達の部活動が始まるのだった。