第293話 ついにこのときがきた。▼
【メギド 魔王城 庭】
私が魔力を注ぎ込んだ妖刀五月雨は眩い光を放ち、ゴルゴタはその妖刀を構え神に向かって飛びかかった。
私はゴルゴタの行く手を阻もうとする神の魔法を相殺をする魔法を連続して発動する。
身体の動きはついていけないが、視覚情報から魔法発動までの速度は神の速度になんとか合わせる事はできる。
ゴルゴタの動きに合わせて私は魔法を使った。
私の魔法の展開に合わせるようにゴルゴタも動いているように感じた。
そうしていると不思議な感覚がした。
今まですれ違ってばかりの私たちが、こうして同じ敵に向かって初めて“協力”しているのは例えようのない気持ちになった。
私たちはお互い何も譲ったりしてこなかった。
私はゴルゴタに
ゴルゴタも私に合わせることなど今までなかった。
こうして私たちが同じ方向に向いているのは、母が生きていた頃以来のように思えた。
幼少の頃にゴルゴタと稽古をしていた時の事を何故か今鮮明に思い出す。
過去を思い出す度、私たちは連携が強固になって行く感覚がした。
神は私たちの連携攻撃を受けても、まだ余裕そうな様子だった。
神は無数の魔法を連続して放ち、私たちの動きを止める。
私が放った魔法は神が放った魔法と衝突し、巨大な爆炎を巻き起こした。
ゴルゴタはその爆炎の中を駆け抜け、神に妖刀五月雨を振るう。
しかし神はその動きを冷静に見切り、ゴルゴタの足元に魔法陣を展開した。
ゴルゴタの身体が一瞬で凍り付く。
ゴルゴタ自身も炎の魔法で氷を溶かして動き続けるが、氷系の魔法を使われるとゴルゴタの再生速度は落ちる。
――このままではジリ貧だ……
私はそう判断し、一度引くことを考えた。
神と魔神が来たのは奇襲のような形で、蓮花は予想していたようだがこちらは万全ではない。
立て直してから戦う方が勝算があるのではないか。
しかし神は私の思考を見抜いたかのように挑発してきた。
「私とまた会える保証なんてないのに、引くつもりなの?」
神のその言葉に私はハッとした。
確かにこのまま神が退いたら、今度はいつどこに現れるか分からない。
神は何年も隠れて力を溜め続けることもできる。
この絶好の機会を逃せば二度と勝機は訪れないかもしれない。
自分の疲弊で思考力が鈍っていた。
ここで引いたら愚策だ。
神の挑発に乗るのも危険だと感じたが、言っている事は
――今、仕留め切らなければならない……!
私はそう確信した。
神は私が消耗していることを分かっており、ゴルゴタではなく私ばかり狙ってくる。
神の狙いは私を倒し、ゴルゴタを孤立させることだ。
ゴルゴタはその意図を理解し、私を庇いながら戦う。
「しっかりしろよ!」
「魔力切れだ……!」
「ちっ……!」
しかし、そうなると防戦一方になってしまい攻撃の隙が生まれない。
その時、庭の奥で轟音が鳴り響いた。
一瞬気がとられ振り返ると、タカシが魔神を苦戦の末に倒したようだった。
勇者の剣が魔神の心臓部を貫き、空に向かって伸びている。
魔神は倒れ、身体は黒い粒子となって空へと消えていく。
その光景を見て、私は勝利を確信した。
「魔神を倒すとはね……」
神は魔神が仕留められたことに驚き、若干動揺している様子が見えた。
そこに、更なる変化が訪れる。
「魔王ー!!」
神と私たちの間に、白い龍が大きく羽ばたいて割り込んで入ってきた。
着地した衝撃で少し地が揺れたような気がする。
現れたのはレインと、レインに乗ったノエルだ。
ノエルの髪の毛はいつもの黒髪から鮮血の赤へと変わっており、空気が歪むほどの魔力を放っていた。
「ノエル……!?」
「本当はご主人様に止められたんですけど、レインが魔王様のこと助けたいって言うので」
「魔王助けるよ!」
ノエルとレインはそう言って私に微笑みかける。
神はその光景を見て怪訝な表情をする。
「別世界の人が出てくる場じゃないと思うんだけど」
「今はこの世界で生活しているので、滅茶苦茶にしないでもらえますかね」
神は明らかにノエルを警戒した。
神はノエルの持つ得体の知れない力に、若干恐れを抱いているようだった。
魔神が倒された今、神は本格的に分が悪いと感じたのか空間転移魔法を展開し、逃げようとした。
――しまった……!
