第21話 山々の中にある源泉
山を越え谷を越え、クリフさんを先頭に道なき道を歩いているため、オレ、ニーヤそして疲れているのか少し後ろにいるヨッシー……
木々が生い茂り蔓が這っている場所なので、気を付けないとこけそうだ。足下に注意しながら、少し大きな声で呼びかける。
「なあヨッシー?」
「なんやどないしてん?」
「その
「ああ、大丈夫やで、この
「それじゃあさ、例えば魔法なんかで放った炎とかをその
「さぁ、それは考えた事もないわ? そもそも魔法なんか使われへんしな」
そこへニーヤがサッと樫の杖を挙げた。
「我が主人よ、魔法なら任せてくださいニャ」
またそのうち落ち着いた場所にいる時にでも試してみるって事にしておいた。
アレ、そういえばオレ達は山道を歩きながら
ごくごく自然に会話してる………っていうかいつのまにやら出来る様になったんだな? ほんのちょっと前は体力が無くてヒイヒイ言ってたんだけど……
そういえば向こうの世界にいた時は登山なんかやろうとも思わなかったな、つーかあまり家から出なかったし!
「なあみんな見てみいや夕日がめっちゃ綺麗やで」
どうやら一番手で歩いていたヨッシーが見晴らしの良い場所を見つけたみたいだな、
「うむ、マサ君どうだ素晴らしい景色だろ」
「そ…そうだね」
クリフさんの言うとおりしばらく見入ってしまうほどの凄まじい夕焼けだ。
「よっしゃほんならここいらでちょっと休憩タイムしようや」
ヨッシーは
皆、大喜びしたがクリフさんは食べ物よりも赤いパッケージの色や形に興味深々みたい
そもそも何でニーヤはあそこで襲われていたのか聞いてみた。どうやら彼は同じ種族の仲間達と旅をしていたらしい、 そこへ突然、あの熊が現れて仲間達はみんな殺されてしまいニーヤは命からがら逃げて俺達と出会い今に至るといったところか……
「ほうか危機一髪ちゅうヤツやな!」
「ホントに危なかったですニャ」
「それにしても臭え! せめて先程の川で水浴びでもしていれば」
自分で匂いを嗅いで鼻を摘んじまったよ
まあここんところずっと野宿だもんな
「うむ、一番良いのは湯船に浸かれることだが旅の最中でそれを望むのは贅沢が過ぎるというものだろう。せめて水風呂でもいいから体全体を洗える場所があれば良いのだがな」
「ホンマやな、どっかその辺に風呂場とかないんか」
オイオイ、人っ子一人通らないこんな山奥にそんなのあるわけねーだろ。
「この近くに自然湧出の源泉ならばありますニャ」
マジかよ?
「ホンマか?」
「ふむ、そんな場所があるのなら是非とも立ち寄りたいものだな。なぁマサ君!」
クリフさん達が目を輝かせてオレの方を見て来たので手でOKサインを出しといた。
「いいじゃん!ニーヤが案内してくれるの」
「ハイですニャ」
ニーヤを先頭に駆け足で野山を歩いていく。木の根に足が取られそうになれば強引に蹴り抜き、地面の起伏は力任せに踏み潰し、足場の悪さを気に留めずスタスタと1時間ほど歩いた所にそれはあった。
やはりまったく人の手がかかっていなかったので清潔とは言い難い、まさに絵に書いたような自然のまんまの温泉「野湯」だった。
「へー、右側の薄い水色の湯と左側の緑色の湯があるんだ」
「よっしゃー、ワイが1番乗りや!」
「うむ、なら私もいくぞー!」
ヨッシーとクリフさんはガキみたいにはしゃぎ出し、ササッと服を脱いでドボンっと左側の湯へとダイブしていった。マジかよコイツら……
「我が
ニーヤがそういうならちょっと入ってみるかな
そろそろ疲れも溜まってきてもいるし……
オレもザバァっと右側の湯に入ってみた。おおぉぉっ!熱い!でも少しずつ体が慣れてきた。
湯に浸かりながら見る山々の景色も素晴しい。
それにしてもコレはまさに最高の至福ってヤツだな。周囲には心に癒しを与えるような美しい森林風景が広がっているしこの草の香りも悪くない。
ガキの頃にお爺ちゃんに連れて行ってもらった銭湯の薬湯を思い出すわ………
そういやオレ、何も親孝行とかしてなかったなあ
無事に両親に会うことができたらそのうち温泉旅行にでも連れて行ってやりたいね。
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