第23話 モンテーヌの町



 野を下り、森を抜けると不揃いな石の城壁に囲まれた町モンテーヌにようやく着いた。クリフが警備のオッサンに身分証を見せると通行料を催促してきた。


「あぁぁん? オマエら身分証がねえんなら1人50G《ギル》で通してやろう」


 何だよこのオッサンすっげー感じ悪いんだけど?

きっと相手を選んでこういう事をして小遣い稼ぎしてんだろうな


 そこへヨッシーが何かの瓶を取り出して警備のオッサンに迫る。


「悪いな、今ちょっと金欠やからコレで勘弁してくれへんか?」


「ん、何だソレはガラスじゃないか? バカな? ガラスで出来た容器だと? しかもなんと精巧な…」


「なんやそっちかい!」


 ごく当たり前のように警備のオッサンにツッコミを入れるヨッシー、どうしたんだコレ!ヨッシーはただ酒瓶を見せただけだよな?


「し……失礼しました。この瓶を見れば分かります。あなた方はさぞ名のある錬金術師でありましょう。

さあ、どうぞお通りください」


 オッサン何かワケのわからない事を言って通してくれたぞ?


「さっきのは何やったんやろか?」


「ふむ、おそらくそのガラスだろうな。私もそのような精巧な容器は見たことが無いぞ」


「アッシも無いですニャ」


「確かにこっちの世界の今の技術ではコレを作るのは難しいのかもしれないな」


「…??………何やねんそれ、ワイはあのオッチャンと酒でも飲み交わして親睦を深めて通してもらおうと思っとったんやけどな」


 イヤイヤどうやってそんな展開になるんだよ。

 まずオレには不可能だろうな……


 それにしてもこの町はなんというかオレ達の世界でいうと13世紀あたりのヨーロッパって感じかな。

 通りかかる人々は明らかに手作りと思わしき衣類を身に纏い、電気どころかガスも水道も通ってなさそうだ。やはりこの世界は良くて近代、悪ければ中世かそれ以前の文化しかないようだな。


「なあワイちょっとそのへんで用出してくるわ!」


 ヨッシーがドタバタと慌ただしく走り去っていき、クリフさんと2人で目の前の道具屋に入った。

 店の奥から白髪頭に眼鏡をかけた婆さんが凍りつくような冷めた目でオレ達を見つめる。うわぁ、オレってこういうタイプマジで苦手なんだよなあ。

 こんな時にヨッシーがいてくれると助かるんだけどホラッ彼は誰とでも仲良くなれるから



 前に旅の商人から買った物と同じ物ばかりで特にこれといった物は無かった。

 店を出ると目の前にヨッシーがいてオレの首根っこを引っ張って何処かへ連れて行こうとして来た。


「オイ、痛いって何だよ?」


「ええからちょっと来てみいや」


 おそるおそる路地裏に入っていくと奥で鉄の鎧を着た冒険者らしきおっさんが幼い少女の股に手を入れてやがった。オイオイこんな所で……

 何かニュースとかで小学校の教師が生徒に猥褻行為で捕まったとか警察官が女子高生にみだらな行為の疑いで逮捕とか向こうの世界ではたまに起きていたみたいだが反応から察するにこっちの大人達はそういった未成年に対する道徳的な観念が薄いようだな。


「オイ、お前そこで何しとんじゃ!」


「あぁん、なんだオメエはよ?」


 ヨッシーが鎧の男に声をかけると男は下半身丸出しのままこちらへと向き直った。


「娘と楽しんでだ! 邪魔するなよ」


「お前の娘とちゃうやろ」


 クリフがササッと鎧の男から少女を突き放すと、

 ヨッシーは思いっきり勢いをつけて鎧の男の顔を殴りつけた。

 鎧の男はぶっ飛ばされて倒れ、意識を失った。


「オイ、ガキンチョお前大丈夫か」


 一瞬、少女はオレたちをギロリと睨み、何も言わずにどこかへと走り去っていった。


 うーん、せっかく助けてやったのになんだよあのふてくされた態度は? とまあ各々思うことはあるけど気を取り直して次は武器屋でも行くか。






 ◇






 武器屋に入ると坊主頭の店主が出迎えてくれた。


「店にようこそ、ウチは武器や防具だけじゃなく

 薬も揃えているよ。しかも薬は隣の店の半分の値段で売らせてもらっているんだ。」


 クリフがなにやら店内を物色しだした。


「へえ、隣の店も薬屋なんや〜」


「そう、隣にも薬屋があるんだけどコレがまた小汚い店なんだよ、何か店の主人が亡くなって無愛想な小汚い少女ガキがやってるんだけど」


 クリフは突然ヨッシーを羽交い締めにしだし何かゴニョゴニョ言い出した。


「お客さんどうかされましたか?」


「なあご主人、防具と剣ってちょっと試着とかしてもええんかな?」


「どうぞどうぞ! きっとお客さんのお気に入る品がありますよ」


 そこへクリフが先ほどヨッシーが持っていた酒瓶を店主に見せた。


「こ…コレは何という精巧な瓶なのだ!」


「瓶だけじゃなく酒もこの世のものと思えないほど美味いぞ、試着のお礼といってはなんだがよかったら一口試飲して見ないか?」


 ゴクリと唾を飲む店主の前でクリフさんはトクトクと酒を注ぎ始めた。


「さあマサ君、先ずは一杯飲んでみろ」


 オレは注がれた酒を飲んでみる。

 まず一口飲んでみた感想としては、 普通の酒と比べてすごく甘い!ということ。オレは言葉ではなく目でそれを店主に伝えると、彼はすぐに試飲した。


「コ…コレはなんと濃厚な甘さではないか〜

 美味い、私は未だかつてこの様な酒を飲んだ事は無い……コレは一体??」


「うむ、ヨッシーコレは何という酒なのだ?」


「ああ、どぶろくっちゅうお酒や」


 店主はどうもこの酒を気に入ったらしくしつこく頼み込んでくるのでヨッシーが75000G《ギル》で何本か置いていった。


「よっしゃ〜っ! コレであの店に置いてある武器や防具はすべてコピーしたで」


「うむ、ならば隣の薬屋に行こうか」


 隣の薬屋へ行くとそこに1つ驚きの事実があった。確かに同じ商品が倍以上の値段で売られていた。

コレはこの店からすると隣のやっている事は営業妨害なんじゃねぇのか?


「なあクリフさん、何であの店はここの半分の値段で薬を出しているんだ?」


「分からないか、この町に武器や防具を販売している店は一軒しかないよな、あそこは客が減ることがない事をいいことに値段を通常の1.5倍に釣り上げていたんだよ」


 なるほど薬を安く買わせて、その分武器などを高く買わせるって………せこい商売じゃねぇかソレ


 さらにこの店にはもう1つの驚きがあった。なんとさっき鎧の男といた少女がこの店で働いていたのだ。


「な……なんだいアンタらさっきの連中じゃないか

 ウチの店に何の用だい! もしかして隣の店の回し者か」


「違う、我々は少しだけ君の話を聞きたいだけなんだよ」 


 少女の名前はライラという

 ライラの家は父が代々継いだ薬屋を営んでいたのだが材料を取りに森へ行ったきり父と母は行方不明だとか……

 両親から薬学を少し学んだライラが祖母と店を維持している状態らしい、なるほどじゃさっきの鎧のフリチン男は店の常連か? どうせなんか下らない条件でも突き付けてきたんだろうな。


「行方不明というのは?」


「うむ、そういえば私もむかし両親にいわれたことがあるんだがこの辺りで人さらいが出るとか……」


「何やそれ誘拐か?」


「ああ、婆ちゃんが言ってたんだ。父ちゃん、母ちゃんは悪い山賊にさらわれたって、だからアタシがこの店を守るんだ!」


「ふむ、なるほどな!しかし今考えるべきなのは山賊の事よりこの店のことだ。お前ホントに、この店を守る気があるんだな?」


「当たり前だよ!」


「うむ、なら一つ提案だ、今日からこの酒もこの店で販売しろ!」


 オレ達はライラから最上級の薬をいくつか買い取った。隣の店から儲けた75000G《ギル》で、

 あとおまけでどぶろくが入った酒瓶を20本ほど30000G《ギル》で買い取ってもらった。


 つーか金なんかヨッシーの能力スキルでコピーしまくっているし

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