しかしノエルがそれを阻止する魔法を即座に展開する。
神は空間に歪を生じさせようとしたが、その魔法がノエルに打ち消されて発動しない。
異世界の扉を開く魔法が使えるノエルにとってはこの程度造作もないことなのだろう。
神はかなり焦った様子だった。
「どういうことだ……!?」
「流石ノエル! カッコイイ!」
レインはノエルを称賛した。
その後、レインは神に向かって爆炎の魔法を放って神を更に阻害する。
レインの魔法に神は防御の魔法を展開し、足止めは成功していた。
「逃がさないですよ」
ノエルはそう言って神を睨みつけた。
ノエルが神を足止めしている中、魔神を倒したエレモフィラがこちらに加勢した。
エレモフィラは疲弊している私を見て魔法を展開する。
エレモフィラが魔力を渡す魔法を展開し、ノエルから魔力を移動させ私の魔力を回復させた。
「行けんのかぁ? 貧弱野郎」
「黙れ。絶対に仕留め損ねるなよ」
私の魔力は瞬く間に回復し、全身に力が満ち溢れていく。
私はゴルゴタの持っている再び妖刀五月雨に、渾身の魔力を注いだ。
妖刀五月雨は先ほどよりもさらに強い光を放ち、ゴルゴタの手に渡された。
神は空間転移魔法が使えないと判断するや否や、翼を使って飛んで逃げようとする。
「逃がすかよ!」
ゴルゴタは再び妖刀を構え、神に向かって切りかかった。
背中の翼を全て、ゴルゴタの一閃で切り落とされた神は無様に地に堕ちた。
翼の切断面から血が出ないのがかなり異様に見える。
やはりあれは人間でも魔族でもない別の何かだ。
「ぐっ……」
信仰力のない神の力もこれが頭打ちだ。
「神なき世界がどんな混沌が待ち受けているか、理解しているのかな……?」
更に時間を稼ぐように神はそう口にした。
しかし、ゴルゴタは神の言葉に全く耳を貸さなかった。
「知るかよ……命乞いは聞かねぇからなぁ!!」
もう動けない神は、ゴルゴタの全力の一撃をまともに受けることになった。
ザンッ……!
ゴルゴタは妖刀五月雨を神の白い身体に容赦なく振り下ろした。
その瞬間、神の身体は真っ二つに裂かれた。
「あ……が……」
神は悲鳴を上げることなく、静かに消滅していった。
「っしゃぁ!!」
ゴルゴタは歓喜の声をあげたが、私は目の前で起きた勝利が信じられなかった。
三神の二神を本当に倒せたのか……
実感が沸かない。
妖刀五月雨で神を、勇者の剣で魔神を、そして蓮花の発動した魔法で死神は完全に遮断されている。
――私たちの勝ち……なのか?
「やったなぁ……」
「あぁ……そうだな……」
「…………」
バシッ……と、ゴルゴタは呆然としている私の背中を強めに叩いた。
「痛いぞ。何をする」
「勝ったんだぜぇ? もっと嬉しそうな顔しろよ」
「天才の私でも短時間に色々なことが起き過ぎて理解が追い付かない」
「勝ったんだぜ。俺様たちが“協力”してな」
「だな……」
ゴルゴタはほぼ瀕死状態の蓮花の方に向かって行った。
私はただ神が消えたところを呆然と見ているしかできなかった。
消耗が激しい。
かなり疲れた。
「メギド!」
私が放心している中、タカシがアザレアに肩を借りて歩いてきた。
そして親指を立てて満面の笑みで笑う。
「やったぜメギド! 俺を信じてくれてありがとな!」
「あぁ、タケシにしてはよくやった」
私がそう言うと、タカシはニヤリと笑って私の方を見る。
顎に指をあててしたり顔でこちらを見ていた。
「メギド、焦ってた時に俺の名前初めて呼んでくれたよな。“タカシ”ってさ」
「…………」
“「タカシ、魔王城正面扉の奥の王座の前に突き刺さっている剣を持ってこい」”
確かに私はタカシの名前を初めて呼んだことを思い出した。
タカシはあの混乱の中でもそれをしっかり覚えていたようだった。
「呼んでいない」
「いーや、言ったね。タカシって初めて呼んだ。っていうかなんで頑なに俺の名前間違え続ける必要があるの!?」
「お前の名前など私の記憶に残しておくに値しない事だからだ」
「でもしっかり覚えてくれて――――」
バシャンッ!
「へぶっ!!」
私がアザレアにかからないようにタカシだけに水をかけた。
「多少役に立ったところで調子に乗るな」
「多少じゃなくてスゲー役に立ったし! もっと
「自分で言うな、阿保タカシ」
私が再びタカシの名前を呼ぶと、タカシは水浸しの顔を照れたようにカリカリと掻いていた。
勝利の歓喜の実感がないまま達成感が全身を駆け巡る。
私たちは神を……そして魔神を倒したのだ。
――この世界の争いは、ついにこれで終わる……――――
私の悲願が達成された瞬間であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます